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    おわり

    @owari33_fin

    アズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア4️⃣中後編-4 『暗澹②』

    「……リドル氏は人、殺しちゃってんだからさ」
     イデアさんのこの言葉に、場がしんと静まり返る。
     今まで〝首を刎ねる〟という言葉で濁していたが、実質リドルさんが行っていることは虐殺と言う名の無差別殺人だ。
     これがもし、事がanathema内だけで済んでいれば、事故に見せかけてどうにか内々に処理することもできたかもしれない。が、すでにオーバーブロットしたリドルさんが民間人の首を刎ねて回る姿は、マジカメや動画サイト等で拡散され、マスメディアたちは、リドルさんのことを〝血の女王〟〝薔薇の断頭台〟などと呼び、こぞってオーバーブロットしたリドルさんの虐殺行為をトップニュースで取り上げた。そして、すぐさま対処出来なかった魔法執行官、マジカルフォース、S.T.Y.X.を大々的に批判し、さらにはそこから政治と結びつけ、現政府や王族の怠慢だと批判した。
     もちろんリドルさんの素性は物の数時間で暴かれ、薔薇の王国にあるリドルさんのご実家や、ご両親の職場、ナイトレイブンカレッジにまでマスメディアが押しかけ今現在も対応に追われている様だ。そして同時に、リデル・アーシェングロットとして戸籍を偽り暮らしていた場所には、魔法執行官やマジカルフォースによる捜査の手が入り、リドルさんがあの子供たちと暮らした思い出深い場所は今や土足で踏みにじられ、堅く規制線が張られたその外側から必死に撮影する報道カメラが、リドル・ローズハートとリデル・アーシェングロット結びつきを、噂レベルの想像を交えて面白おかしく彼ら好みに脚色し、モニターの中の安全圏で話を交えている。
     さらにはこの混乱の中、オーバーブロットしたリドルさんの事を、まるで神か何かのように崇めその首を差し出そうとする者まで現れ、警察や魔法執行官に連行される姿も見るようになった。
     そう、リドル・ローズハートという存在は、一夜にして人々にとって憎しみと恐怖と崇拝の……まさしく悪魔や神に等しい存在として人々の心に植え付けられてしまった。
     こんな事になってしまったリドルさんを、ひとりだけ以前と何ら変わらない生活に戻してやるなんて、所詮無理なことだ。それに、リドルさんが人を殺したという消せ無い事実がある以前に、もしもフロイドやアズールだけでなく、本当にあの子供たちまで全員死んだのなら、リドルさんは自分だけ助けられた先、愛する存在がいない世界を、ひとり生きながらえる事が出来るんだろうか?
     ならいっその事——とそこまで考え僕は、頭の中に浮かんだ言葉を一度お腹の奥底に押し込み、目の前の光景に意識を戻す。
    「でもこれって、全部の原因はanathemaってやつらのせいだろ? 寮長は巻きこまれただけじゃん、だったら……!!」
     イデアさんに執拗に食い下がるエースくんたちハーツラビュルの面々は、たとえどれだけ正論を言われたところで、はいそうですねとはいかなず。どうにかリドルさんを助けられないか、ずっと必死に考えを巡らせているようだが……
    「それ、自分の身内が巻き込まれて首刎ねられても、同じこと言えます?」
     イデアさんの皮肉を込めた厳しい口調に、エースくんはそれ、、を想像してしまったのか、グッと奥歯を噛み締め、何も言い返せずに口を閉ざす。
    「たとえ最初は巻き込まれただけだったとしても、リドル氏はもういっちゃいけないところまで足を踏み入れたんだよ……もしも奇跡でも起こって正気に戻っても、リドル氏が人を殺したことには変わりないんだから、その部分に関しては必ず法で裁かれるに決まってるでしょ……僕達が出来ることなんて、リドル氏がこれ以上誰も殺さないようにさっさと止めてあげるしかないんだよ」
    「なんだよそれ……じゃあ寮長は、生まれた子供も、フロイド先輩やアズール先輩まで死んで……ひとりだけなんもかんも全部奪われて、そんで終わりなんてさぁ……こんなのっておかしくない?」
    「エースの言う通りだ! こうなった原因は全てanathemaの奴らにあるはず……なのに寮長ひとりにすべての罪を背負わせるなんて、こんなの筋が通らねぇ!!」
     この場にいる皆さんが言葉を失う中、それでもイデアさんに食らいつくエースくんとデュースくん。二人のこの言葉をきっかけに、黙っていた他の面々の言葉が溢れた。
    「先のことは一旦置いておいて。それよりもまず、一刻も早くリドルをどうやって正気に戻すかが問題だ」
    「今のリドルくん、オーバーブロットと呪石の呪が結びついちゃってるんだよね? ならまずは、それをどうにかするのが先決なのかな?」
     トレイさんとケイトさんたちの言葉に、レオナさんとラギーさんの近くに立つジャックくんが手を挙げた。
    「俺たちの時は、もう授業に呪石の加工がなかったんすけど……あれって呪いが発動したら危ないんですよね? 一年の頃、飛行術の授業中にポムフィオーレのやつが加工失敗で呪い被って、グラウンド走ってるの見たんすけど」
    「あ〜、懐かしいっすねぇ。あの時は確か、ほとんどのヤツらが失敗して、錬金室からダッシュで出ていく姿ばっかりだったなぁ……」
