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    kalmin3

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    kalmin3

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    花城の誕生日の1日を書いてみましたよ!

    忘れないといいな 鬼市はいつにもなく活気づきまるでお祭りでも始まるかのような、いや、始まるのだ。もうすぐ。
     
     そう、花城主の生誕祭が。
     
    「今年も賑やかだね」
    「こんな事、しなくてもいい」
    「嬉しいね、君の誕生日がもうすぐだって私もわくわくするよ」
    「……兄さんが喜ぶなら」
     それでいい。そう小さく返事を返すと謝憐は嬉しそうに花城を見て微笑んだ。
     誕生日はまだ1か月以上も先だと言うのにこの騒ぎだ。当日どんな賑やかさになるのか謝憐は楽しみでならなかった。それと同時に、今年は何を贈ろうか、悩んでいた。
     
     世界のありとあらゆる珍しい物は極楽坊に集められ、花城に言わせると大したものではないらしい。
     宝物庫と呼ばれる部屋には今まで謝憐が贈った品々が奇麗に陳列され専用の棚が設けられていた。これらが大事にされているのは謝憐の目にもすぐにわかる。たまに花城が取り出し嬉しそうに使用しているのも伝わり贈ってよかったと見るたびに安堵する。
     毎年何を贈ろうか悩むのは本当に楽しい。きっとどんな物を贈ったとしても花城は大喜びをし、鬼市中に自慢して歩くのが恒例だ。
    「兄さん、今年は何をくれるの?」
    「聞きたい?」
    「そうだな、いや、うん……やっぱり当日まで楽しみにしてる」
     花城は期待膨らむ思いを鎮めようと少し深く息を吸う。必要の無いことでも、たまに人だったころの事をすると落ち着いた。
     そんな花城を微笑ましく見守りながら謝憐は花城と逆に内心焦っていた。
     ずっと前から考えていた。
     しかし、今年に限り全く決まらない。
     最初は大きな桃にしようと思っていたが、風信がとても良い桃を頂いたからと持ってきてくれたのだ。時期は早いが、みずみずしく蜜も甘くそのまま桃と一緒に食べられてしまった。
     新しく筆を用意したら花城も喜んで字の練習をしてくれるのではと思ったが、先日、象牙の筆を仕事を手伝ったお礼にと霊文から貰ってしまった。勿論2人分。花城は文字を紙の上に書かず、謝憐の肌の上を筆で撫で回して遊び尽くした。
     先月も珍しい絹の織物が入ったから2人でお揃いの中衣を作ったものの夜中にちょっと、いやかなり大胆なことをしてしまい破いてしまったばかりである。
     どうにも上手くいかないものだとため息が出そうになるがぐっとこらえた。
     
     
     
    「なぁ、慕情。どう思う?」
    「知りませんよ!」
     頼まれごとついでにと天界の慕情の神殿に立ちより相談するも即答されてしまい、困ったな、と机に伏せる。
    「お茶を入れましたよ。飲み終わったら帰って下さい」
    「君は昔はそんな子では無かったのに……」
    「貴方が変わったように私も変わるんですよ!」
     謝憐は顔を上げ良い香りがするお茶が朴素的だが質の良い茶器に注がれているのを見て、そうはいっても変わらないところの方が多いなと感嘆した。
    「そういえば、道着を変えたんですね。前のはかなり長く着ていたようでしたが……」
     そうなんだ! と立ち上がり謝憐はくるりと一周してみせた。
    「三郎が仕立ててくれたんだ。ここに刺繍がされてる、あと襟も……」
     自慢げに見せてくる。
     聞かなくても仕立てがどれほど良いのか、目立たないよう質素に見えるも薄手でしっかりとした作りの良い布なのがよくわかる。悔しいが良い出来だと慕情はそれを見つめた。
    「あ、それで前の道着なんだが……この間、村の子供たちが山で楊梅(ヤマモモ)がたくさんなっていると教えてくれて、三郎と採りに行ったんだ。本当にたくさん採れたんだが…その時木の枝に引っ掛かってしまって……あ! 木は倒してないから!」
    「それは良かったです」
    「あぁ、それで、その時に少し破いてしまったのと」
    「地面に落ちていた楊梅の上に落ちたんですね」
     謝憐は激しく首を縦に降った。破けたり染みが出来たりと酷かったのでこれは解いて掃除用にしようかとしまってある。
     少し考え慕情は明日それを持ってまた来て下さいと告げた。
     謝憐はお土産に緑豆糕を持たされ追い出された。
     帰宅後、花城と食べたそれはしっとりとほのかに甘く謝憐の好みの味がした。
     
     
     
