心の拠所「あ――、これは帰れないなぁ」
一人で依頼を熟せるようになって久しい僕は、今日も危なげなく悪霊を退治して帰路についている。しかし駅から出ようとすると、外はバケツをひっくり返したかの様な土砂降りで、まだそんなに遅い時間でもないのに暗く視界も悪い。思わず独り言を発してしまうのも仕方ない悪天候。
その中を折りたたみ傘で果敢に挑んで行く人、ビニール傘を買って行く人、僕のように諦めて待つ人と様々な人間がいる渋谷。
丈夫そうな黒い傘をさして歩くスーツのサラリーマンには、ついあのマレビトを連想して密かに警戒してしまうが、今はもう人間が戻ってきている事も同時に実感する。
そう、今人間は戻ってきているんだ。
思い出される、服や鞄だけが落ちている地面の上に、穏やかに降り注ぐ雨……絶望的な光景。
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