     ジャックくんとラギーさんが、呪石に関する知識を記憶から引きずり出しているが、取り扱いに免許のいる呪石加工に対する知識など、殆どの魔法士にとってこの程度だ。リドルさんの件があって調べたからこそ知識はあったものの、そうでなければ僕自身の認識もこの程度だったでしょう。
    「ラギー達の学年まであった呪石の加工は、元々、空にある星が願いを叶え終え、大地に降り注いだ燃えカスに残る願いを錬金術で精製して、元の効果に近い所まで戻す作業だった……だが、呪石と呼ばれる物のその本来の姿は、神の御身がひと欠片なんて御大層に言われるような、この世のことわりさえも変えかねない力を持っていると本には書かれてあった。だがその分扱いが難しく、それが大きな願いであればあるほど、ほとんどが身を滅ぼしたはずだ。そうでなくとも、願った当人に必ず大なり小なりの何らかしらの代償を払わせる……扱をうとする事自体、リスクが高すぎる」
     レオナさんの説明に、周囲の方々が改めて呪石というものの危うさを再認識し、同時にこんなものと同化しているリドルさんをどうやって助ければいいんだと頭を悩ませた。
    「オレまだよくわかんねぇんだけど、イデアはどんな作戦を立ててるんだ?」
     アジーム家次期当主のカリムさんは、見るからに手練れであろう護衛を二人背後につけて、レオナさん同様S.T.Y.X.の硬そうな椅子に座り、昔と変わらない声色でイデアさんに訪ねた。
    「今のリドル氏に対抗しようとしても、まず呪石の力で『攻撃した』って事実が無かったことにされる。だからS.T.Y.X.側から出た作戦は、リドル氏の意識を何らかの方法でそらして、強制的に眠らせるしかないってことになった」
    「意識をそらすって……ワタシたちにリドルと楽しくおしゃべりでもさせる気なの?」
    「ドゥフフ、さすがヴィル氏、話が早い!」
     モニターに映し出されたのは、カローン部隊と交戦するリドルさんの姿だ。あの意志の強いスレートグレーの瞳が、昔、図書館でリドルさんをレイプしたフロイドの様に……いえ、その時よりもずっと赤く光っている。それだけで、今のリドルさんと呪石の呪がどれほど深く結びついているか見て取れる。
    「今のリドル氏は、元々あった呪二つ以外に、新たな呪までくっついたせいで常時バーサクの状態異常が付与されてる。でもフレド氏やアルマ氏だけを識別して逃がす程度には、リドル氏の中の特別優先枠に対しては、まだ理性が働いてる。僕らはそこに賭けるしか無いってことだよ」
    「では、私達が薔薇の君ロア・ドゥ・ローズに接触し、気を引いている間に、S.T.Y.X.の皆さんが彼を捕縛するのかな?」
    「それってわんでどうにが出来る事が!?」
     エペルさんがキツイ方言を口にすると、並んで座るヴィルさんから無言の威圧がかかり、それを感じてすぐさま「ゔっ!」っとその先の言葉を飲み込んだ。
    「……デュースクンやエースクンみたいに、リドルサンが良く知るハーツラビュル寮生だった人たちならともかく、僕たちでリドルサンは止まってくれるのかな……って」
    「そうだな、それも一理ある。俺もリドルとは学年が同じだったが、スカラビアの副寮長や同じ学年という立場程度にしか付き合いがない。そんな俺達の呼びかけに、リドルは応じるんでしょうか?」
     ナイトレイブンカレッジ卒業後、カリムさん直々に暇を出されバックパッカーをしていたらしいジャミルさんが、大きなバックパックの横に立ち、イデアさんに質問する。
    「そうだね、これに関して僕たちS.T.Y.X.サイドから言えることはひとつ。まったく、これっぽっちも確証なんて無い。僕たちは魔導に関してこの世界で最先端、スペシャリストだと自負がある。魔法だって古代からの何千年分の文献がデータとして蓄積されてる。そんな僕達がここまで可能性が低い手段を取らなきゃならない、これは本当に異常事態なんだよ……なんせ相手は、あの魔法の発動スピードが爆速の男、リドル・ローズハート! それに呪石のトンデモ能力までくっついたときたもんだ!! 呪石に関して〝本物〟は全て『anathema』の管理下で秘匿とされてきたから、これに関しては僕たちでも知識が足りない……それでもやらなきゃならないことぐらいわかるよね?」
     今この瞬間も、リドルさんはツイステッドワンダーランドの住人の首を刎ねている。そして、リドルさんが一体どこまでの人間の首を刎ねようと考えているのかもわからい。陽光の国の人の首をすべて刎ねれば、次は英雄の国、輝石の国と移動したその先で、同じ様な行動に出る可能性が高い。
    「もし、リドルくんを止めることが出来たら、イデアくんたちS.T.Y.X.は、リドルくんをどうするの?」
     ケイトさんがこの先の終焉を問う。
    「そんなの、タルタロスの最下層で、大人しく眠ってもらうしかないでしょ……」
     重い沈黙にハーツラビュルの面々や、彼をこの五年、養女として戸籍においていたイヴァーノさんや、同じくリドルさんを匿い、あの子供たちの生まれてきた時の姿を知るフレドさんとアルマさんは、現実を突きつけられて各々本当にひどい顔をしている。目の前、先程からずっと言葉も発せずに息子の死と、情を持ってしまったリドルさんの惨事に老け込んでしまった父さん。
     リドルさんにフロイドやアズールとそこまで交友関係が無かった人たちですら、あまりにも酷い現実に言葉が出ないようですが、僕だけは目の前の光景に興味が失われていった。

