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    mimimimibdmi

    @mimimimibdmi

    そこの君、バディミッションBONDをプレイするんだ。

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    mimimimibdmi

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    いただいたお題「ポッキーゲームをするアロルク」から書いたSSです。ばでみ世界にもポッキーはあるので(捏造)江崎グ◯コさんはすごい(捏造)。

    仁義なきポッキーゲーム対決「アーロン、ポッキーゲームをするぞ!!」
    「しねえ」

                     ~完~



    「いや待ってくれ!! 君はポッキーゲームがどんなものかをまず知っているのか!」
     食い下がるルークに、嫌な予感が増していく。アーロンは椅子に寄りかかり、踵で粗末な机に乗せた長い脛を掻いた。あくまで冷静に、そっけなく断ってやるのだ。このお人好しの相棒は、本当に誰かが嫌がっていることを強いたりはしない。わけのわからない名前の遊びを断る今、げんなりした顔で呆れ気味に断りでもしたら、不機嫌をまともに受け止める相棒は如実に萎れて考え込んでしまうだろう。
    「どうせロクでもねえゲームなのは名前だけでわかんだよ。くだらねえこと言ってんな。飲めよ」
     ここはハスマリー、アーロンが各地に持つアジトの一つだ。日干しレンガの旧式な家屋で、かつての住人に見捨てられてから十数年は経っている。そこそこの機材は持ち込んでいるから、『調停者』の活動場所として他のアジトと同等に扱っている。が、壁にくりぬかれた覆いもない素朴な窓と、日除けの布が垂れ下がっているだけの出入り口は防犯上問題しかなかった。こんなあばら屋にはガキどもも連れてきたことがない。ハスマリーの青年団がたまに立ち寄る程度だ。
     そんな場所になぜルークがいるのか? そしてなぜ、リカルド国家警察の警部補が、ハスマリーの調停者と差し向かいで酒を酌み交わしているのか?
     理由は簡単である。この家の主であるアーロンがそう望んでルークを招いたからだ。ルークは三日前に例のごとく面倒なルートを使ってハスマリーに入国した。有休消化を言い訳に、彼がこの国に来るのは何度目だろう。
     ルークが来てくれるのは嬉しい。あからさまに態度に出したりはしないが嬉しい。どれだけ数奇な運命が自分たちを絡め取ろうとしたって、それを「ぶち破って」二人の絆はさらに固くなる。アーロンはそんなことを絶対に口にはしないが。
     そんな固い絆が、色づき始めたのはいつからだろう。ルークの笑顔が光を超えて超新星爆発のようにアーロンの胸を揺るがすようになったのは、一体いつからだろう。眩しい。直視できない。だけど離れたくない。二人でいたい。もっと近くありたい。
     要するに、アーロンはルークに絶賛片想い中なのだった。惚れた弱み、というが、惚れた者は大体において弱い。臆病になる。アーロンも例外ではなかった。接し方がぎこちなくならないようにするので精一杯だ。
     日を追うごとに臆病さは強くなる。昨日のオレよりも今日のオレの方がダセェくらいに弱気だ、そう毎日思っている。しかし彼こそは怪盗ビースト、こんな状況にいつまでも甘んじているような呑気さとは無縁の存在だ。
     欲しければ、奪う。正面からだ。
     つまり、今夜ルークをここに呼び出したアーロンは、勝負をキメるつもりだった。

