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    健康2

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    リョ花短編3本。
    ローソン・ファミマにてネットプリント登録中。
    番号 PTU6KEYHCY

    #リョ花

    710○桜が美しく思えるのは君のおかげ
    三年生との別れもつかの間、桜が満開になった今日この頃新入生たちが期待を胸に湘北高校の門をくぐる。友人と楽しそうに歩いている者、緊張で震えている者様々だ。
    「リョーちん!」
    そんなめでたい日に大声で呼ばれたかと思えばぐいっと手を引かれる。重力に従い、倒れこむが花道が下敷きになって痛みは感じなかった。
    「何してんだ、馬鹿」
    呆れながら言えばははっと笑い声が聞こえる。
    「雑用で呼ばれてなんもないんじゃつまらねえだろ」
    そう、なぜ入学式に在校生がいるのかと言えばバスケ部全員朝から入学式の体育館準備に駆り出されていたからだ。前日まで体育館を使っていいからと準備を受け入れた一同だったがまあ、面倒なことこの上なかった。
    「つまらねえからって先輩を倒すのは楽しいか?」
    うつ伏せになり花道の顔を伺うと心底楽しそうにしていた。
    「んー?ほどほどだな」
    ニコニコと笑っていたのにいきなりスンっと表情を消してほどほどなんて言う口が憎らしくて宮城は花道の脇に手を入れた。
    「先輩に手出しといてなにがほどほどだ」
    じゃれるように花道の脇をくすぐると花道の身体が痙攣し始める。
    「っはっは、はリョー、ち、やっ」
    降参だと手を振る花道を三十秒ほど無視してから離してやると花道ははーっ、と息を吐いて生理的な涙をぬぐっていた。頬は上気し、体中に桜の花びらをまとっていた。まだ目尻に雫を残したままリョーちんと呼ばれるとなんだかいけないことをしたような気になる。
    「で、本当に花道君はなにがしたかったんだよ」
    「ん、ああ!桜、綺麗だろ!?」
    笑顔でそう言う花道の指さす方を見ると大きな桜の木が花をいっぱいに咲かせていた。
    「ああ、綺麗だな」
    桜が綺麗だと笑う彼の顔は何よりも美しく見えた。


    ○木陰で一休み
    今年の夏は記録的な暑さが続くと朝のニュースで聞いた気がする。その証拠にここ数日、登下校だけで汗をかく程の猛暑が続いている。
    それなのに外でバスケをしたものだからシャツは汗で重くなり、日向に放置していたカバンの金具は火傷しそうな程に熱くなっていた。
    「だぁ、あちー」
    ついに限界を迎えた二人は公園の端に聳える大きな木の影に避難した。
    「お前もうちょい向こう寄れよ」
    非常に立派な幹を持つ樹木だったが男二人寄りかかるには少し小さかったようだ。宮城が花道の肩を押して木に寄りかかる。
    「リョーちんが端によればいいだろ」
    花道が宮城の肩をドンッと突き飛ばした所でカーンとコングの音が鳴る。ギャーギャーと言い合いをしていると余計に暑くなり、クラクラと目眩がしてきたところで花道が真ん中を陣取りその上に宮城が寄りかかる。
    「あっつ」
    凍らせて持ってきたペットボトルを額にあてると気持ちよかった。暫くそうしていると段々瞼が落ちてくる。時折吹く心地のいい風とセミの鳴く声、奴の心音と後は花道の匂いが鼻をくすぐる。
    浸っていると花道の腕が腹に回ってきてそのまま抱きつかれる。
    「暑いだろーが」
    ピッタリと隙間なく閉じ込められた宮城が抗議するが返事はなく代わりに規則正しい寝息が聞こえた。
    「りょー、ち」
    チラリと顔を盗み見ればヨダレを垂らしながら寝言を言う花道に毒気を抜かれる。
    この時間が何だか特別の物のような気がして宮城はもう一度目を閉じた。
    次に宮城が目を開けた時にはカナカナとひぐらしの鳴く声がしていた。
    「花道、帰るぞ」
    ペチペチ顔を叩くとゔっと呻き声があがる。目を覚ました花道はリョーちん、おはよと締まりきらない顔で言ったので宮城もおはよと締まらない顔で返した。


    ○花道
    花道とは立花、生け花の総称。晴れ舞台、又は引退の場所。歌舞伎等の舞台で観客席を貫いて設けられた俳優が出入りする細長い通路。その他にも華々しい印象を持つ言葉だが俺にとってその言葉の意味は一つだ。
    「花道!」
    そう言うだけで赤髪の男がこちらを見て嬉しそうに駆けてくる。
    「リョーちん、なんだ!?」
    ニコニコと屈託ない笑みを浮かべる花道がボール一個分のスペースを残して返事を待っている。
    「なんでもない」
    「はぁ?なんだそれ」
    特に用事もなく呼んでしまい申し訳なく思うがせっかく来たのにとプリプリ怒る花道も愛らしい。
    「花道」
    「なんだよ」
    練習に戻ろうとする花道をもう一度呼び止めるがまた呼んだだけかと警戒心たっぷりな顔で睨まれる。
    「すき」
    声は出さず口の動きだけで伝えるとちゃんと伝わった様で花道は大袈裟にワタワタと手を動かし戻ってくる
    「リョーちん、部活中に何言ってんだ!」
    小声で、しか囁くには大きく過ぎる声量で花道が訴える。
    「いいだろ。誰も見てなかったし声も出してねぇしさ」
    腑に落ちない様子の花道だったがふぬっと言って練習に戻っていった。
    が、帰り道に宮城は花道に背を小突かれた。
    「リョーちん、さっきのは一体どういうつもりだよ」
    「どうって、言いたくなったから言っただけだけど」
    いきなり名前呼んだり、す、好きとか言ったり意味わかんねーと続けた花道に宮城はさらっと答えを出した。すると花道はボンッと顔から火を噴く。
    「なあ、花道」
    なんだ?とそれどころじゃないだろうに愛おしい人が声を返してくれる魔法の言葉。宮城リョータにとって花道は桜木花道の花道、ただ一つだけ。
    「ん-、なんでもない」
    へらっと笑う宮城に花道は怒る気にもなれずはぁっ、とため息をついた。
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