Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    氷裏❄️

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 17

    氷裏❄️

    ☆quiet follow

    #虎トウ
    #虎トウ版ワンドロワンライ

    世界で一番愛してる目覚めたら隣に恋人はいなかった。
    遠くで水音が聞こえるから、きっと顔を洗っているか朝食の準備をしているのだろうと、自分のもとから離れて行ってしまったわけではないことに安心する。
    完全に覚醒しきっていない頭が、再び眠りにつかせようとしてくる。昨日あれだけ優しく抱かれて身体も気怠い。もう数えきれないくらい抱かれても目覚めたときの怠さがなくなる日はなかった。
    今日は二人揃っての久しぶりの休日だ。惰眠を貪ってもいいかと、最近出した毛布にさらに包まって空気に触れる面積を減らした。
    もぞもぞと動きながらついさっきまでいたはずの彼の体温を探したが、少し窪んでいるだけでもう暖かくはなかった。少しだけ残念に思っておとなしく再び眠ることにする。

    「トウマ」

    一際優しい声が、名前を呼んだ。まだ少し、聞いていたい。

    「トウマ……とーま」

    ほら、もっと好きな声になった。どんな歌声でも演技でも出さない自分だけが聞ける声。
    現実と夢の境目がまだはっきりとしないが、重たい瞼をほんの少しだけ開けた。
    見下ろすことなく、目線を合わせてくれる80㎏が愛しい。瞬きのついでに開かなくなっ瞼を少しだけ恨んだ。人生で見た光景で彼が占める割合は少しでも多いほうがいいのに、身体が言うことを聞いてくれない。

    「トウマ、朝食はどうする?俺が作るか、トウマがこの前行きたいって言った場所にブランチに行くか」

    大きな手が髪を梳くように頭を撫でてくれる。気持ちよくてまた眠ってしまいそうだが、質問に答えなくてはいけない。けど、何って言ったっけ。

    「んん~……」
    「俺が作るなら……しばらく買い出しに行ってないからパンを焼いて卵と……ベーコンがあったような気がする。それぐらいしか出せないぞ」
    「ん……」
    「ブランチは今から予約もできるみたいだ。どうしたい?」

    ああ、そうだ。朝食作るか、ブランチか聞かれてるんだ。
    こうして付き合うようになってから、優先順位はいつも虎於が次だ。出会った頃は我儘で身勝手で我が道を行く、みたいな人だと思っていたのに。今は末っ子気質といい意味の自信が残った。

    「トラのいい方」

    はっきりとそう言ったつもりだった。けれど呂律が回っていないか、乾燥した喉じゃ上手く声が出ていなかったのか聞き返された。

    「ん?どっちがいいんだ?」
    「とぁ、の、いーほー……」
    「俺のいい方?」
    「んー」

    小さく頷いた。シーツの擦れる音がする。

    「……まだ眠いか?」
    「んぅ」
    「そうか、ならもう少しゆっくりしてブランチに行くか。少し遅めの時間に予約するな。家からそこまで遠くないから、歩いて行こう」

    素敵な提案にまた眠ってしまいそうだが、これ以上寝たら昼まで起きられない気がした。布団の隙間から手を出すと、頭にあった手が握った。

    「トウマの手、あったかいな」

    さっきまで水を触っていたであろう手は温まったトウマの手には冷たかった。けれど嫌な感じはしない。
    指を絡められるが、うまく力が入らない。もう少しで覚醒できて握り返せるのに。

    「起きるのか?」
    「ぉ、きう……」

    手を引っ張られて頑張って上半身を起こす。ああ、やっと目を開けられた。レースカーテン越しの朝日が少しだけ眩しい。

    「おはよう、トウマ」
    「……おはよ」
    「寝ぐせすごいな。後でしっかり直せよ」

    眉をハの字にして笑った。
    しっかり起きて、準備をしなくては。あまりよくないが、目を擦ったその時違和感を覚えた。

    「……へ?」

    一気に頭が冴えた。左手の薬指に知らない指輪がはまっている。

    「ほら、支度してこい」
    「いや、ちょ、トラ!」

    自分の薬指を指さして見せると、虎於も同じように左手を見せてきた。

    「同じ指輪は嫌か?」
    「っ、言わせんなよ……!」

    いつもの朝、いつも通りの休日。別に記念日だとか誕生日だとか、喧嘩して仲直りをしたとか、そんなんじゃない。
    それでもトラが選んだ日だ。いつかは、なんて思っていたけれど今日なんだ。
    ちょっとだけ不安そうな恋人……旦那様が次の言葉を待っている。

    「ミナとハルと、宇津木さん……了さんはもうちょっと後でいいか、言うの」

    ここがベッドじゃなかったら、絶対に頭を強く打ったかもしれないという勢いで抱き着いてきた。

    「トラ、重いって!」
    「……断られたらどうしようかと思った」
    「もっとトラのことだからロマンチックにやってくれるかとは思ったけど」
    「なら、それもするから少しだけ待っててくれるか?場所を用意する」

    安堵のため息を漏らす虎於の下で、トウマは口角が痛くなるほど笑った。こんなにうれしいことがあるだろうか。

    ——ああ、もう、本当に!
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭👏😭👏👏👏👏🙏🙏💯🙏🙏🐯🐶💗😭💞💞💒😭👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works