     なのでポッキーゲームとかいう浮かれた遊びなんぞに付き合ってはいられない。ウブで純情なルーク(とアーロンは信仰している)でも大胆になれるように、ハスマリーで手に入るうち最上級の酒を用意した。酔わせて、口説いて、手に入れる。どうやって? それはやってみてから考えるのだ。
     一方、想われ人であるルークは、表地が破れてスプリングの飛び出したソファにちんまり座って不服そうに唇を突き出していた。
    「なんだよ、せっかくミカグラから取り寄せたのに……ポッキー……」
     二十代後半の男が唇なんぞ突き出すな。キスしたくなるだろうが。じゃねえ、みっともねえだろうが。アーロンは内心ぐるんぐるんと考えあぐねていた。
    「よくそんなチョコまみれの菓子を肴に酒が飲めるな、お前」
    「いや、結構合うぞ? この酒とポッキー」
     細長いまっすぐな棒状のクラッカー、もしくはプレッツェルに、持ち手の部分だけを残してミルクチョコレートを被せた菓子。ポッキーはミカグラ島に本社を構える世界的な製菓会社が誇る看板商品だ。しかし物流の滞ったハスマリーでは滅多にお目にかかれない。ルークは今回の来訪も子供達に山ほどの土産を持ってきていたが、その中にもポッキーを見かけたような気がする。自分用も確保していたらしい。
    「君も試してみろよ、美味しいぞ」
    「イラネ」
    「そんなこと言わずに!」
     今夜のルークはしぶとかった。食に関しては各々の好みを尊重している二人だが、徐々にその垣根が低くなってきているのは確かだ。アーロンはエリントン滞在時にルーク好みのドーナツの味に慣れたし、ルークはアーロンが好きなローストビーフのバゲットサンドをたまに買うようになった。だからアーロンがポッキーを頑なに拒む理由も実際のところないの、だが。
    (ちっとも色気のある雰囲気になりやがらねえ……!)
     乾いた風、降るような星、ハスマリーの夜。寂れたアジトの小さな部屋で、薄暗い照明の中二人差し向かいに酌み交わす。
     もうちょっとしっとりした雰囲気になってもいいんじゃねえか? アーロンは焦りと苛立ちと心の中から蹴り出したはずの臆病さに苛まれていた。知らず険しい顔になってしまう。
     ルークもルークだ。普段使われていないアジトに連れてこられて、二人で飲むとなったら何かあると勘付いたっていいはず。こんなに察しの悪い奴だっただろうか。やけに陽気で口数が多く、そして執拗にポッキーゲームとやらを勧めてくる。
     ……こうなったら。
    「……こうなったら」
     アーロンの胸中の呟きと、ルークの押し殺した独り言が重なったのを、気づく余裕のある者はこの場に一人もいなかった。
    「おいルーク、こっちに来い」
    「アーロン、そっちにいってもいいか?」
     思い切った発言はほぼ同時だった。ハスマリーの夜の中心で、男たちは驚きに目を瞠る。沈黙は風にさらわれていった。
    「あ……」
    「そ、そうかー!! 君もポッキーゲームをする気になってくれたかー!!」
     そうだよな、この距離だとやりにくいもんな! 届かないし! と早口に捲し立てながら、ルークはいそいそと机を回り込んでアーロンの座っている古ぼけた長椅子に腰掛けた。止める暇もあらばこそ、だ。アーロンの隣でルークは、そわそわと膝を揺らしながら、がさがさとポッキーの袋を探り、にこにこと笑っている。
     ……まあ、いい。距離を詰めるという目的は達成できたのだから、ポッキーゲームとやらに少しばかり付き合ってもいいだろう。アーロンは久しぶりの気安い距離感でルークと二人きりという状況ににやけそうになる顔を引き締めながら、そっけない風を装ってルークの動作を眺めていた。
    「じゃあポッキーゲームのルール説明だ。はい、あーん」
     あーん。
     あーん?
     アーロンの思考はしばし固まった。ルークが笑顔で細いポッキーを差し出している。アーロンが食いつけるように顔の前で、だ。
     アツアツの恋人同士、もしくはその気分が抜けない新婚のパートナー同士。アーロンが連想したのはそれだ。幼い子供が親の手から食事を食べるというシチュエーションはハナから浮かばなかった。
     ずっとずっと好きだった片想いの相手がそんなことをしてきたらどうする?
     アーロンの固まった思考は真っ白になり、本能により近いビーストの面が顔を出した。
     牙を開いてポッキーに食いつき、首を打ち振ってルークの手からポッキーを奪い取り、アーロンはバリバリムシャムシャとポッキーを食い尽くしてしまった。ちなみに味はしなかった。
    「あー! 食べちゃダメだ!」
     胡乱なことをしてきたこの小憎らしい想い人は、そのうえまだこんな意味不明なことを言う。アーロンはルークの胸ぐらを掴んで吊り上げたい衝動を必死に堪えた。
    「テメェは何をしたいんだよ……」
     ヴヴヴ、と半分唸り声と共に絞り出した言葉を、ルークはぷんぷん⭐︎とでも擬音の溢れそうな軽いしかめ面で次のポッキーを差し出すことで遮った。
    「さあ、もう一度だ。食べるなよ、咥えるだけでいいんだ」
