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    pandatunamogu

    降新文をポイポイします

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    pandatunamogu

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    🦊👺降新の出逢い編。多分長くなるのでちょこちょここちらにポイポイしたい所存。お尻ぺちぺちしてください🙇‍♀️🙇‍♀️

    ##降新
    ##🦊👺

    お狐様の恋時雨-序章- 鬱蒼と木々が生い茂る森の奥深く。
     その木々の燃ゆる緑に映える金色の尻尾がふわふわと揺れ動く。
     但し、その尾は一本に在らず。ひぃ、ふぅ、みぃよぉ、いつ、むぅ、なな、やぁ、ここ……と。九本もの大きく豊かな尻尾をまるで雄の孔雀のように広げて揺らし、夏間近である梅雨時の風に乗ってかすかに漂う血腥いにおいにスンと鼻を鳴らす。

     九尾の狐。
     瑞獣とされ珍重される、神獣である。
     中国の神怪小説、『封神演義』以降、その小説に登場した妲己のイメージが強く、何かと邪悪なイメージを持たれがちであるが、実際はその国に大成と平安をもたらすとされる瑞獣として珍重されている。
     妲己や玉藻も人型として描かれていたように、この九尾狐もまた、人型である。
     但し創作物に出てくるような妖艶な美女の姿ではなく、精悍な顔立ちの色男である。
     浅黒い肌と目に眩しい金糸。灰青色の目尻はやや垂れ気味であり、スゥと通った鼻筋と高い鼻梁は何処か、西洋の彫りの深さを感じさせる。何とも端正な顔立ちの、雄だ。
     白鼠色の着流しの裾には瑞雲模様があしらわれ、そこから覗く御御足もまた、褐色である。
     中には高貴なもののみが身に纏うことを許される紫色の襦袢を着込み、臀部からは九つの、思わず目を奪われるほどフワフワとした極上の毛並みの尻尾が広がっている。
     古来より、妖―あやかし―の妖力や階級は尾の数で決まると伝わる。一本より二本、二本より三本。九尾はその階級の中でも最上級とされている。

     ピク、と。
     四方に向けて音を拾っていた耳がとある方向に向けて止まり、一歩、また一歩と高い草が生い茂る茂みに分け入る。
     するとそこには、確かにいた。
     ひと目で瀕死と分かるソレは見た目こそ小さな人の童子のようではあるが、その背にはまだ小鳥ほどの小ささながらも一対の黒い翼が生えている。結袈裟をかけ、その足には高下駄、それから紅葉のように小さな手には錫杖―しゃくじょう―を持っている。格好だけで判断すれば修験者―山伏―のそれであるが、その背に生えた鴉のような黒い翼と、血まみれで横たわる小さな顔の横に転がった天狗の面から、この童子が人の子ではないことが容易に知れる。

    ────烏天狗の子か……。もはや虫の息だな。

     このまま捨て置いても構いはしないのだが、如何せん此処は九尾の領分。己の統括する山で野垂れ死なれるのも寝覚めが悪いと仕方なく腰を折り、ヒュウヒュウと苦しげな呼吸音を響かせる童子の傍らにしゃがみ込む。
     懐手で片膝立ててしゃがみこみ、ざっと軽く検分して今一度、烏天狗の子どもの怪我の程度を知る。
     折れかけた黒い翼。
     額からも流れる鮮血。
     呼吸音の度に濁った音を響かせていることから、どうやら肺にも傷を負っていることが伺える。
     虫の息ではあるものの、今すぐに治療を施せば助からないものでもない。

     この九尾──名を降谷零という──は妖気と神気を併せ持っており、混在した気を流してもいいものか逡巡したものの、よくよく考えてみれば鴉天狗とて同じようなものだと結論が出る。

     鴉天狗とは『天狗』と名が付いてはいるが、俗に言う立派な鼻を持つ赤ら顔で葉うちわを持つあの天狗とは種類が違う。
     天狗が純然たる妖怪であるとするならば、鴉天狗とは、その格好は修験道に勤しむ山伏であり、鳥類を彷彿とさせる嘴を持った面を被っている。
     持ち物も天狗のような葉うちわではなく錫杖や法螺貝などを持ち、一説には迦楼羅天であるとも言われている。つまり妖怪と言うよりは神とたたえられることが多いのだ。
     それならば己の気を流し込んでも拒絶反応はもよおすまいと、ピクリとも動かぬ童子を片腕で抱き起こし、その口に己のそれを重ねると、そのまま口移しで強力な気を流し込んでやる。
     九尾の中でもとりわけ神気の強い降谷は、時としてその『気』が強すぎるあまり、流し込まれた者の身体が拒絶反応を引き起こし、そのまま消滅してしまうこともままある事で。その点でいえば今回とて復活するか消滅するかの博打のようなものである。

     時間としてものの五分ほどであろうか。
     静謐とした森の中、ゆぅるりと口唇を離した九尾はじっと手負いの童子の様子を伺い見る。
     全身からの出血が止まり、蒼褪めていた顔色は少しずつ、ほんの少しずつ血色を取り戻し、ぷくりとやわらかな唇は桃色に色づきはじめた。どうやら降谷の強すぎる気を流し込まれてもそれを受け容れて養分とするだけの器を備えていたようだ。拒絶反応は見られず、治療のために触れた翼も艶を取りもどし、ただ眠っているようである。どうやら降谷の『気』とは相性が良かったようだ。そのまま軽々と鴉天狗の子を抱えて立ち上がると、ゆっくりとした優雅な足取りで九尾は己のお社へと戻っていった。
     そう。これが、孤高の九尾降谷と、瀕死であった鴉天狗の子新一の出会いの物語である。
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