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    ジュードくんHAPPY BIRTHDAY!
    バーフレ撮影後に仲良くおしゃべりしてるだけの付き合ってないジュドセイ
    付き合ってなくてもまあキスくらいするか

    バースデーくまくま 祝いの場の背景に置かれたバースデーベア。ふわふわの可愛らしいそれを背から鷲掴みにして、ジュードはセイジの傍へやってきた。
    「撮影に使った小道具は記念に持ち帰っても良いらしい。いるか?」
    「? 僕にくれるの? ジュードくんはいらない?」
    「俺が部屋に飾って愛でると思うか?」
     想像して、セイジはくすくすと笑みを零した。例えばベッドに置いて添い寝する姿、例えば棚に置いて季節の洋服や装飾に着せ替えて楽しむ姿。ジュードがどんな愛で方をしたって、きっと可愛らしくて様になる。
    「いらん想像をしている顔だな」
    「ふふ、ごめんね。でもジュードくんは何してても似合うもの」
     君もそう思うよね、とぬいぐるみの同意を得ようとするセイジ。ブルーグレーのリボンを巻かれ、頭に王冠を戴くバースデーベアはどこか誇らしげである。セイジも自身の誕生日には同じものを用意されたけれど、ジュードのぬいぐるみの方が堂々として見えた。
     動物にするように、首元を指で撫でてやる。もちろん本物の動物ではないから喜ぶことも喉を鳴らすこともないが、撫でた側の人間には愛着が湧く。
    「可愛いね」
    「ぬいぐるみのくせに王冠など乗せて、己の強さのアピールが激しいがな」
    「その視点はなかったなぁ……あはは、そっか、君は強い子なんだね。ジュードくんに似て」
     セイジも誕生日の際にはバースデーベアをもらって、リヒトに贈った。自分には小さなそれもリヒトが抱きしめるととても大きくて、思わず庇護欲が掻き立てられたものだ。
     ともに暮らすようになってしばらくはセイジと添い寝をしていたものの、一人で眠る練習をしたいと告げてきたリヒトとは今は別のベッドで寝ている。ちゃんと眠れているかこっそり覗きにいった際、ぎゅうとぬいぐるみを抱きしめてすやすやと寝息を立てている彼の姿を見て、微笑ましい気分になった。
    「お前のはリヒトにやったのだろう。ならばやはりこいつはお前にやる」
     ずい、と顔に近づけられて、セイジはくまとジュードを交互に見た。ふわふわのくまと、それを鷲掴みにしたままの逞しくも美しい男の手。セイジに向けられる、綺麗な紫色の眼差し。
     ジュードのことを、魅力的な人だと思う。短く整えられた清潔な茶髪も、すっと通った鼻筋も、口元の黒子も。何より全てを見通すように煌めくアメシストの瞳は、色気と真摯さに満ちている。それは誰彼にも向けられる情ではないと、きわめて狭小な彼の交友関係の相手に注がれるものと知っているから、セイジはどきどきとしてしまうのだ。その限られた絆の紡ぎ手の中に自分が含まれていることを知っている。
    「えっと……本当に、いいの?」
    「お前が断ればこれは撮影スタッフに返すだけだが」
    「うう……愛着湧いちゃったからそれはかわいそう……!」
     ふは、と笑ったジュードが、セイジの手を掴んで上向きにする。
    「こいつもセイジがいいそうだ」
     くまの心中を代弁するといったお茶目な冗談。そんなふうに言ってもらえる親しさを、ジュードと築けている。彼の世界にそっと、加えてもらえている。心が跳ねるのを、セイジは必死に抑えた。
    「じゃあ、もらっちゃおうかな」
     どきどきして嬉しくて、セイジはぬいぐるみを抱きしめた。すり、と頬を寄せると優しい肌触りがする、お菓子みたいな色の巻毛。自宅に二つも同じくまが住むことになるのかとふと思い至って、面白い気分になった。
    「ありがとう、ジュードくん。大切にするね」
    「そうしてくれ。まあ飽きるまででいい」
    「ふふ、飽きないよ。あ、でもジュードくんのバースデーなのに僕がもらうばっかりなのもな……さっき渡したプレゼントの他に、何か欲しいものない?」
