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    おウイ(ナユタろう)

    @780K_Tune

    小説や落書き。

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    POIPOI 9

    はじめて(?)のチュウです。百合。

    Sweet Fragile向き合って、見つめ合いながら目を閉じたのは何回か。
    手を繋ぎ、指と指を絡ませたのは何回か。
    ゲソのなめらかな感触を手のひらで撫ぜたのは何回か。
    ──もう、何回触れ合ったのか。
    窓から見える星の数よりは少ないはずだ。

    ユネと「お互いのことをもっと知っていこう」と話してから、俺達は少しずつ、どんな些細なことでもいいから、言葉を交わすことを眠る前の日課にした。必ず、お互いの身体に触れながら。伝わる温もりによって目の前にいる相手をより意識できるからだ。
    こんなに近くにいるのに、今まではなんだか宙に向かって言葉を吐いていたように思う。
    でも、こうして手のひらを合わせて指を絡ませていると確かにそこにユネの温もりがあって、俺がいた。

    「眠いですか?」
    ユネが問いかけてくる。

    「あんまり。」
    答えながら、ゆるく手を握り返す。ユネの指は、月明かりの色をしていて、少しひんやりしている。
    「そうですか……。」とだけ言って、ユネはまたそれきり黙り込んでしまった。そうして少しだけ眉間に皺を寄せて、口元をモゴモゴとさせる。あちらこちらへと向ける目線は、なにを探しているのか。そっち見たって相棒のおしりしかないし。
    たまらず「何なのよ。何がしたいの?」と聞いてしまう。だって、気になるじゃない。この期に及んで躊躇うようなこと、ある?
    俺が怒ったと思ったのか、ユネの肩が少し跳ねる。絡ませていた指が少しだけ緩んだ。もう一度、こちらから握り返す。
    「うぇ、あの、えと、その………。」
    「何よ。言いたくないなら、無理に言わなくていいけど。」
    「………………しませんか?」
    「なにを。」
    肝心の部分がわからなかったので聞き返す。ユネがまた目を伏せて、指先を小さく動かす。迷うくらいなら言っちゃえばいいのに、変なところで臆病だと思う。そうして数秒、雲で隠れていた月がまた差し込んできた時。

    「キス、してみませんか。」
    ぽそりと。葉が舞い込むような軽さで、そう言った。
    キス。景品で手に入れた漫画で何回か見たことはある。特別に好きな相手とだけ唇を合わせるスキンシップ。
    (それ以外にも挨拶としてするみたいだけど、そっちはよくわからない。)
    「キス?」
    「もっ、ちろん、噛んだりとかはしないし、嫌ならっ、全然!ただこういうのって、次はキスしたりするよな〜とか思って!」
    「そうなの? じゃあ、いいわよ。」
    「ヘェっ!?」
    自分から言っておいてその反応は何なのかしら。
    「俺はよくわからないし、アンタが嫌じゃないならそれで良いわよ。好きにして。」
    漫画では恋人同士がやるものだったけれど、ユネがやりたがるってことはそれだけの意味ではないのかもしれないし。痛くないなら拒否する理由もなかった。
    ユネは俺の目をまあるくした目で見つめてからまた伏せて、静かに目を閉じてから、もう一度開いた。まっすぐ、俺の目より少し下を見つめながら。
    「じゃ、じゃあ……いきますよ。痛かったり、嫌だったら言ってくださいね!」
    いいから早くしなさいよ、とは口では言わなかった。ここでなにか言えば怖気付いてしまいそうだから。
    ユネの顔が一気に近付いて、鼻先が擦り合わさる。次の瞬間には、ふにりと柔らかな感触が唇を包んだ。そうしてすぐに離れた。そのまますぐ目が合ったのに、俺と目が合った瞬間に指先は突然沸騰したお湯のように熱くなっていた。握りこんだ手のひらが少し濡れてきて、思わず手を離してしまう。解けた指はそのままユネの顔を覆い隠すために使われ始めた。よく見ると耳まで火照った色をしていて、覆いきれていない手のひらから漏れる忙しない吐息は熱かった。
    (ただ唇を合わせるだけなのに、なんでそんなに騒がしくなるのかしら?)と思ったけれど、きっとユネにとってこの行為は意味があるのだろう。
    他人に見られるのが怖くて、いつも口元を隠しているユネが。何処も隠されていない素顔を俺に見せて、ましてや口と口をつけるなんて。きっと、相当思い切ったはずで。

    ユネの特別を、もらったのだ。

    「もう一度、だけ。したいって、言ったら?」

    指と指の隙間から、小さく小さなお願いをされる。ちらりと、雨に打たれた木蓮の花色の瞳がこちらを覗く。

    「……良いわよ。好きなだけどうぞ。」

    そう答えると、ユネは蕾が開くように手を退けて、また俺と唇を合わせた。
    手足や頬とはまた違う柔らかな感触に唇を包まれながら、この行為もまた、日を繰り返すたびに何回もしていくのだろうなと思った。
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