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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
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    mitotte_kazu

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    12/12はダズンローズデーだそうなのでそんな感じの🦍と🐇の短い話

    ##ディンエラ

    薔薇「ダズンローズデーを知っているかい?」
     依頼の報告を受けた後、ミューヌが柔らかく微笑みながら尋ねてきた。たおやかな笑みの店主にルガディンは傾げていた首を振って答える。
    「12本のバラの日、という意味でね。結婚生活に必要な、12の言葉全てをパートナーに誓うというものなんだ」
     感謝、希望……永遠、と薔薇の花に込められた言葉を店主は指折り教えてくれた。なるほど、と納得したように頷く。
    「勉強になった」
     彼の短い言葉に満足気に目を細め、
    「奥様によろしくね」
     意味深な呟きと共に手を振って見送られた。
     そんな事を思い出したルガディンは花屋の店先を覗く。色とりどりの薔薇の中から12本か、とつい眉間に皺が寄ってしまう。声をかけてきた店員にとりあえず赤と黒と紫の薔薇をそれぞれ4本ずつ纏めてもらうことにした。微かに手元から漂う薔薇の香りに気恥ずかしさを覚えながら、足早にラベンダーベッドのヴィエラの家に向かう。
    「おかえり〜」
     庭先で木人相手に訓練を行っていた彼女が手を止め彼に声をかけてきた。タイミングが良いというか悪いというか、短く息を吐いた彼がただいまと返すと笑って応えられる。目敏く彼の手元に視線が向けられるのに気付き、無言で花束を差し出した。私に?と自身を指差す彼女に頷き、柄じゃないと思うが、と答えると嬉しい、と柔らかく微笑まれる。
    「派手だねぇ」
     ベルベットのような薔薇の花束を顔に近付け、彼女が呟いた。どこに飾ろうかな、と室内に向かう彼女の後を追う。
    「好きに使ってくれたらいい」
     意味が伝わらないであろう完全な自己満足だが、彼女が喜んでくれればそれでいいと彼は後ろ手で扉を閉めた。



     花屋で色彩鮮やかなバラが並んでいるのを見かけ、もう一年が経ったのかとルガディンは静かに驚く。昨年は幸いダズンローズデーを知らないから無邪気に喜んでもらえたものの、今現在当日にまとめて渡すと揶揄われるのが目に見えている。それはそれで悪くないのだが、と思いながら帰還したリテイナーが持ち帰った品を受け取ろうとベルを鳴らした。どことなく誇らし気な顔のリテイナーが懐からタイムリーに一輪のバラを差し出してきて、数回の瞬きの後彼は苦笑する。普通に渡すのもな、とバラを眺め、何か閃いたように彼は鞄の中を覗き込んだ。
     しばらくしてリンクシェルでタイミング良くヴィエラに呼び出されたので懐からオールドローズオーナメントを差し出す。
    「くれるの?」
    「リテイナーが持って帰ってきてな」
     彼に差し出されたものを受け取った彼女は首を傾げた。頷いて答えた彼にありがと、と微笑んで彼女は自身の頭装備を付け替える。
    「どう?似合う?」
     鮮やかなバラの髪飾りは暗褐色の髪を引き立ててくれていた。よく似合ってる、と微かに口角を上げた彼が答えると、彼女は髪飾りに負けないぐらい華やかに笑った。

     ラベンダーベッドのシェアハウスに呼び出されたルガディンは立ち寄っていたリムサ・ロミンサの雑貨屋を覗く。呼び出してきたヴィエラが好きそうな焼き菓子とローズティーのセットを購入し、彼女の元へと向かう。酸味の強い紅茶は好きではないと言っていたが、焼き菓子と共に提供するなら許されるだろうと思いながら、自身の小賢しさに苦笑する。流石にバラの花本体を連日続けて渡すとなると、聡明な彼女はすぐに気付き揶揄ってくるだろう。ならばこういう変化球を挟んでみようという思考の元での行動だったが吉と出るか凶と出るか。ある種のギャンブルだなと苦笑しながらシェアハウスの扉に手をかけた。
    「おかえりぃ」
     カフェのような調理場とイートインスペースを睨み付けていた彼女が彼に気付き、笑顔で振り返ってくる。大変そうだな、と声をかけるとそう!と声を張り上げられた。
    「カフェスペースみたいなの作ったけど〜……な〜んか気に入らなくってぇ……」
     彼女のこだわりと漠然とした不満が混じり合った複雑な表情だった。彼女の事だから半日ぶっ通しで設置やレイアウトを考えるなどしていたのだろう。彼が見る分には他の人が作ったこだわりのハウジングと遜色ない仕上がりに見えたが彼女には気に入らないらしい。
    「とりあえず、休憩にしないか?」
     手元の紙袋を掲げるとお土産?と首を傾げられる。中から茶葉だけ出して紙袋を手渡すと、歓声を上げられた。
    「淹れてくるからそこのイートインスペースででも待っててくれないか?」
     わかった、と弾んだ声と歩調で仕上げたばかりのイートインスペースに向かう彼女に、頬が緩んでしまう。飲む時にバレるだろうが、と思いながら今回の選択と彼女の呼び付けてきた用事が噛み合っている事に感謝した。睨み合っている時には微妙に思えたかもしれない空間が、彼女の徒労にならないよう祈りながら温かなティーカップを手に彼女の元へ向かった。
     
