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    mauzai5415

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    mauzai5415

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    ライオネル②

     部屋へ戻ったライオネルは扉にもたれかかると、そのまま顔を覆って座り込んだ。
    頭の中を神父の声が響き渡る。

    「お前は本当にどうしようもない悪い子供だ!一人では何もできない、しようともしない。周りの人間に迷惑ばかりかけて、生きている意味があるのか」

     ライオネルは常に自分のことを否定していた。
    自分のやることは間違っているし、判断も正しくない。でもみんな優しいから彼を責めたりしない。そんな善良な人々に甘えきり、ぬるま湯に浸かって良い気分になっていたのかもしれない。
    みんな口に出さないだけで、本当は初めから彼のことを鬱陶しく思っていたのかもしれない。

    「悪い子にはお仕置きが必要だ」

    神父はそう言って十四歳の彼を叩き、蹴飛ばし、そして。

    「うぅ……」
    ライオネルは呻いた。
    植えつけられた劣等感、汚れきった体、歪みきった性格。
    化けの皮が剥がれる。
    罰を、自分に与えなければいけない。
    ライオネルはいつまでもしゃがみ込んでいた。

     翌朝、朝食の席でヒューとニコレッタはちらちらとライオネルのことを盗み見ていた。
    表面上はいつもと変わらず挨拶もしたが、顔色の悪さ、目の下のクマで、彼が一睡もしていないことがわかる。
     いつもこの時間、ヒューとニコレッタが他愛のない話で盛り上がり、エレナとライオネルは、それを穏やかに見守るのが常だった。
    ただ今日はライオネルはずっと俯いたまま、何も聞こえないかのように機械的に食事をしている。
     食事が終わる頃に、ライオネルは伏目にしたまま誰に言うともなく言った。
    「今日は昼前から街の方へ行ってきます。色々と用事を済ませて、戻るのは夜になると思います」
    「俺もついていこうか」
    ヒューが思わず言った。
    こんなに、まるで死にそうな顔をしているライオネルは初めてだ。
    ライオネルは少しヒューを見つめたあと、疲れたように微笑んだ。
    「大丈夫だ。色々と行くところもあるし、君はここにいてくれ」
    「…………」
    「ごちそうさま。今日もおいしかったよ」
    ライオネルは穏やかに言うと、食器を洗い場持ってき、静かに洗い終わると、出て行った。
    「ライオネルさんはどうしたの?」
    エレナが真面目な顔で残った二人に聞いた。
    ヒューとニコレッタは顔を合わせた。ニコレッタは泣きそうな顔をしている。
    ヒューが昨夜のやりとりをエレナに話した。
    「そうなのね…。あなたたちの言いたいこともわかるけれど、ライオネルさんはとても繊細な人よ。自分を責めているんでしょうね」
    「それにしても反応が強すぎだと思う」
    「そういうふうに育てられたのではないかしら」
    エレナが考えるふうに言った。
    「育てられたって、引き取ってくれた神父とかいう人に?」
    「前にふとした拍子にライオネルさんが言ったことがあるの。自分は神父様にいつもお仕置きを受ける悪い子供だったって」
    「…………」
     ヒューは一度ライオネルとじっくり話さなければいけないと思った。
    すべての原因がそこにある。
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