Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    甘味桜

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    甘味桜

    ☆quiet follow

    ⚠燈灯夜くんの過去捏造⚠
    紫狼くんに救われてる灯夜くんの話。

    藤色の愛情両親は灯夜のことを愛してくれていたし、大切にしてくれていた。
    だけど、とても忙しい人で、なかなか会うことができなかった。
    いつも灯夜の面倒を見てくれたのは、使用人だ。
    彼らもみんな優しかったけれど、本当は親と一緒にいたかった。

    あれは、いつのことだったろうか。
    灯夜がまだ子供の頃、一度事故に巻き込まれたことがある。
    幸い命に別状はなかったものの、しばらくの間入院が必要になった。
    それなりの時間を病院で過ごしたが、結局その時も、両親は会いにきてくれなかった。
    見舞いに来てくれた使用人たちは、二人が心配してくれていることを伝えてくれた。
    退院して、ようやく会える時間が作れた時も、両親は泣きそうな顔で灯夜に謝ってきた。
    わかってる。ちゃんとわかってたよ。
    二人が心配してくれてたことも、会いに行きたいと思ってくれてたことも、それが叶わないほど忙しいことも。
    全部、全部わかってる。
    だからいつも平気なフリをした。いい子のフリをした。
    寂しい、ずっと一緒にいてほしい。そんなことを言ったら、困らせてしまうから。

    その代わり、部屋の中で一人の時はずっとずっと、泣いていたのだ。

    〜*〜

    ふわりとなにか良い香りがして、灯夜は目を開いた。
    僅かに開いたカーテンの隙間から、夕日が差し込んでいる。どうやら、読書をしているうちに眠ってしまったらしい。
    膝の上には、紫狼がかけてくたであろうブランケットがかけられていた。
    「起きたか、灯夜」
    その紫狼がキッチンから顔を覗かせた。
    先ほど感じた香りは、彼が作っている夕飯のものだったようだ。
    「すみません、任せてしまって」
    「いや、構わない。それよりよく眠れたか?」
    「まぁ……そうですね」
    とても懐かしい夢を見た。
    灯夜が幼かった日の夢だ。
    甘えたいのに、甘えられなかった、子供の頃の記憶。
    さすがにこの歳になると、親に会えなくて寂しいという感情も薄れるが、あの時寂しい思いをしていたのは、どうしようもない事実だ。
    「なんだか、歯切れが悪いな」
    「そんなことないですよ。少し、懐かしい夢を見ただけです」
    「……そうか」
    なおも心配そうな顔の紫狼に、灯夜は微笑みかけた。
    これは彼に言っていないが、自分はかなり紫狼に救われている。
    あの日、紫狼が灯夜に手を差し伸べてくれた日。
    あの瞬間、今の自分だけではなく、幼い自分も救われたような気がした。
    いつも部屋の中で泣いていた、小さな子供。
    あの子も今は、優しい愛情に包まれている。
    「今日の夕飯はなんですか?」
    「灯夜の好物を用意した。楽しみにしてくれ」
    灯夜は、心の中であの日の自分に話しかけた。

    大丈夫。君は将来、誰より優しい人に出会うから。だからもう、泣かないで。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭😭😭😭😭🙏🙏🙏💞💞💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator