『Eyes speak more eloquently than lips.』「っくは~~~ぁあ」
肺の奥の奥から絞り出すような声を上げて。喉を通り抜けた強い炭酸に喉を炙られたのか。目尻に少し涙を浮かべながらキースは発売したばかりとかいうビール缶を片手に天を仰ぐ。
「あ~~……この一杯のために人間ってのは生きてんだな」
「そんなわけがあるか」
同じビールを喉に流しながら、ついノリのようにツッコミを入れてしまう。キースにとってはそうかもしれないが、俺にとってビールはビールだった。確かに、少しの残業の後……目の前には満開に咲いた桜があり、気温は寒くも暑くもない適温。いや、少しばかり暑いと感じるのは着ていた服がまだ真冬のそれと変わらなかったからだろう。残業後特有の気怠さと渇きを覚える喉、という条件を満たしたこの酒はいつもより旨い、ような気がする。
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