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    rioi023_e

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    rioi023_e

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    スケベパート直前、殿下の状況説明まで書いたが、普段かぷものを書かないので挫けてきた!つづかないかも
    軽い‪𝑲𝑰𝑺𝑺‬のみです

    マ注時空ル殿のつづきの書きかけ まず感じたのは、柔らかな布の感触とそして身体の痛みだった。
     重い瞼を薄く開くと、いつも寝かされている場所とは違う、柔らかなシーツの上だった。ふかふかの布団が掛けられていて、あたたかい。寝床の快適さとは裏腹に身体は全身が痛く、重いが、普段の棘が刺すような痛みでもなければ指一本動かせないほどの身体の重さでもない。恐る恐る胸元の方に視線を下げると、いつも忌まわしいほどに巻き付いている呪いの蔓は全くなかった。
    「一時的なものだ。あと何日持つかも分からん」
     遂に解呪されたのではと一瞬浮きかけた心を諌めたのは、聞き覚えのある男の声だった。声の方に視線をやると、白い軍服姿のクレマール族の男が僕の寝ている寝台に近づいてくる。陽光に照らされる金髪の下で、みどりの鋭い目が僕を見下ろす。
     誰だ、と声を出そうとしたが、喉から出たのは嗄れた呻き声と、その後に出てきた咳だけだった。反射的に手を口元に当てたかったが、布団の中でぴくりと痙攣するだけでうまく手を動かせない。その様子を見た男が、布団から僕の手を取り出しした。何年も寝てたせいか骨ばって枝のように細くなってしまっていることに内心驚くが、男はそれについては気にもとめず僕の手首に指を当てる。なんだか脈を診る治療士のような仕草だった。
    「何年寝ていた?」
    「……けほっ」
     質問に答えようとしても声がでず、咳で返すと男は無言で僕を見つめる。なんだかずっと眉間にシワが寄っていて怒っているようにも見えて少し怖い。だが、僕の意に反して男はその大きな身をかがめ、僕の体を起こしてくれた。背中を支える手が大きくて、アルセスのことを思い出した。そういえば、ここは、アルセスは、ラッセルはどこだろう。
     ぼーっと考え事をしている僕の目の前に水が入ったグラスを差し出される。飲め、ということだろうか。手に取ろうと震える手を動かそうとするが、その前に頭がぐらっと傾いて男が支える腕の中に沈み込んでしまった。ごめんなさいと言いたくても声も出ないし、頭はグラグラと揺れるしよく分からない。しばしの静寂のあと、男がベッドに腰掛けて僕を彼自身によりかからせるように座らせた。後ろにも倒れ込まないようにか、背中に回された手でも身体を支えられている。
     グラスが口元に近づいて、かすかに傾けられる。同時に乾燥した唇にぬるい水の温度を感じた。
    「殺すつもりならとうに殺しております」
     果たして知らない男が差し出す水を飲んでも大丈夫か逡巡したのを察してか、男がごもっともなことを言う。確かに、そんな回りくどいことをしなくたって、この人は僕を殺せるだろう。そう思ったらちょっと笑ってしまった。決心して少しずつ水を口に含み、喉を潤すように飲み込む。嚥下するときの喉の痛みでかすかに顔を顰めたが、掠れ声で小さく喋るくらいには少し回復した。
    「……あ、りがとう」
     かすれてはいるが自分の声が出たことにほっとする。男が重ねて何年だ、と聞いてきたので小さく首を振った。
    「わからない」
     体感時間なんてものはなかった。薄く引き伸ばされた時間のなかで意識が浮上しては、沈んでいくを繰り返していただけなんだから。何年も繰り返してただろうことだけは、何となくわかるくらいだ。
     それを聞くと男は落胆もなにもなく「そうか」と答えただけだった。
    上体を完全に男に預けている形だが、それでも、だんだん体が重く、苦しくなってきて身体がずり落ちていく。呪いは何故か発現していないが、単純にずっと寝たきりだった身体が悲鳴をあげているようだった。
     男は黙って僕を寝かせる。そのまま引きずられるように、意識が落ちるように眠りについた。


     その日から、クレマール族の男の部屋のベッドの上で過ごす日々が始まった。
     ユークロニアの国旗を外套につけたその男は、恐らく位の高い軍人なのだろうか。だが、彼は僕に対して慇懃な態度は崩さないものの、今の状況を説明することはない。ただ、部屋で何も出来ず寝込んでいる僕の介抱をしては部屋でなにか書き物をしていたり、部屋の外にでてしばらく居なくなったりしていた。
     特別なことといえば、介抱の合間に唇を軽く合わされること。男同士でそんなこと、恥ずかしくて仕方ないが、合わされた時に身体を巡る温かさと安堵のせいで力が抜けて抗議の声をあげることすらできない。多分、この口付けでなにかを――おそらくマグラを――流し込まれている。
     そのおかげなのかわからないが、何日か眠って、起きて、を繰り返しているうちに、食事もとっていないのに手を動かしたり、声を出したり、座らされたりしてもあまり苦にはならないくらいには、身体が回復してきた。どういうカラクリなのか、よく分からない。
     とはいえ、そうして少しずつ自由のきくようになる身体とは裏腹に、相変わらずここがどこか、男が何者なのか分からずにいる。
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