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    pandatunamogu

    降新文をポイポイします

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    しんどいセフレ降新『キミのココロ、ボクのキズ』降ver.『ボクのキズ、キミのココロ』3話目。

    ##降新
    ##セフレ

    ボクのキズ、キミのココロ第3話          3

     普段ならば未練がましくならないために、己に課したルールを守っていた。新一と肌を重ねる時は、三度まで。それ以上肌を重ねてしまうと、色々と己の中に課した自戒が崩壊すると危ぶんだためだ。それなのに、あの夜、自ら降谷はそのルールを破ってしまった。思えばそこから関係性の崩落が始まっていたのかもしれない。

     イレギュラーに四回立て続けに肌を重ねた夜の二日後、厄介な案件を受け持つことになり、庁舎に缶詰状態でほぼ二ヶ月間、掛かりきりになった。
     ようやく過激派新興宗教の無差別テロ計画を完全に潰して団体員を一網打尽にした帰り、丸々二ヶ月、部署一丸となって取り組んだ労をねぎらう名目で公安行きつけの居酒屋に入り、やたらとやかましい若手の緑下が臆することなくグイグイと降谷に話しかけてくるのも、いつもならば邪険に扱うのだが、今回の案件での一番の功績者であるため、その日は幾分降谷としては寛大な態度で緑下に向き合っていたように思う。
     通常であればもしその店に新一が居たのならば気付かぬはずがないのだが、やはり丸々二ヶ月間休み無しに緊迫していた蓄積疲労と、大事に至らず未然に防ぐことが出来たことに、多大にハイになっており、他への集中力が散漫になっていたのだろう。気づけなかったのだ。同じ居酒屋に、彼がいた事に。

     居酒屋に風見と緑下と三人で打ち上げを行った日から一週間後、ようやく新一に連絡を入れることが出来た。諸々の報告書をまとめ、上層部に提出するデータを作成したり諸々の事後処理に一週間を要してしまったが、これでようやく拘束されていた案件から完全に解放されると歓喜の脳裏に真っ先に浮かんだのがくだんの名探偵の顔だったのだから、かなりの重症と言えるだろう。

    【今夜の予定は】

     およそ二ヶ月と一週間ぶりの連絡にしてはなんと味も素っ気もないものなのかと第三者にメッセージを見られたらまず間違いなく叱り飛ばされるだろう。だが、この二ヶ月掛かりきりだった案件は事後とはいえ国家機密に相当するためひと欠片も口には出来ないし、その後の一週間にしたって口外厳禁案件の事後処理であるから、どのみち口にはできない。伝えたい言葉や言いたい文言は溢れ出るほどたくさんあったが、そのどれも形になることはなく、実に端的で味気ないものになってしまった。だがそれでも、今までの二人の関係性であれば別段彼から咎められることもなく、比較的すぐに連絡が来ていたため、降谷は甘く見ていたのだ。いや、新一そのものに、甘えていたのだろう。今まで、降谷の職業柄突発的に一時間ないし二時間だけ時間が自由になることがあり、突然その日の夜に誘うことも少なくはなかったが、そのどの誘いにも新一は二つ返事で応えてくれていたからだ。だからてっきり今回も、【いいですよ、何時にどこで待ち合わせます?】と返事がすぐに来ると思っていたのだ。だがその読みがことごとく甘ったれであったことを、その日知らしめられたのだ。

    「既読……ついたよな……?」

     部署に一番近いトイレの個室で私用の携帯を取り出し、もう何度目になるのかトーク画面を開いては己の送ったメッセージに既読がついていることを確認する。その度に、ジワ……と口内に苦いものが広がる。彼も自分の名前を刻んだ看板を掲げるいっぱしの探偵である。それもただの探偵ではなく、予約で向こう一年予約が取れないことで有名な人気の探偵である。多忙の身であることは重々承知はしているが、それでも今までであれば降谷からのメッセージを開いて既読をつけたら、すぐに返信があった。だが今回はどうだろうか。既読は比較的すぐについたものの、てっきりすぐに【了解】と色好い返事が来るとタカをくくっていた降谷は、見事にその予想を裏切られ、結局その日メッセージが来ることは無かった。
     正確に言うと、その日だけではなく、次の日も、またあくる日も、待てど暮らせど新一からのメッセージを受信することは無かった。

    「…………」

     そこでひとつ、懸念材料が頭に過った。
     ちょうど四年前、新一に岡惚れをした若い男が彼にストーカー行為を繰り返していたのだ。結局接近禁止命令が下されて大人しくなったものの、あれから暇を見つけては、降谷はその男を監視し続けていた。だが今のところ、こちらの目を盗んで新一にあのストーカー男が接触した事実はない。抑止も兼ねて、わざと男には降谷の存在を強調することで、下手な真似に出ないようにしてきた効果があったのだろう。接近禁止命令が下されてからは一度も新一に接触を計っていない。それは降谷が事件に掛かりきりになっている間も同様だった。どうしても男を張れない時は己の手隙の部下数名に張らせていたし、自分同様、サツが張っていると相手にわかるよう、存在感を誇示させてきた。その部下たちからも、ストーカー男が新一に接触したと言うような報告はいっさい受けていない。となればあの男が暴走して彼を攫い、監禁しているというような最悪な事態ではないだろう。

    ────だとすれば……何なんだ……?

