グリル襲来ーーー夜が訪れる。
水面が上がり、自然とみんながカゴの周りに集まった。
嵐の前の静けさに、緊張が走る。
…そして、ソイツは姿を表した。
ガラガラガラ、と音を立て、海面から姿を表したソイツ。
赤い一筋の光が、一人のアルバイトに付きまとい…彼を狙い、一直線に走っていく。
慌てて全員で攻撃するが、正面からの攻撃は全て弾かれ…一人が犠牲になる。
「後ろから攻撃しろ!」
一人が叫ぶ。
見れば、光沢のある金属ボディからはみ出したシャケの尻尾。
弱点を攻撃しようと、銃口を向け…ようとした。
突如走る、足元に纏わりつく不快な感覚。
あ、と思う間もなく…一人また、コジャケの群れに押し潰された。
「くそっ!!」
壁を伝い、一人が逃げる。
一人は逃げ損ない、三人目の犠牲者が出た。
頭のスペシャルパウチに手をかけ、開封しようとした…その時。
背後に、もう一体の怪物が現れた。
「…おやおや、失敗してしまったようだね。」
誰も居なくなった海に、静かな声が響き渡る。
深い緑色に染まった海に、ぷかりと浮かぶ橙の浮き輪が四つ。
「あれは、なんですか?」
一人が、ぽつりと呟くように問うた。
「アレはグリルだ…一人を狙うから、後ろにある尻尾を他の人が攻撃するんだよ。」
淡々と、声が応える。
「あんなのがいるなんて聞いてない!!」
「詐欺だ!!」
「このクソ野郎!!」
ギャンギャンと騒ぎ出すアルバイト達。
「君たちをここに置いていってもいいんだよ。」
そう言われ、スンと静まり返る。
「また頼むよ、お疲れ様。」
その一言を最後に、その日のバイトは終了した。