50gの約束「……な……ど………!」
名を呼ばれている。助けを求める声だ。か細い声は今にも掻き消えそうで、耳をそばだてなければまともに音としての意味を成さない。ロナルドは走る。間に合え、間に合え。風を切り、アスファルトを踏み締めて駆ける。駆ける。今日の退治は悲惨なもので下等吸血鬼のオンパレード。1匹を退治すれば10匹出てくるような無尽蔵に湧くのではないかむしろこの下等吸血鬼を全て倒したらシンヨコの下等吸血鬼は全て駆逐できるのではないかと思うほどの発生数だった。もうスラミドロなのか果たして別の吸血鬼なのか判別できない体液で退治服はべとべと、もちろん身体はボロボロで体力は一欠片も残っていなかった。身体の至る所がすり剥けていたし、ここが事務所ならば痛い痛いとひとしきり叫んだあと、ジョンの腹毛を吸いに吸って泥のように眠ってしまいたい。早く事務所に帰って洗濯物を押しつけて、ぐっすり寝てやると意気込んでいたのだけれど。
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