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    おわり

    @owari33_fin

    アズリドとフロリドをぶつけてバチらせて、三人の感情をぐちゃぐちゃにして泣かせたい

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    ミーティア3️⃣ Az-18 『家族』

     リドルと子供達との生活は、僕にとって未知そのものだった。
     三人と暮らす前に、子供との接し方を勉強して、職場の子持ちに聞いてはみたが、現実は予測していたその一〇〇倍大変で……再会して初っ端、油断した僕への二人による全力のタックルに始まり、食事するのも、話をするのも、体中のエネルギーを爆発させて動く未知の生き物のようにさえ思えた。
     書斎で勉強中。意味のわからない奇声が階段から聞こえて、驚いて様子を見に行けば、二人が階段をどの高さから飛び降りて着地するかという遊びに勤しんでいた。
    「危ないからそんな遊びはやめろ!」
     そうやって怒っても「ごめんなさ〜い!」と階段を駆け下りて逃げる二人は、毎日家の中を全力で駆け回っていた。走って転んで、それでも泣くどころか笑っている。そうやって仲良く暴れていたかと思えば、掴み合って喧嘩もして、リドルがその度に二人の間に割って入り、まるで裁判官のように二人の話を聞いて、平等に裁く。その姿に、リドルが二人をどうやって育ててきたのかを見せられた。
     リドルの母親を、僕は一度見かけたことがあった。
     消えたリドルを探すために、魔法執行官を連れ立って学園に乗り込んだ母親は、怒りに駆られ息子の部屋をひっくり返し、甲高い怒鳴り声を上げて息子の名を呼んで、副寮長のトレイ・クローバーに向かって「またあなたのせいなの!?」と見当違いの怒りをぶつけていた。
     そして、学園長や教師陣からリドルの身に起きた呪石の話を聞いて、「許せない」と自分の元を去ったリドルに、呪詛のような暴言を吐きつけて、リドルによく似た顔を赤く歪めていた。
     あんな女から産まれたのに、リドルの子供への接し方は実に愛に溢れていた。愛しいと二人を愛情いっぱいに抱きしめ、それでも悪いことはきっちりと叱り、謝れたら二人を褒めるその姿に、母さんが重なった。
     僕の知らない、子供たちの母親として生きるリドルは、僕の目にさらに美しく見えた。
     だからリドルに好きになってもらえる男になろうと、前までならこの先の縁や、仕事で上に行く為に支払ったプライベートという代償を家族以外に使わなくなった。
     リドルや子供たちと食事を取るために、徹夜でどれだけ眠くても起きて、子供たちと食事を取って話しをしてから仕事に向かう。夕方は、全ての誘いを断って夕食前に家に帰り、二人を風呂に入れ、四人でリドルの作った夕食を食べる。
     食後は二人の今日あった出来事を聞いて、歯を磨かせてベッドに連れていき、二人が寝るまで絵本を読んだ。途中、風呂から上がったリドルがベッドに腰掛けてその様子をそっと見守り、最後は眠った二人の額にキスをする。
     リドルは、子供が産まれてから習慣になったキスを時折無意識に僕にまでしようとして、そのキスを遮ってリドルの手を取って僕がキス仕返した。
     そして、リドルと子供たちを挟んで眠りに、リドルの寝息が聞こえた頃、僕はベッドから這い出して書斎で持ち帰った仕事や勉強をする。これが僕のルーティンだった。
     子供たちも、僕を父親だと(多分)好いてくれている、リドルだってきっといつか僕を心から好きになってくれる、それだけをがむしゃらに考えた生活の先、問題が起きた。
     家族で出かけた水族館の帰り、落とし物を拾ったアスターが、それをサミュエルと追いかけて渡したときだ。

    「よかったねお父さんとお母さんとお友達・・・と一緒なんて」
    「あらそうなの!? ごめんね! その子だけご両親と似ていなかった・・・・・・・から、あなたのお友達だとばかり……」

     この言葉に、俯き酷く傷ついたサミュエルの表情は、リドルだけでなく僕にもかなり痛かった。
     僕は、どう足掻いてもサミュエルの本当の父親にはなれない。サミュエルの父親は、フロイドだからだ。血の繋がっていない、そして容姿も全く違う僕が、この子の父親になることは出来ないのだと、そこにたどり着いた時。僕は初めて、血というどうにも抗えない事実を嫌悪した。

     あの日から、リドルは僕に距離を作るようになり、ボーっと考え込むようになった。
     リドルの心を今占めるのは、サミュエルよりもきっと、フロイドのことばかりなんだろう。少し前までは許された距離に、今は入ることを拒絶され、よそよそしささえ感じてしまう。僕はまた、振り出しに戻ったんだ。
     それでも、子供たちの前では絶対にそんな態度を見せぬように、前以上にアスターにもサミュエルにも、二人に僕を父親だと思って欲しい一心で振る舞った。
     その日は休日で、近くの公園に家族でピクニックに行こうと提案していたが、リドルが体調を崩し、僕と子供たちだけで向かうことになった。二人が僕を挟んで両手を掴み、見上げる顔が嬉しそうで、思わずホッとしてしまう。
     公園についたら、全力で走り回る二人を見ながら、どうかサミュエルのあの日の傷が、少しでも和らげばと、そう祈った矢先。あいつはワザととしか言いようのないタイミングで僕の前に現れた。
    「おやおや、アズールお久しぶりですね」
     もう暑い季節にもかかわらず、カタギにしか見えない黒いスーツを着たジェイドは、相変わらず感情の見えにくい笑みを浮かべて、ジューススタンドに立つ僕を呼び止めた。
     なぜだか酷く嫌な再会に、僕は一瞬眉を寄せるも、すぐさま笑みを貼り付けて、ジェイドと再会を喜んだ。
    「本当に久しぶりですね、お前のその格好……家業の仕事の最中ですか?」
    「えぇ、けれど懐かしい顔を見かけてしまい、つい車を止めて呼びかけてしまったのですが……珍しいですね、アズールが誰かのために飲み物を買いに来るなんて」
     視線を手元に下げたジェイドが、明らかに子供が好みそうなカップを捉え、そしてそのまま、僕の左手の薬指に視線を動かす。
    「おや? アズールあなた、ご結婚されたのですか?」
     ギクリと、僕が奥歯をギュッと噛むと、ジェイドがそっと目を補足して僕の指にあるそれに視線を絡め指摘する。
    「僕とアズールの中ではないですか、ご結婚されたのなら教えてくれてもいいのでは? もちろん、フロイドと一緒に奥様とお住まいの家まで結婚祝いを持ってお祝いに行きますよ」
    「いえいえ、そんな気遣いは無用です。それに、僕の妻は、お前のような男が苦手なんだ。清楚で可憐な僕の妻が怖がらないように、巣に引っ込んでいてくれ」
    「しくしく、久しぶりに会ったのに、アズールは冷たいです……ね……」
     ジェイドの視線が、一瞬僕の後ろを捉える。どうしたんだと振り返ればそこには何もなく、ジェイドも「いえ、特に……何でもありません」とはぐらかすから、僕もその時はそこまで気に留めなかった。
    「もういいですか? 人をまたせているんで、ここでお前と話している時間は僕にはありません」
     いい加減、氷も溶けてぬるくなりそうな手の中のジュースの事を話題にすれば、ジェイドは「そうですね、僕もそろそろ、用事があるので行こうと思います」とニコリと笑う。
     じゃあと言ってジェイドに背を向ければ、その背に向かってジェイドが「それではアズール、また会いましょう」と意味ありげにつぶやいた。
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