無題[Side T]
目を開けて最初に視界に写ったのは、傍らで眠っているディックだった。少しの間その姿を見つめた後、目を擦りながら辺りを見渡してみると部屋の中は暗く、窓から覗く月明かりにまだ夜中だということに気付いた。
ふと、頭の下に何かが敷かれているのに気付く。いつも使っている枕とは違う、硬い感触。それを手でそっと触れ、視線を辿ってみるとディックの腕であることが分かった。だが本人は、頭の重みなど気にならないとでも言うかのようにすやすやと眠っていた。
ふと、寒気を感じ身体を震わせる。シーツからはみ出している肩に目をやると、何も身に付けていないことに気付いた。
視線を元に戻すと、ディックも何も着ていなかった。互いの今の状態を把握し、数時間の出来事が徐々に思い出されていく。段々とその出来事が脳内で明確になるにつれ、剥き出しの肩も含め再び身体が熱くなっていくのを感じた。
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