焼肉と一緒にすんな「悟、それまだ。こっち焼けてるから先に食べな」
「これ何?」
「カルビ。さっき頼んだご飯と一緒に食べるやつ。あ、ついでにタレ頂戴」
「あの海苔ご飯?へー旨そ。タレ何がいい?」
「レモン。悟はなにで食べてるの?」
「塩。飲み物頼むけどなんかいる?」
「通だね。私ウーロン茶。あと好きなの頼んでいいよ。食べ放題だしまだまだいけるでしょ?」
「傑もな。じゃあこっからここまで二人前ずつ~あっ土手煮食いたい」
「土手煮ちょっと摘まんでいい?一つもいらないけど一口食べたい」
「おっけ」
金曜日の夜、家族連れで賑わう食べ放題の焼肉店に二人は来ていた。奥まった座敷に通してもらったから平気だろうと、入店時につけていたキャップとマスクを取る。悟はサングラスをつけたままだ。本人曰く視力が良過ぎて辛いらしい。一般のサングラスよりも暗めのそれでは焼き加減がわからないだろうと、傑が率先して肉を焼いている。もしその目のことがなくても傑は焼肉奉行になっていただろう。元来、世話焼きな質なので。
1958