     あっという間に時は過ぎ、花城は誕生日を迎えた。
     謝憐と花城がたくさんの料理を作り菩薺観を訪れる村人に振る舞った。
     菩薺村の皆もお供え物だと言いながら次から次へと料理を運び、机の上は溢れんばかりで毎年のことながら花城は驚いてしまう。ここの村人はあまり疑うことを知らないのか、それとも分かっていてあえて何も言わず受け入れてくれているのか、何度も何度も繰り返し祝いが行われてもまるで飽きる様子がない。
     小花姿の花城の周りには子供たちが集まり小さな花や果物、奇麗な石や葉っぱを次々と渡していく。
    「私の三郎は大人気だな」
     謝憐が嬉しそうに言うので花城も嬉しくなった。
     それだけではないとは実のところ分かってもいた。
     村人が帰り、ふたりだけになると少しだけ料理をつまみ、そわそわとした謝憐が早くと小さく呟くと花城は賽子を急ぎ振った。
     
     鬼市から響き渡る爆竹の音に驚かされたり何処からともなく音が外れた大声の歌が聞こえてきたり花城の誕生日を祝うなんて賑やかな夜なんだと謝憐は感嘆した。
     極楽坊から見える鬼市は昼と見間違う程明るい。
     干杯ー! という声があちこちから聞こえてくる。
    「お酒は君がみんなに振る舞ったの?」
    「一応、誕生日なので」
     少しぶっきらぼうな感じで答えた花城だが少しだけ微笑んでいたのを謝憐は黙って見つめていた。
     
     
     
     ほんの少しの間だけ目をつむっていて欲しい。
     そう謝憐にお願いされ花城は架子床の上に寝かされた。
     がさごそと何かをしている音がする。謝憐が何か準備をしてくれているのだと思うだけで笑みが漏れた。
     次第に鼻を掠めるかすかな匂いがした。
     花の香がする。
     知っているような、しかし初めて嗅ぐ香りだ。
    「もういいよ」
     花城はゆっくりとまぶたを上げる。
     神様が居た。
     動かないはずの心臓が強く打つようなそんな錯覚をするほど驚いた。
    「……っあ、太子殿下……」
    「どうかな三郎!」
     覗き込んでくる美しいが明るく清々しい笑顔。白の道着を着たいつもの謝憐だ。
    「ごめん、兄さん少し寝ぼけてしまった」
     謝憐を抱きしめようと体をゆっくりと起こすと何かが落ちた。
     よく見れば周りにはたくさんの白いものが落ちている。形は様々だが、布で出来た、これはもしかして。
    「花?」
    「正解!! さすが私の三郎だ」
     周りを見れば大小様々な大きさの布の花があり、先ほど香ったのはこれだったのかとひとつ手に取り花城は思った。
    「それはわりと上手く出来たと思うんだ」
    「兄さん、これは……」
    「君への贈り物。私が着ていたて破いてしまった道着あっただろ? あれを解いて花を作ってみたんだ。最初は結構難しくて、でもこれとか上手く出来ていると思う! 慕情には白い花はあまりよくないから染めたらどうかと言われたんだけど、……やっぱり君といえば白い花かなって……」
     少し照れながらも謝憐は花城の手に上手く出来たという花を乗せた。周りを見渡し、ひとつふたつと集めていく。
    「……兄さん……」
    「あ、それから! その、古着だし、万が一変な臭いとかしたら大変だろ!? だから少し香りを付けてみたんだ。君っぽいかなと思ってこの優しい花の香にしてみたんだ」
     花を1つ手に取り謝憐はすっと香りを吸い込むと微笑んだ。
     この香りがじぶんを思った香りだと言うことに花城は驚いた。こんなにも優しく甘い香りがじぶんだということになんともいえない気持ちになる。
    「嫌いだった? この香り?」
     不思議そうな顔をしている花城を見て謝憐は慌てた。
    「いえ、こんなとても良い香りは初めてで……俺の香りだと言われると少し照れてしまいます」
    「そんな事は無い。三郎は優しいし強いし格好いいし博識だし美しい。君を表す香りだと思うと色々悩んでしまったが、この香りにして本当によかった」
    「……兄さん」
    「なんだい?」
    「大事にします」
    「うん。嬉しい。ありがとう」
    「お礼を言うのは俺です。最高の誕生日だ。兄さん、ありがとう」
     そう言うと花城は強く謝憐を抱きしめた。温かさが伝わり、香りが強くなる。香りの中に感じた知っている香りは謝憐からした。謝憐の服で出来ていたのだ当たり前といえばそうなのだが、それがじぶんの香りと混ざるというのは胸が熱くなるものがある。
     
     ドオォォォォォォォォン!
     
     外からけたたましい音が聞こえた。花城主の生誕祭だ! と遠くから聞こえた。
     今年はまた一段と賑やかだ。
     謝憐と花城は顔を見合わせこれは面白いと笑いあった。
     そしてその後、吸い付くように深く口吻をした。
     謝憐は息も忘れ少し咽てしまった。慌てて唇を離した花城は謝憐の背中をさする。少し落ち着いた謝憐が慌てて顔を上げた。
    「大変だ、三郎。大切なことを忘れていた!」
     そう言って花城にぎゅっと抱きついた謝憐はこう言った。
     
    「生日快乐!」
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