     四人で催したパーティー内で、セイジは既にプレゼントを贈っている。しかし毎年のことではあるが、ジュードにはあまり物欲がない。唯一執着する存在のビアンキは心ある一人の人間であるため、彼の人権を無視してリボンを巻いて贈るわけにもいかないし、まずセイジは誰かのために他の誰かを蔑ろにすることを是とはしない。
     欲しいものか、とジュードが反芻する。この一ヶ月くらいで仲間や市民から散々に問われた質問だ。ビアンキほどに欲するものなどないが、別に彼を自分のものにしたいわけではなかった。好きな場所で好きなことをして自由に飛び回っているビアンキの姿こそが美しいと、ジュードは思っているのだ。
     手の内に置いておきたいなにか、と考えれば一つ、思い当たるものがある。少し下から覗き見てくるきらきらと丸い瞳。人の良さそうな顔つき。長い前髪が内気な性格に見せるが、意外と神経が図太いのも知っていた。声も柔らかく穏やかで、心を解かせるのに長けている。
     とっつきやすく優しい男なので、セイジを好いている者は多い。困っている誰かを放っておけず、親身になって寄り添ってくれる人間が好意を抱かれないわけがないのだ。そのくせまだ特別な一人がいない優良物件。
    (……特別がいなかったわけではないが)
     恋愛の枠には在らずとも、きっと過去もこの先もセイジの一番深くにいるのはあの男である。セイジの人生を形作った、今はいない男。悔しいが事実だ。
    「そうか……俺は悔しいのか」
    「? ジュードくん?」
     他人の、時として己の優先順位さえも下げてビアンキのことを考えて生きてきたから、今更ながらに気づく感情があった。そんなジュードの目の前で首を傾げるセイジ。もこもこのくまなど与えるんじゃあなかった。相乗効果で余計に可愛らしく見える。
     どうかしたのかと心配そうに問いかけてくる海の碧に、欲が芽生える。視界に入った耳朶になんとなく触れてみたら、跳ねたような声でセイジが笑った。
    「びっくりしたぁ。んふふ、くすぐったいよ」
     なんだその腑抜けた声は。
     勝手にイライラ──否、ムラムラときたジュードは、そのまま吸い寄せられるようにセイジの唇を、べろりと舐めた。驚いて声を上げたいのに、口を開けば中にジュードの舌を迎え入れてしまうからなんにも発せず、代わりに喉から変な音を出すセイジ。真ん丸になった目が、真っ赤になった顔が、全部全部ジュードには面白かった。
    「もらったぞ、プレゼント」
     ジュードの表情は喜色に満ちていて、それでいて整った顔立ちはそのままなのだから、セイジだってときめいて、された行為の意味を鵜呑みにしてしまう。
    「じゅ、ジュードくん、い、いまの」
    「不快だったか?」
    「全然! ……じゃなくっ、て!」
     相手は色恋の話題など交わしたこともなく、優先順位がはっきりと決まっている人間だ。唇を舐められたこと、そのような行動に本来であれば含まれるであろう意味と理由は、セイジの勘違いかもしれない。
     けれどジュード・アレスという男は、興味の持たぬ者の皮膚に、粘膜に、自らの意思で触れたりはしない。しかし、しかし解せないことが一つ。
    「こっ、ここ、こういうときって! き、キスじゃないの……!?」
    「ああそうか、そっちの方がいいのか」
     セイジが欲したから、という名目で、ジュードは改めて唇を重ねにいった。急な展開にまた驚いた様子で、それでも懸命に受け入れようと伏せられたセイジの瞳。縁取る睫毛が震えていて、初心で、健気で可愛らしいと思う。
    「確かに、唇へのキスは特別に気分が良いかもしれない。他の部位は該当しないのだろうか。頭から爪先まで口づけてみれば理解できるかもしれんな」
     よし試してみるか、とジュードの指が青緑の髪を梳けば、セイジが素っ頓狂な声を上げた。獣の標的となった持ち主を、バースデーベアがそのくりくりと丸い瞳で憐れそうに見上げている。
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