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    minakenjaojisan

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    minakenjaojisan

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    アーサーの誕生日で優勝していたのにログストを読んで死んでしまった

    #ヒスシノ
    hissino

    ログストの感想SS「私の思う幸せな香りは……そうだなあ。ミチルの部屋の薬草にレノさんの羊さんたち、フィガロ先生の医務室……それから、父さまの書庫、母さまに抱きしめてもらった時の匂い………」
     ルチルがキャンドルの材料を揃えながら、懐かしそうに微笑んだ。ミチルとレノックスとフィガロの匂いというのは、シノにもわかる。父親と母親の匂いはわからないけれど、ルチルの表情から、きっと自分にとってのヒースや旦那様、奥様のような幸せな匂いなんだと思った。
    「母様が亡くなった時、父様に絵本で読んでもらった神様の話を思い出したんだ。亡くなった人の魂は、天国に上るんだって。そこでは、いい香りのする花が一年中咲いていて、いつも素敵な匂いに囲まれて暮らせるんだって。その話を聞いてからずっと、花の匂いを嗅ぐたびに、今私は、父さまと母さまと同じ匂いを嗅いでるんだなあって思ってた。
    ……決めた!私、シノには、花の香りでお願いしようかな」
     ルチルがシノに笑いかけた時、ほんのすこしだけ瞳が潤んでいるのに気づいた。
     シノは頷いて、花を集めるために魔法舎を出た。ヒースが任務で──というか、スノウとホワイトのお願いで──いないから、ファウストが今日の授業を休みにした。シノだって、自分がいない時に授業が進んでいたら嫌だ。たとえあまり好きでない座学であってもだ。
     シノはルチルをそれなりに信用しているので、香りについてはルチルに任せた。きっとルチルらしい、ヒースやその両親を想った優しい香りのキャンドルが出来上がるのだろう。
     忙しい仕事の合間を縫ってシノにもよく接した主人は、時折ヒースとシノを両腕に抱えることがあった。二人の目線を自分と合わせて、優しく笑いかけてくれた。
     ヒースの母親も、シノに優しかった。雨の降る昼下がり、ヒースと一緒にシノを抱きしめ、ソファに招いて、絵本を読んでくれた。
     そして、ヒースもまた、大いなる厄災の訪れる晩には、シノを部屋に誘った。ベッドの中で、ランタンをつけて、禍々しい魔力の気配にも負けないくらい楽しい話をして、お菓子を食べて。気がつけば、話し疲れて二人で眠り込んでいた。目が覚めた時、目の前に幼いヒースの柔らかな金の髪につつまれたまるい頭があって、旦那様と奥様のような、優しくて暖かいいい匂いを肺いっぱいに吸い込んで。
     それから誰にも見つからないように、窓から箒で森小屋まで帰ったのだ。
     ブランシェットの人々と触れ合う度に、旦那様の、奥様の、そしてヒースの、似通った優しい香りがシノを包み込んで、むず痒いような、嬉しいような、後ろめたいような気持ちになったのを覚えている。
     シノにとっては、天国の香りとはブランシェットの家族からするな匂いだった。


     森の中で、花を集める。ミチルの薬草の匂い、レノックスの羊の匂い、フィガロの医務室の匂いを想像して、すこし薬草多めに出来上がった花束。匂いを嗅ぐと、申し分ない香りが広がった。シノは満足そうに頷く。
     せっかく森に来たからと、シノは少し足を伸ばして、お気に入りの場所に向かった。そこに咲いているのは、黄色と橙色の中間のような花びらをした、小さな花。ヒースクリフの髪の色のようで、シノのお気に入りだ。それは自分のために摘んだ。
     

    「はい、シノ!私からのプレゼント。いつもありがとう」
     ルチルと共にキャンドルを作った後、それぞれに完成したプレゼントのつつみを渡す。
    「ありがとう。これは俺からだ」
    「花束もくれるの?嬉しい!わあ、本当にいい香り……。素敵なキャンドルをありがとう、シノ」
    「ふふん。ミチル達にも自慢していいぜ」


     部屋に帰って、さっそくキャンドルに火をつけた。暗い部屋に、暖かな光と共に柔らかく広がった香りを嗅いだ。そのやさしい、透き通るような爽やかな香りは、確かにヒースクリフを思わせる。ルチルはセンスがいいな、とシノは満足げに微笑んだ。
     ベッドに寝転がり、目を閉じる。
     きっと自分は天国にはいかないと分かっている。奥様や旦那様、ヒースと同じところにはいけない。けれど、地獄にも花は咲くことを知っている。その花の香りが、このキャンドルのような香りならいいと、シノは思った。
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