はんぶんこ祝日。午前十時。教師寮。
エリちゃんと僕は相澤先生のお部屋で午前のおやつタイムを過ごしていた。先生はまだ仕事があるとかで別の部屋に篭っている。
「はい、デクさん。チョコはんぶんこ」
「わあ、ありがとう。エリちゃんは優しいね」
小さなチョコを小さな手ではんぶんに割って、エリちゃんはそれを僕の手に乗せてくれた。まだ六歳で、育ってきた環境も過酷だったというのにエリちゃんはとても気配り上手だ。その優しさに自然と笑みを零したらエリちゃんが不思議そうに首を傾げた。そんな仕草ひとつも愛らしい。
「でも、デクさんも相澤先生もいつもはんぶんじゃなくて全部くれるよ?」
「大人はね、お菓子よりも子どもの笑顔が大好きなんだよ」
そう言ったら、何故かエリちゃんは右頬だけをぷくっと膨らませてみせた。
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