     既読スルーのまま一週間は我慢したが、それでも落ち着かない気持ちを何とか鎮めるために電話を掛けてみたのだが────『お掛けになった番号は電波の届かないところにあるか電源が入っていないため、掛かりません』と無機質な機械の音声アナウンスが流れた。もしかすると依頼の関係で電波の届きにくい場所にいるのかとその日の夜と翌日の昼間にも時間を見繕って掛けてみたのだが、結果は同じだった。
     その日から毎日昼と夜の二回、新一の私用の携帯にコールする日々が続いたが、相変わらず一向に電話は掛からなかった。恐らく、電源を切っているのだろう。いつだったかに、彼も降谷と同じく、仕事用と私用の二台持ちだと聞いたことがある。私用のスマートフォンの電源を切ったとしても、仕事用のソレが生きていれば何ら生活にも職務にも支障がない。何らかの理由があり、唯一降谷と繋がりのある私用の方の携帯の電源を故意的に切っていることは明白だった。
     連絡を取りたいだけであれば、風見から仕事用の彼の番号を聞けばいいだけだったが、ひとつの懸念が生まれた。

    ────もし、俺が原因で私用のスマホの電源を落としている場合、最大要因が仕事用のスマホに電話をかけてきて着信拒否をされたとしたら…………耐えられない。

     その恐怖心が拭えないまま二週間が過ぎてしまったが、もう我慢も限界だと、彼の事務所のすぐ側に愛車を停めて、彼が事務所から出てくるのを待った。
     程なくして姿を現した探偵を確認した瞬間、ほとんど無意識に降谷は動いていた。気がつくと探偵の手首を掴んで捕獲し、ズルズルと車の前まで半ば引ずるように移動した。

    「何すんですか。離してください」

     感情の乗らない淡々としたその声に、胸の奥の柔く脆い部分がズキズキと間断なく痛む。それでもその手を離すことはしなかった。今、離してしまえば最後、二度と彼を捕まえることなど出来ないと確信があったからだ。

    「手首、痛いんですけど」
    「………………」
    「……ちょっと。聞こえてますか? 手首痛いので離してください降谷さん」

     その願いにしかし、降谷が口にしたのは全く噛み合っていない言葉だった。

    「何故だ」
    「……この場合、それは俺のセリフだと思いますが」

     手首を握って離さない降谷の手の甲を見つめたまま少し強い口調で返され、思わずたじろぐ。
     それでもここで怯んでしまっては終わりだと内心己自身に気合を入れ、口を開く。

    「二週間前のメッセージを見ただろう。どうして一言も返さないんだ。それどころかスマホの電源自体を切っていたのはどうしてだ? 予定が入っていたり気乗りがしなかったのならそう返してくれれば良いだろう」
    「…………」
    「……だんまりか」
    「………………くせに」
    「……? よく聞こえない」
    「いつでもアンタの都合のいい時に捕まると思うなっつってんだよ」
    「!」
    「アンタが二ヶ月以上放ったらかしてたように、俺にも俺の都合ってもんがあるンですよ。ついでに言えば今日もパスです」

     まさか、これまで従順に降谷に従ってきた新一が、ここまで強い意志で反抗してくるとは思いもしなかった。その衝撃とショックに思わず緩んだ拘束力の隙を見逃さずに手を振り払われ、そのままスタスタと微塵も未練も見せずに歩き去っていくその背中を、降谷はただただ呆然と見届けることしか出来なかった。
     そうして同時に思い知らされたのだ。
     自分がこれまでの四年間、どれだけ新一を支配するような態度を取り続けてきたのか。降谷が提案したことや口にした言葉は絶対で、どれだけ理不尽で冷たい言葉でも文句のひとつも口にせず従ってくれていた新一が、如何に寛容にして圧倒的な懐の深さによって許してくれていたのか、と言うことを。
     ココロが手に入らないのであればカラダだけでもと、何とも姑息な手段で彼のカラダを手に入れた分際で、新一をすっかり支配してしまっていることに、今の今まで気づけなかった。
     思えば初めて手を振り払われ、全身で抵抗されたと、振り払われた手が今更ジンジンと痺れを孕んで痛み出すのを感じ、思わず目を覆った。

    「……何様なんだ、俺は……」

     虚しく響く独白は、闇を迎え入れた夜に、ゆっくり溶けていった。
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