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    おわり

    @owari33_fin

    アズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア4️⃣中編-15 『en:Return②-4』

     anathemaから逃げる準備をするため、フロイドがオクタヴィネルに一度戻る後ろ姿を見送ってから、ボクは自分の用意のためにクローゼットの中を探った。
     フロイドからは『逃げるなら荷物は最小限ねぇ』と言われていたので、少しの衣類とお金に替えられそうな小物を数点、それを急いでミドルスクールの時から使い続けた赤茶色の牛ヌメ革のショルダーバッグに詰め込む。
     後は、逃げる旨と探さないで欲しいと書いたメモを残し、一年と少し使った寮の自室を後にする。隠蔽魔法を使い、誰にも見つからないように鏡舎に向かえば、先にフロイドが黄色と青のラインが入った黒いダッフルバッグを肩に掛け待っていた。その大きな荷物を見て、本当にこれから全てを捨てて逃げるのかと考えると、どうしてもお母様の怒る声が頭に響き、後ろを振り返らずにはいられなかった。
    「あはっ、さっきも思ったけど、なんで運動着なの? そんな格好じゃすぐバレちゃうよ金魚ちゃん」
     ボクを見たフロイドが指摘するように、今のボクは先ほどのまま、学園指定の運動着だ。この運動着には、ハーツラビュルカラーの赤いファスナーや、胸ポケットの寮章、更には学年とクラス、おまけに出席番号まで入っている。確かに、この服装だとナイトレイブンカレッジの学生に馴染み深い人たちなら、すぐさま分かってしまうだろう。
    「今の手持ちの服では、これ以外ウエストが入らないんだ。出来ればどこか、落ち着いたタイミングででも合う服を購入するよ」
    「あ〜そういう事かぁ」
     納得したフロイドは、自分のダッフルバッグの中から、黒くて派手なピンクのラインと文字が入ったジップアップパーカーを引き摺り出し、「はい、腕通して?」と言ってきた。
     言われた通りに服に腕を通し、フロイドがパーカーのジッパーを上げると、すっぽりとパーカーの中にお腹が隠れてしまった。ボクが着ると膝丈になるサイズのそれは、黒地にピンクの配色は目立つ色合いだけれど、体のラインが隠れたおかげでお腹の膨らみがわかりづらいのはいい事だ。
    「これでよし、じゃあ行こう」
     ニコリと笑うフロイドが手を差し出す、その手のひらを握り返し、ボクたちは学園の結界が薄い場所……いわゆる“抜け道”とされる、夜に街に遊びに出る輩が使う場所から学園の外に逃げ出した。
     手慣れたフロイドに「キミ、もしかしてこの抜け道をよく使ってるんじゃないだろね」と怒って見せたら、「そのおかげでこうやって逃げれるんでしょ」と言われ、本来ならアズールだけでなく先生方にも厳重に注意してもらい、結界の綻びを修復しなければならない案件なのだが。今この瞬間、学園から去ろうとするボクには、もうどうすることも出来ない。ボクは今この瞬間を持って、ナイトレイブンカレッジの生徒ではなくなってしまうのだから。
    「フロイド、キミ……逃げるってアテは——」
    「シッ!」ボクの口を押さえ警戒するフロイドの視線の先を見れば、ダーハム・グレイソンのコートに入っていた『anathema』のロゴが入った小型の貨物船が、学園の正門の前に鎮座していた。
    「アイツら、こんな時間からもう張ってんのかよ……ウザッ」
     小声で小さく舌打ちしたフロイドは、警戒しながら唯一麓の町へ繋がっている道ではなく、切り立った崖のある森の方に進んでいく。音も最小限に崖に突き当たると、ボクの腕ほどの木の枝をフロイドがどこからか持ってくる。
    「金魚ちゃん、声出したり、舌噛まねぇようにね」
     言ったフロイドが、ボクを抱きかかえ崖から飛び降りた。叫びそうになる声を口を抑えて我慢すれば、フロイドは手にした木の枝に魔力を流し、途端、下降がゆっくりとした動きになる。そのまま一分程度で麓の町、西端の森になんとか無事に着地すると、フロイドが「オレって天才!」とカラカラ笑っていた。
    「おい! こんな危ないことをするなら、事前に言っておくのがマナーだろ!!」
    「え〜さっき思いついたから仕方ねぇじゃん」
     金魚ちゃんウルサイなぁ、アイツらにばれちゃうよなんていつもの調子で言いながら、ウギィと叫びかけたボクの口を手で押さえた。
