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    亜久堂 御狐

    @AKUDO_FOX 雑多。意味がわかったらわたしとあくしゅ。

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    亜久堂 御狐

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    なんてことない土砂降りのはなし。

    #夏五
    GeGo

    バケツの底油断していたといえばそれまで。でもそんなダセー事認めたくないだろ。降水確率なんか見たことない。サングラスの隙間から雨雲が見えればそれで十分。気付かなくたってぽたっと一滴当たればそれで無下限張れるんだから、傘なんていらなかった。
     その油断がゲリラ豪雨への対応判断を鈍らせた。
     「だからそんなずぶ濡れかつ不機嫌なんだ?」
     「うっせ」
     バケツをひっくり返したようなってよく聞いたけど本当にその通りの大雨だった。雨粒ひとつが当たる間もなくざばっと降って、バケツが空っぽになったかのようにぴたっと止まる。任務で屋外にいた俺はタイミング悪く任務の、それも祓ってる途中で、身構える間も無くずぶ濡れ。廃墟内に逃げ込んだ呪霊を追っていた傑は難を逃れたのだった。
     「げ、パンツまでびしょびしょ」
     帰宅した玄関先で制服の裾を絞る。制服ですらこれだけ水を吸ってるんだ、下着まで染み込むのは当然だろう。寒くなってきたしさっさと脱いで風呂に浸かりたい。そう自室へ向かいかけた俺に待ったをかけたのは傑だった。
     「悟、私の部屋おいで」
     「なんで?俺早く風呂入りたいんだけど」
     「いいから」
     こっちはちっともよくねぇけど?とは思ったが、強引に誘ってくるなんて珍しい。好奇心半分で大人しく向かうことにした。
     間取りは同じでも置いてる物で全く別の部屋に見えるから、寮だろうと人の部屋へ向かうのはわくわくする。家具のひとつひとつに『傑っぽさ』が滲み出しているので、この部屋へ訪れるのは好きだ。
     「着替えは用意しておくからお風呂入っておいで」
     しかし入ってすぐタオルはこれ、シャンプーやら何やらは勝手に使っていいからと脱衣所に押しやられた。いつにも増して世話焼きな様子に未だ頭に疑問符を浮かべるも、冷え切った身体は風呂を前にして早く温まれと催促するようにぶるりと震える。濡れて張り付く布を悪戦苦闘しつつ身体から剥がすと風呂場へと足を踏み入れた。
     
     何となく身体全体を、隅々までしっかりと洗ってしまった。特に意味はないけど、外出たし。うん。部屋では普段着に着替えた傑が寛いでいて、俺が上がったのに気付くと「髪、ちゃんと乾かしなよ」と言って立ち上がりキッチンへ向かった。かなり時間をかけてしまった自覚があるため少しだけばつが悪い。頭にタオルを被り髪を拭くふりをしつつちらちらと視線を向けた。傑は特に気にした様子なくコンロで鍋をあたためている。ほっと胸を撫で下ろすと、今日のところは傑の言うことを大人しく聞いてやろうと決めた。
     短髪だからすぐ乾く。なんならドライヤーもいらないくらいだと自分では思っているけど、かけなかった日に傑はいつも目敏く指摘してくる。それがウザいので最近はちゃんと乾かすようにしている。といってもそんなに長い間あててりはしないけど。
     ドライヤーを切ったところで傑がマグカップを持ってやってきた。
     「市販のやつだから口に合うかわからないけど」
     甘い香りと並々注がれたブラウン…ココアだ。サンキュと受け取り早速ひとくち。ココアを飲むのは初めてじゃないけど、何だか俺の知ってるものよりずっと甘く感じて美味しい。確実に傑の味の好みじゃない。わざわざ俺用に作ったのかと思うと胸を掻きむしりたくなるようなむず痒さに襲われる。
     「あったまったばかりなんだから、湯冷めしないようにね」
     そういいながらブランケットで包んでくる。空調も弄って暖房の温度を少しあげた。なんだこれ、なんだこの至れり尽くせり。不審に思っていることを隠さず眼差しに乗せて傑を見ると、それに気づいて笑った。
     「別に何も考えてないよ。悟絶対に適当にすますって思ったから連れてきただけ」
     当たりでしょ?と言われれば返す言葉もない。確かに自分一人であればここまで丁寧な暮らしはしない。何も言わずココアを啜っていると「ほら図星」と益々笑われてムカついた。何か言い返してやりたい、コイツの調子を崩してやりたい、と反撃する。
     「本当かよ」
     何が?と首が傾げられる。
     「本当に何も考えてなかったワケ?俺がお前ん所の風呂入って温まるだけで済ませたと思う?」
     ずいずいと顔を寄せて挑発的に囁く。俺が目線で下腹部を見遣ったのに気づき、理解した傑がカッと頬を染めた。
     「…私も入ってくる」
     前屈み気味になって小走りで風呂へ向かう傑に漸く溜飲が下がった。少しぬるくなったココアをちびちびと飲み進める。
     さて、かなり煽ってしまったがこれからどうしようか。
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