     聞きようによってはエロティックな妄想に繋がる発言だったが、余裕のないアーロンの耳には訳のわからない指示としてしか届かなかった。
     ルークはポッキーを差し出す。アーロンは不可解と混乱の渦巻く脳裏でそれを機械的に咥える。ルークの手がポッキーから離れると、アーロンの口に咥えられた細長いチョコがけプレッツェルが宙に浮いた。
     そして、
    「はむ」
     なんと、あろうことか、信じられないことに。
     宙に浮いたポッキーの片端を、ルークの口が柔らかく喰むように咥えた。
     反射的なのかルークはほとんど目を閉じ、長いまつ毛が頬に影を落とし、通った鼻筋が揺らめく光に浮かび上がり、そんなルークの顔とアーロンの顔の間の距離はポッキー一本分しかなく、
    「フンッ」
     バキィッ。
     内なるビーストはまたしても頭を打ち振って、アーロンとルークの唇と唇の間にかかるポッキーブリッジを破壊した。アーロンの内なるビーストは暴力を司るので、性欲は抑え込まれる格好で表出せずに済んだ。
    「あー!! また……」
     バリバリムシャムシャゴクン。アーロンはもう口説くとかモノにするなどとは考えていない。ルークの、ドギーの分際で、無意識の色仕掛けをするなんざ五万年早い。おそらくこういう悪ふざけを何処の何奴ともしれない輩とも楽しんでいるのだろう。ルークの、オレのドギーの分際で!!
    「仕方ないな、今度は僕が咥えるから。言っとくけど今ので君はひとつ負けだぞ」
     アーロンの内心で煮えたぎる怒りなど知らず、ルークはまたポッキーの袋を探り、チョコのついている方の端を咥えて「ん」と差し出してきた。
     また目が閉じている。ほとんどキス待ち顔である。
     激怒しているアーロンは、ただ静かにチョコのついてない方のポッキーの端を人差し指の先で押さえ、ゆっくり押し込んでいった。
     さくさくさくさくさくさく。
     キス待ち顔のルークは口に押し込まれるポッキーに少し困惑して眉を顰めたが、齧歯類のように素直にポッキーを端から噛み砕いていった。
    「ぷは、……そうじゃなくて!」
    「ドギー、もう一度、訊く」
     怒りは臨界点を超え、アーロンはまだ呑気にぷんぷん⭐︎しているルークの肩を捕らえると長椅子の背に押し付けた。驚きにルークの目が見開かれる。
    「テメェは、なにを、してえんだ?」
     大きなエメラルドの瞳の中に、自分の顔が写って見えた。ああ、みっともねぇ。クソダセェ。怒りよりも苦悩に満ち溢れたその表情は、間違っても恋の勝者の顔ではなかった。
     突然アーロンにのしかかられて呆気に取られていたルークは、じわじわと相棒の表情を読み取っていき、そして何を思ったのかキッとまなじりを釣り上げた。
    「だからっ……最初から言っている!」
     体格に勝るアーロンを押しのけるのではなく、真っ向からつかみかかってきた。不意を突かれたアーロンは逆にのしかかられる格好になり、気がつけば長椅子の上でルークに馬乗りされている体勢になっていた。しかもジャケットの襟首を掴まれている。
    「僕がしたいのはポッキーゲームだ!! アーロン、君と!! ポッキーゲームをする!!」
     そしてルークは長椅子の座面に落ちた袋を素早く拾い、またポッキーを一本取り出した。有無を言わせずチョコのついた側の端をアーロンの口に突っ込む。アーロンは抵抗しなかった。ルークもまた激怒しているのだとわかったからだ。
    「言っておく。これからすることを、逃げてポッキーを折った方が負けだ」
     低く抑え気味の声でそう宣言し、ルークは長椅子に寝そべるように馬乗りされているアーロンに顔を寄せていく。ルークはポッキーのもう片方の端を咥えるとき、今度ははむ、なんて可愛い音は出さなかった。がぶり。噛み付くような口の動きと鋭い眼光からアーロンは目が離せなかった。背筋が得体の知れない戦慄でぞくぞくと震えた。
     さく、さく、とくぐもった音をさせながらルークはポッキーを齧っていく。齧った分だけポッキーは短くなっていき、短くなった分だけふたつの唇の間に横たわる距離は縮まっていく。ルークはまだアーロンの目に視線をひたと据えて睨んだままだ。アーロンはそれに捕らわれたまま目を逸らさず、口の中のチョコレートがぬるく溶けていくのを味わっていた。ひどく、甘い。
     さく、さく、さく、……さく。
     アーロンとルークの唇の間にあるポッキーの長さは、もう指の幅二本分ほどだ。ほとんどキスの距離で、ルークはポッキーを齧るのを止めた。じっと見つめる瞳の中に、初めてためらいのようなものが浮かんだ。
    「……いいのか」
     ポッキーを咥えたまま、器用にルークが囁く。唇に息がかかってくすぐったい。
    「なにが」
     同じ器用さを発揮してアーロンも囁いた。怒りはとうにおさまっていて、胸の上でかすかに震えながら胸を轟かせているルークの鼓動を感じていた。
    「このままじゃ、君」
    「もう負けねえよ」
    「だけど」
     アーロンはこの期に及んで臆病な『ヒーロー』の背中に腕を回し、そっと引き寄せることで答えにかえた。
     溶け合うふたつの鼓動に耳を傾けながら、アーロンはこの世で最も甘いものを唇で受け止めた。