    「なんかジャックから渡せって言われて」
     ウルダハに呼び出してきたユウがそう言って差し出してきたのはバラで出来たジャムだった。店頭に並んでいるものは何度か見かけた事があるが、ラッピングの様子から恐らく手作りだろう。エレゼン手製の美味い料理を思い出し、口元が緩みそうになるのを慌てて堪える。
    「いいのか?」
     ありがたいことだが申し訳なさが勝り、念の為確認すると勿論、と柔らかく微笑まれる。
    「今の時期にぴったりだろうから、だそうだ」
     バラのジャムにも旬が?と一瞬首を傾げたが、スマートな彼のことだ。わかってて仕込んでくれたのだろう。材料費だけでも、と伝えると普段の礼だからと丁重に断られる。
    「また何かあったら手伝ったりしてくれ」
     柔和に微笑んでじゃあな、とエレゼンの元へ帰る彼の背に手を振り、貰ったジャムに視線を落とした。そのまま渡すのもな、とウルダハで以前勧められたベーカリーへと足を向ける。
    「バラのジャム!?オシャレじゃん!!」
     目論見通り歓声を上げる彼女に頬が緩んだ。彼女にどこで買ったのか聞いてきた彼女に、2人から貰ったと伝えると絶対美味しいやつ!と目を輝かせられる。
    「だと思って」
     パンとヨーグルトもあるぞ、と紙袋を置くとやったー!と無邪気に両手を挙げて喜ばれた。
    「紅茶はあったよな?」
    「普通のならあるよ〜」
     飲むの?と尋ねられ、頷いて続ける。
    「イシュガルドのどこかの地方で、砂糖代わりにジャムを溶かして飲む方法を聞いた事があってな」
     ちょっとしてみたくなった、と茶葉を探そうとすると、隣に来た彼女がこっちだよと棚に手をかけた。
    「じゃあ、明日はバラ尽くしの朝食だね?」
     むふふ、と目を細めた彼女にそうだなと返して、彼も頬を緩めた。
     翌日、眠い目を瞬かせつつヨーグルトと焼き上げられたトーストを器に盛るルガディンの横でヴィエラが紅茶を淹れる。手早く食卓に並べたそれらを彩るためのジャムの瓶を彼が開けると、ふわりと微かにバラの香りが漂った。ふわぁ、と破顔した彼女が差し出してくる紅茶やパン、ヨーグルトにほどほどにジャムを乗せ、待ちきれないと言わんばかりに2人は手を合わせた。ざくりと焼き上げられた彼女好みのハード系のパンを噛み締める度に口内でジャムの甘さとシンプルな小麦やバターの香ばしさが混ざり、形容し難い美味さに彼は思わず口を抑える。視線を彼女に向けると彼女も声にならない声を漏らしつつ目を輝かせていた。頷いて応えると満面の笑みでこくこくと首を上下させて美味しさを伝えられる。カップを口元に近付けた時点で香るジャム入りの紅茶も上品な甘さが口に広がり、頬が緩んだ。
    「美味いな」
    「ヨーグルトにも合うよ!」
     これ一杯食べられちゃう!と嬉しそうに破顔しながら器を掲げる彼女に倣って食べたヨーグルトの酸味を和らげる華やかな風味が口に広がる。
     朝から贅沢すぎた、と余韻に浸りながら皿を洗う彼の横で、洗浄された食器を布巾で拭いながら本当にねぇ、と彼女も大きく頷いた。
    「パイやパウンドケーキ、パンにしても美味いらしい」
     気になって調べたら際に見かけたレシピを幾つか挙げると美味しそ〜、と彼女は緩んだ声で溢した。来年に備えてまた作り方を聞いておくのも良いかもしれないな、などと考えてから、まだ数日残っているのに何を、と彼は苦笑した。

