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    NumanoSakana

    @NumanoSakana

    メギド MDZS グラブル
    R18作品に関しまして、18才以下を含め、18歳を迎えていても『学生』であれば閲覧を控えていただきますようお願い申し上げます。

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    NumanoSakana

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    寂しさからの怒りでドラゴンになっちゃった江澄をつけねらう蜘蛛曦臣
    黒い狐の魏嬰と魏嬰が好きすぎて自分の毒に溺れて欲しい藍湛

    ##MDZS

    幼馴染みで、義兄で、師兄で、戦友で、敵になった夷陵老祖・魏無羨が江澄をおいて自ら操っていたはずの屍凶に八つ裂きにされて十余年。
    江澄の中で義兄は父のお気に入りで江澄が躊躇うことも簡単にやってのけ、英雄になりたがる、決して追いつけない憧れであった。だからこそ義兄を名乗る輩を捕らえて江澄の鬱憤を拷問で晴らしているうちに赤子であった金凌は生意気を言うほど大きくなった。だというのに義兄は一向に誰の身体も奪わず、金凌の顔を一度たりとも見にも来ず、江澄の不満を聞きに来てくれない。
    執務室で一人ため息をつけば机の上に音もなく鼬が登ってきた。江澄の使い魔であるこの鼬は彼が心配で顔を見にきたらしい。その使い魔の全身をありがとうと労うように撫でれば気持ち良さそうに寝転がる。その毛皮は滑らかで美しいきつね色をしていた。狐は義兄の獣だった。それは美しい黒狐で犬に似ているのに嘲るような顔が江澄はいつも気にくわなかった。突然キィと甲高い鳴き声がした。見れば穏やかに撫でていた江澄の手は薄く紫に輝く黒い鱗に覆われ指先にある蜥蜴のような鋭い爪が使い魔の柔い肉を突き破っていた。慌てて治療を施す手はすでに人のものに戻っており、この場面だけをみれば怪我をした獣を治療しているようにしか見えない。だが江澄はまたやってしまったとため息をつく。彼を心配そうに見る使い魔の視線が胸に刺さる。
    姉と義兄を失って早十余年。江澄が怒りに呑まれ竜へと変化したのと同じ月日が立っていた。

    人には沢山の欲がある。食欲や睡眠欲などがそうだ。細かく分けてしまえば際限がないが大きく七つに分けれると考えられている。
    傲慢、強欲、色欲、嫉妬、暴食、怠惰、そして憤怒。欲があること自体は問題ない。だがその欲が少し強くなると人に獣が憑く。この憑いた獣は別段なにをするわけでもなくただ憑いていることが多いが欲が強ければその獣もまた強くなり人に懐くようになる。修士は金丹のせいなのか、はたまた修行の過程で抑えた欲が多いせいか獣が憑いているものが圧倒的に多い。修士からすれば自らの欲をさらしているようなもので家族や親しい者には教えるが普段は隠しているものが殆んどだ。
    ただなにごとも過ぎるのはよくない。嫉妬に呑まれれば人魚になり、強欲に呑まれれば醜い小人に成り果て人ではなくなってしまうのだ。欲に呑まれた人に憑いていた獣は使い魔に変わる。
    江澄はあの戦いで家族を失った数日後、寂しさが怒りに変わりそのまま呑まれていまい竜へと変化してしまったのだ。この秘密を知るものは江家でも一握りで秘匿できている。それも未だに不完全な変化であったせいか普段は人を保っていられるからなのだが。ふとした瞬間怒りに呑まれ露出してしまうこともあるが十年あればその頻度は一人の時に限られてきた。
    殆んど治ってきた使い魔の傷口を見ながら江澄はため息をつく。最初は角がでてきていただけであったのに今では全身を鱗が覆っているその身体を誤魔化し続けていることを知っているのは江澄ただ一人である。


    2年前、当時の金宗主・金光瑶の長年にわたる企てを暴かれて義兄への思いが憎しみの怒りから頼って貰えなかった悲しみへと変わった。江澄の怒りの大きな原因は魏無羨が江澄に黙って去ってしまったことにあり、実際には裏で企てられていたことがあったと知れば消し去ることはできないが怒りの火は弱くなる。そのせいか13年もの間江澄を蝕み続けた竜化が止まり自らの力へと変わっていた。怒りに呑まれていないせいか彼との関係性は少し向上しておりごくたまに文を交わして互いの近況を教えあっている。だけどいつか雲夢へと戻ってきて師弟たちに指導をしてくれないかと江澄は密かに思っている。
    そんなおりに届いた1通の手紙を読んで江澄は久しぶりに嬉しいという感情を思い出すことができた。義兄から届いた文に『ようやく金丹ができた』と踊るように書かれている。江澄は微かに笑うと祝ってやるから来いと返信するために筆をとる。江澄には2年前に義兄と和解してから決めていたことが一つだけある。それは義兄に金丹ができたら江澄が竜であることを打ち明けること。義兄が江澄に知らせず金丹を移していたことは耐え難い真実であった。意趣返しのつもりで江澄も黙っていたのだ。これをきっかけにして師兄とまた肩を叩きあえる関係になればいいのだが。


