学校の曲がり角にはご注意を先日、彼女が出来た。明るくはつらつとした女の子。
こんな僕には勿体無いほど。
廊下の端を歩いていると、向こうから彼女が歩いてきていた。
彼女も僕に気付いたようで、ぱっとした表情になり手を振ってくる。
「おぉーい!」
嬉しそうに掛けよって来るその姿は愛らしさ満杯だ。
T字路で、壁が無くなるそこを一生懸命に走ってきてくれる。
僕は壁の角で彼女が来るのを待ちわびる。
真ん中になるであろうそこまで来たところで…
彼女の姿が消えた。
曲がり角から眼鏡の委員長が現れた。
「あら、○○君じゃない」
凛とした佇まいでこちらの存在に目敏く気付くや否やしゃがみこんでこちらに手をさし伸ばす。
「そんなところにいると危ないでしょう?送ってあげる」
有無を言わせぬ雰囲気に言葉を発せず、慎ましくも可憐な手のひらに上がり込む。
それを見届けると軽く握り込み、何も無かったように歩き出していく。
どうなのだろう。彼女は今さっきまでいた同年代の生命を終わらせたことを知っているのか。
日常茶飯事で起きていることなのだ。聞いても素っ気ない反応しか返ってこないだろう。
せっかく出来た恋人だった。それ故の代償かもしれない。優しい手の温もりに甘えるしかなかった。