    「今日は普通のなんだ」
     一輪のバラを受け取った12日目のヴィエラの呟きに、覚えていたのかとルガディンは苦笑する。
    「去年に比べたら本数は物足りないだろうが、」
    「分割でしょ?毎日くれてたじゃん」
     いつ言おうかなと思ってた、とくるくるバラを弄びながら言った彼女に、気付かれていたのかと顔を顰めた。わからいでか、とどこか誇らしげな彼女に去年の方が良かったかと尋ねると、ふるふると首を振られる。
    「毎年飽きさせてくれないなって」
     来年の分のネタ、残ってる?と心配してくれる彼女につい笑ってしまう。
    「その内バラのトピアリーでも庭に設置するかもな」
    「それはいらない」
     冗談に即答しながらも手元のバラは大事に握りしめ、花瓶の用意を進める彼女を眺めていた。昨年と同じ位置に飾られた花瓶とバラを見て、やっぱり寂しかったなと思っているとふふ、と彼女が笑う。
    「でも粋な事するじゃん。紅色の薔薇なんて」
     紅色?とバラに視線を戻すと確かに去年買ったものよりも鮮やかな赤色だった。店員に頼まず店頭で目を引いた一輪を選んだつもりだったがそうだったのか、と考え込んでいるとにまにまと楽しそうな視線を感じる。視線を彼女に向けると可愛い事しちゃってぇ、と緩み切った口元を手で覆われた。何のことだと首を捻っていると、彼女の口元を覆っていた手がちょいちょいと招くように動き出す。その手に導かれるように彼女の口元に耳を近付けると、小さく花言葉、と囁かれた。
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    mitotte_kazu

    PASTバレンタインなのでチョコ渡す🐇さんとチョコ食べる🦍の短い話
    片割 この海の街にもイベントの余波が来ているようで、浮ついた雰囲気が漂っていた。幸せそうな人を見るのは嫌いではないが、この空気の中独り歩くルガディンはどこか居た堪れなさを感じていた。
    それでもイベントのおかげで普段ならあまり手を出さないようなチョコレートが並んでいる店頭を眺めるのは楽しいものだった。買ったところで勿体なくて食べられないのは目に見えているし、貧相な自身の舌はどれを食べても美味しく感じるのだろう。折角だからと思いつつ平凡な板チョコレートを手に取る。と、掌からチョコレートが消えた。目線を掌から上げるとルガディンから取り上げたチョコレートを興味深そうに眺めるヴィエラがいた。

    「買うの?」
     握ったチョコレートをひらひら翳しながらヴィエラが首を傾げた。まぁ、とルガディンが頷くとふぅんと数回頷いた彼女がそれを棚に戻す。買うと言ってるのに、と棚のチョコレートに伸ばされた彼の手をヴィエラの手が掴んだ。ルガディンが何なんだと困惑している間に人気の少ない通りまで引っ張り出される。されるがままだったルガディンの離された掌にちょこんと小箱が載せられた。どこか見覚えのあるデザインの小箱をしばらく眺めてから、目の前のヴィエラに視線を向ける。にんまりと意味深に笑った彼女が覚えてる?と首を傾げた。ルガディンが数回頷いて開けても良いか了承を得ると、勿論、と微笑まれた。
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    mitotte_kazu

    PAST🐈🐇🐑🦍が美味しいものを食べるだけの話
    会食 立て続けの依頼を終え、ようやく一息つけるとヴィエラは適当に目についた店に入った。食事時から外れた時間帯もあって、まばらに空いた座席に腰を下ろす。そのまま倒れ込みそうなのを堪えてメニューを開いた。季節限定などのメニューも魅力的だったが定番で当たり外れのない、無難なものを選んで注文する。こんな疲れた時に、そういうメニューでハズレを引きたくないという打算だったが、他のテーブルに目を向けてみるとそうでもない気がしてきた。それでも穏やかな店員の対応に少し癒され、メニューを眺めながら頼んだ品が来るのを待つ。少しの時間を置いて、飲み物と共に運ばれてきたパンを齧る。さっくり焼き上げられた表面ともちもちした食感が楽しく、口の中に小麦の甘さとバターの風味が広がった。好きなやつ、と思いながらパンを頬張る。サラダとかスープも頼めばよかったかな、と思いつつ空腹も少し落ち着き、店内を見渡した。インテリアなどにも拘られており、居心地は良い。テーブルや椅子の高さも種族ごとの配慮もされていた。もしや割と良い出会いなのでは、と皿に載っているもう一つのパンを齧りつつ、頬を緩めた。
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