    繭がある。繭の中には竜がくるまれている。全身を真白な糸でくるまれた竜はそこから顔だけを此方につきだして美しい紫水晶の瞳で見ている。
    藍曦臣はその顔に吸い寄せられるように口づけを施し、自らの体液を竜に注ぐ。すると繭が蕩けて中から人の身体が姿を現してそのまま藍曦臣の懐に抱きとめられた。その額からは紫に薄く輝く黒い角が見えているので厳密にいうと人の形をした竜だ。その美しい顔は江澄そのもので藍曦臣は抱いている身体を再度抱きしめる。抱きしめるその顔はしわくちゃの小汚ない老人で身体は子供だと思うほど小さくその小人はなにも写さない目を見開いてうっとりと嗤う。
    『やっと手に入った』

    は、と藍曦臣が目を開ければ昨日と変わらない自室の天井が見える。夢が現実になればいいのにと思うに留める。身体を起こして朝餉の準備をしていれば小さな蜘蛛が袖口に捕まっている。その蜘蛛の背中に紫の線が紅を引いたように艶かしく光っている。蜘蛛を払う素振りをして袖の中に隠す。
    隠した蜘蛛は彼の使い魔の一匹で江澄につかせていた蜘蛛だ。藍曦臣は表情には一切ださず心の中で満面の笑みを浮かべていた。もうこの世にいない義弟を思い出す。阿瑶、物事が思い通りに運んでいっていた時は君もこのような心地になっていたのかとかつての義弟の柔らかい微笑みに思いを馳せた。

    13年前に死んだ魏無羨が献舎をへてこの世に戻ってきて金光瑶の企てを暴いたのが2年前。その後はれて弟の道呂となり金丹を作るために日々二人で頑張っているのは聞いていた。まさかこんな早くに金丹ができあがるとは。
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    NumanoSakana

    MEMO寂しさからの怒りでドラゴンになっちゃった江澄をつけねらう蜘蛛曦臣
    黒い狐の魏嬰と魏嬰が好きすぎて自分の毒に溺れて欲しい藍湛
    幼馴染みで、義兄で、師兄で、戦友で、敵になった夷陵老祖・魏無羨が江澄をおいて自ら操っていたはずの屍凶に八つ裂きにされて十余年。
    江澄の中で義兄は父のお気に入りで江澄が躊躇うことも簡単にやってのけ、英雄になりたがる、決して追いつけない憧れであった。だからこそ義兄を名乗る輩を捕らえて江澄の鬱憤を拷問で晴らしているうちに赤子であった金凌は生意気を言うほど大きくなった。だというのに義兄は一向に誰の身体も奪わず、金凌の顔を一度たりとも見にも来ず、江澄の不満を聞きに来てくれない。
    執務室で一人ため息をつけば机の上に音もなく鼬が登ってきた。江澄の使い魔であるこの鼬は彼が心配で顔を見にきたらしい。その使い魔の全身をありがとうと労うように撫でれば気持ち良さそうに寝転がる。その毛皮は滑らかで美しいきつね色をしていた。狐は義兄の獣だった。それは美しい黒狐で犬に似ているのに嘲るような顔が江澄はいつも気にくわなかった。突然キィと甲高い鳴き声がした。見れば穏やかに撫でていた江澄の手は薄く紫に輝く黒い鱗に覆われ指先にある蜥蜴のような鋭い爪が使い魔の柔い肉を突き破っていた。慌てて治療を施す手はすでに人のものに戻っており、この場面だけをみれば怪我をした獣を治療しているようにしか見えない。だが江澄はまたやってしまったとため息をつく。彼を心配そうに見る使い魔の視線が胸に刺さる。
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    DONE曦澄ワンドロワンライ
    第三回お題「夢」

    本編終了後、付き合っている曦澄。
    現実での大事なものと、本当は大切にしたいもの。

    ムーンライト宗主→ごめんねすなおじゃなくて→夢、という連想結果が何故こんなことに。
     その夜は金氏と合同の夜狩だった。そこで江宗主は大怪我を負った。
     邪祟から師弟を庇い、腹に穴をあけられた。
     江澄自身、これはまずいと感じた。血を吐き、体から力が抜ける。
    「宗主!」
     倒れたところを誰かに抱え起こされた。
     すかさず金凌が矢を射る。放たれた矢は狙い違わず邪祟を貫いた。
    「叔父上!」
    「金凌っ……」
     声にできたのはそれだけだった。怪我をせず、健やかに、生きてほしい。お前の生きていくこれからは、どうか穏やかな世界であるように。
     江澄は手を伸ばそうとしてかなわなかった。
     まぶたの裏に、白い装束の影が映る。心残りがあるとすれば、あの人にもう会えないことか。
    「誰か止血を!」
     怒号と悲鳴が遠ざかり、江澄の意識は闇に沈んだ。


     まばゆい光の中で、白い背中が振り返る。
    「江澄……」
     ああ、あなたは会いにきてくれたのか。
     江澄は笑った。これは現実ではない。彼は姑蘇にいるはずだ。
     体を起こそうとして、まったく力が入らなかった。夢の中くらい、自由にさせてくれてもいいのに。
    「気がつきましたか」
    「藍渙……」
     ほとんど呼んだことのない名を口に出す。これが最後の会話にな 1653