    「で、これからどうするつもりなの?」
     怒りをなんとか飲み込んで、この先の事をフロイドに聞けば、とにかく町を目指そうと歩き出す。がしかし、いつもならなんとか足を早めて歩けば追いつく歩幅が、張りでたお腹のせいでうまくいかない。
     それに気付いたフロイドが「金魚ちゃんはちっちゃいからなぁ」と、ボクを横抱きに抱き上げた。横抱きというか、これは俗に言うお姫様抱っこというやつだ。
     男のボクがフロイドに軽々とお姫様抱っこされるなんて、男としての沽券に関わる。悔しさに「ウギィ」と唸ると、フロイドはずっと楽しそうに笑っていた。その顔がボクの毒気を抜くには簡単で、ほんの一ヶ月前まで、この男にこんな風に抱き上げられる未来が来るなんて、ティースプーンひと匙ほども考えた事がない。世の中、本当に何が起こるか分からない。
    「重いだろう?」
     そう問えば、フロイドは「金魚ちゃんはジェイドの三分の一もないから大丈夫」と、なんとなく体付きを貧相だと言われたような気がし、不服さから唇を尖らせる。
    「ボクは早生まれだから、周りより少し成長が遅れてるだけだ……!」
    「あはは! 金魚ちゃんそう言いながら、入学式から数センチしか伸びてね〜じゃん」
    「数センチ伸びたのなら、もっと伸びる可能性だってあるだろ。もしかしたら、キミを追い抜かしてしまうかもしれないよ」
     ふふんと笑えば、フロイドは楽しげに笑って「じゃあ、楽しみにしてるねぇ」と全く信じていない。フン、笑っていられるのも今のうちだ。来年には、同じ目線か見下ろしてやるんだから、とボクは密かに心に誓った。
     それから三十分ほどで、町の港にたどり着いた。そこには明かりの灯った中型の夜行船が停泊している。
    「陽光の国まで、一番いい部屋でおねがぁい」
     二枚分の料金を支払うフロイドに、自分の分のマドルを出そうとすれば「いらない」と手で押し返された。フロイドに手を引かれて乗り込んだ船内は、ボクの知っているような客船とは違い、本当に寝る場所があるだけの部屋だった。しかもツインルームじゃない、セミダブルのベッドが一つ……
    「金魚ちゃんはちっちゃいから、二人で寝てもダイジョウブでしょ」
     疲れたねぇとベッドに寝転んだフロイドに、マドルを出してもらったんだからと、なんとか不満を飲み込んでベッドの端に腰を下ろした。
    「この先、どうするの?」とずっと聞きたかったこの先の話を口にする。
    「オレの家に行こう」
    「キミの? 海の中なんて、急には無理だ」
    「違う違う! 陸にある、陸にある親父の拠点に行くの。そこだったら、金魚ちゃんひとり匿うくらいできるよ」
     大丈夫とつぶやきながら、フロイドはウトウトと眠ってしまった。木の枝なんてもので飛行術を使い、ずっとボクを抱えていたんだ、疲れないわけがない。少し乱れたフロイドの髪を指で直して、重い体の下からシーツを引っ張り出して彼の体に掛け、その横に潜り込む。
    「やっぱり狭いじゃないか……」
     フロイドの体に寄せなければ落っこちてしまいそうなベッドの上、ボクはもう少しだけ体をフロイドに密着させれば、フロイドが抱き枕でも探すように、ボクの体を引き寄せ抱きしめた。
     後頭部にフロイドの鼻先が埋められてくすぐったい。こんなに大きな図体をしているくせして、ずいぶん甘えたなようだ。少し離れようとしてもガッチリと体を抱きしめられているせいで身じろぎもできず、朝までこのままなのかと諦めるしかなかった。
     息を一つ吐き、密着した背中から伝わる彼の心臓の音と体温を感じていると、なんだかざわついた気持ちが落ち着いて(変なの)と思わずにはいられなかった。
     汽笛が鳴り、船がゆっくりと賢者の島を離れているのがわかる。これでもう、ボクは本当に引き返せない。
     陽光の国までなら、一番近い港まで一晩のはずだ。明日どうなるのかわからないなんて、こんなの生まれて初めてだ。
     今ボクにあるのは、ボクに子供を産んでほしいと言ったフロイドのあの言葉だけ……この言葉がどこまで本当なのか真意は分からない。分からないけれど、手を取ったのはボクの意思だ、後悔するつもりもない。
     波の音を聞きながら、ボクは明日を迎えるために目を閉じた。
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