    (あぁ……つまらない。こんな最終回を見るために、僕はこの三人を見てきたわけではないのに……)

     重い沈黙の中、モニターに映るリドルさんに視線を向ければ、首を刎ね、浴びた返り血がまるで彼の涙のように頬を伝い流れ落ちた。




     * * *

     薄明に空が明るさを帯びた頃。
     街の中央、倒壊した建物は瓦礫と化し、首の無い体がうず高く積まれ、まるで蕾のように形を模し、何かを守っていた。
     それより半径三〇メートルの距離に、標的を取り囲むように静かに降り立った僕達は、各々緊張した面持ちでその屍の山を見つめる。
     もうすぐ朝日が登る。今日はとても良い天気になるだろう。
    「こんなに良い天気なら、屍の山ではなく、本物の山に行きたいところですが……今は仕方ありませんね」
     僕のつぶやきがマイクで拾われたのか、イヤホンから「作戦に集中しろ」と複数人に注意されてしまった。注意したところで、首を刈られるなら、きっとその時は一瞬でしょうに。
     東から昇る朝焼けモルゲンロートが眼前の屍の山を赤く染め上げれば、ゆっくりと開花するように、分厚い肉壁が剥がれ広がり、それ、、を朝焼けの下に晒す。
     彼の首無しトランプ兵の中央、体を丸め小さくなって寝る姿が見える。まるで何かから身を守る幼い子供のように、これ以上傷つけられることを恐れるように……
     そんな彼が、朝焼けによって真っ白い肌を薔薇色に赤く染め上げられ、自身で刈り取った屍の上で目を覚ました。
     ゆっくりと目を開けたリドルさんが、周囲を伺いキョロキョロと見回し、長く濃い睫毛に縁取られた大きな瞳を瞬かせ、そして——

    「おはよう、久しぶりだねみんな」

     ……と微笑んだ。
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