    「……誰に唆されたんだよ」
    「唆されたわけじゃない……教えてもらったのはモクマさんにだ」
    「あのおっさん……」
     胸の上にたった今恋人になったばかりの想い人を乗せて、狭い長椅子に寝そべりながら、アーロンはゆらゆらと揺れている。夢見心地だなんて生ぬるい言葉じゃ表せない。幸福すぎて死んでしまうかと思ったくらいだ。
    「……好きな人がいて、その人がとても大事で……自分の命よりも大事で。だからこそ怖かった。こんなに自分が臆病だなんて想わなかった。一緒にいたいのに、隣からすぐにでも逃げ出したい。でも離れていると会いたくなる。しかも、この臆病な気持ちは毎日更新されていくんだ。笑えるだろ?」
     ああ、そうだな。笑える。裸電球を見ていた目を細め、アーロンはルークのつむじにキスした。一度キスしてしまうと堰を切ったように想いが溢れ出て、二人はお互いのありとあらゆる場所にキスをし合った。つむじに触れた温かさに体を少し起こしたルークは、おずおずとアーロンのかたちのいい顎にキスをした。
    「でもさ、このままだと生きているうちに一度も君とキスをできないんだろうなって思ったら、目の前が真っ暗になった。いくつもチャンスはあったのに、ことごとく掴めなかった自分が悔しくてならなくて……」
    「それで、あれか? ポッキーゲーム」
    「……いい考えだと思ったんだ。ふざけ半分でも、怒らせてしまうかもしれないけど、君に触れたかった。……少しだけ、卑怯かなとも考えたんだけど……」
     言い淀む恋人が愛しくてならず、アーロンはもう一度ルークを引き寄せた。強く抱きしめる。
    「考えすぎなんだよ、お前は」
     大人しく抱きしめられながら、そろそろとアーロンの背中に手を回し、ルークはしっかりと抱きしめ返した。
    「……僕に言わせれば、君が考えなさすぎなんだ」


    「で、入国審査の時にもちゃんと書いたのか? 書類に」
    「ああ、書いたさ。入国目的欄に『怪盗ビーストとポッキーゲームをするため』ってね!」
    「ブハハ、バカ正直かよ!」
    「次からはもっと正直に書くよ。『恋人にキスするために来ました』……ってさ」
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