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    kanone99

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    kanone99

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    支部に載せているビマ(α)×ヨダ(α)の現パロオメガバの続きのようなもの…です。カルナさんがめちゃくちゃ喋ります。

    カルナさんは知っているぱさり、とドゥリーヨダナは自身が使う社長室の執務机の上に、家を出る際に郵便受けから取った診断書をぞんざいに投げた。
    『検査の結果あなたのバース性はαでした』
    そうだろうとも、と、ドゥリーヨダナは椅子に深く座り直し長いため息を吐く。勢い任せにビーマと身体を重ねたあの日、記憶に曖昧なところはあるが相当精を吐き出されたことは確かだった。その後、特に身体に変調もなく過ごしているが念のためバース性の検査を受け直した。直近でこう何度も検査する事になるとは想定外のことだった。
    ───というかなんか自然な流れでこちらが受け身になっていたがおかしくないか?何故わし様が抱かれる側なのだ?…まあ、奴を欲しがった覚えは…ある、が…
    とそこまで思い起こしてドゥリーヨダナは両手で頭を抱えた。もうこれはあれだ。どうにかして自分とビーマをくっつけようと画策する一族連中に、試してみたけどやはり結婚などどうあっても無理、と洗いざらい話すしかない。愛がなくてもアルファの子が残せればという考えなのだろうが、実際ヤったが自分のバース性は変わらないと言ってやってもいい。…いや、よくない。よく分からないフェロモンせいで、あの心底憎いクソビーマと身体を重ねたなど、事実であっても口に出して言いたくない。絶対に嫌だ。これはもう、いよいよ見合いを再開して適当に身を固めるしかないかもしれない。それも絶対に嫌だが。そもそも結婚が嫌なのではなく、いつまでも自分を一族の繁栄のためだけに使おうとするそういう連中の考えが大嫌いなだけだ。生きたいように、生きる。ドゥリーヨダナが望むのは、ただそれだけだ。
    「失礼する」
    不意に、社長室の扉が開けられた。こんな風に無遠慮に入って来れる人間は限られている。下げていた顔を上げると、そこにはドゥリーヨダナのよく知る顔があった。
    「カーールナではないかーーー!!」
    立ち上がり距離を詰めるとドゥリーヨダナは勢いのままにカルナを抱きしめた。
    「会いたかったぞー!出張は大変だっただろう!寂しくはなかったか!?わし様は寂しかった!」
    「む…それはすまない…」
    バシバシと背中を叩かれながらもカルナは口元に笑みを浮かべつつドゥリーヨダナへと謝罪する。
    「土産だ」
    「なに!?気がきくな!…これは?」
    「白い象のぬいぐるみだ。可愛いだろう」
    「うむ!礼を言うぞカルナー!早速机に飾ろう!」
    片手に乗るほどの大きさのぬいぐるみをドゥリーヨダナは早速執務机の上に置いた。親友の帰還に心が躍る。ドゥリーヨダナはこの親友を溺愛している。まるで本物の兄弟のように、いや、時にはそれ以上に。
    はた、とドゥリーヨダナは手を止めた。そうだ、カルナだ。カルナがいるではないか。
    「カルナ」
    振り返ったドゥリーヨダナは、再度カルナとの距離を詰めて、今度はその手を両手で取った。
    「お前に頼みたい事がある。お前にしか、頼めんのだ」
    いつになく真剣なドゥリーヨダナの表情に、カルナは少し目を見張った後、訳も聞かぬまま、承知した、とだけ頷いた。


    ***


    見たことのない男がいる。
    と、思うことは社交を兼ねた会食ともなればよくある事なのだが、ビーマが特別にそう思ったのはその男が他者の目を引くほどの見た目をしていたからだ。
    白い、というのが素直な印象だった。スーツの色がではない。肌も、髪も、おそらくその男が生まれ持ったであろう何もかもが白いのだ。
    それからもう一つ、その男が、自分が誰よりも大嫌いな従兄弟に伴っていることも、ビーマがその男に目を引かれた理由の一つだった。
    「ビーマ様?」
    話していた相手に名前を呼ばれ、ビーマは意識を目の前へと戻す。話していた相手は会食でよく会うとある商社の役員だった。
    「申し訳ない、初めてお見受けする方がいたもので…」
    「…ああ、カルナ様ですか」
    ビーマの視線を追った相手がそう答える。カルナ、とビーマは心の中で反芻した。
    「最近はお見かけしなかったですしね、よくああしてドゥリーヨダナ様と一緒に出席されてますよ」
    「それは知らなかった」
    「おや、そうなのですか?」
    ビーマとドゥリーヨダナが従兄弟同士であると知っているこの相手は、それが不思議でならないとでも言うように驚いた顔をしてビーマの方へと顔を向けた。
    「あー…実はあの従兄弟と同じ場に出るようになったのは最近で…」
    嘘は言っていない。何故今まで一緒の場に出なかったのか。出たら手のつけようのない大喧嘩になると思っていたから。何故今頃になって一緒の場に出るようになったのか。ビーマとドゥリーヨダナを番わせようとする一族のクソみたいな計画に巻き込まれたから。
    しかしそういう背景は他人に話すほどの事でもない。現に目の前の相手は、そうでしたね、と納得したようだった。
    「しかし、その、お身内の方に直接こういうお話をするのはどうかと思いますが、ドゥリーヨダナ様はカルナ様を伴侶になさるおつもりではないのですか?」
    「…は?」
    「ああっ、いえっ、根も葉もない噂話でしたか…お身内の貴方様がご存知ないのなら間違いでしょう、今度そういう噂がたったら私が否定しておきます、ご気分を害してしまい申し訳ありません」
    「いや、そこまでは…あの従兄弟と離れて暮らしているせいかどうもそういった話は耳に入りづらくて…」
    「俗っぽい噂話です…元々あのお二人の仲がよろしかった事と、カルナ様がベータ性だということもあって追々お身内になさるおつもりでこうしてドゥリーヨダナ様が顔見せに回っているのではないか、と…最近、バース性の研究が盛んで有名な病院に二人が揃っていたという話もありまして、おそらくそこから出た話かと…」
    「は…、」
    はあああああああ!?と叫びたくなるのを最初の一音だけで押し留めた自分を褒めてもいいくらいだ、とビーマは思った。申し訳ありません、と繰り返す相手に、いや、今度直接聞いてみるとします、と笑顔を繕って、それでは、と言うとビーマは身を翻した。ドリンクを持っている給仕から琥珀色のシャンパンを受け取り喉に流し込む。
    そういう相手がいるならはっきり言え!とっとと実家に伝えろ!巻き込まれ損だろうが!俺が!本当にクソ野郎だなテメェは!よし殺す。社会的に殺す。絶対に許さねぇ。その前に一発殴る。関節ひとつくらいなら外してもいいか。首絞めて失神させる。これもありか。
    とめどなく流れてくる罵詈雑言と具体的な暴力をなんとか頭の中だけで抑えて、ビーマは深く長いため息をついた。そのあまりの形相に、周囲にいた人間が勝手に萎縮していたのだが、そんなこと本人は知る由もない。
    少し冷静を取り戻した頭で考える。しかし、ともかく、後はドゥリーヨダナがあのカルナとかいう奴の存在を本家に伝えれば良いだけの話でもあるのだ。これでビーマもドゥリーヨダナの番候補などという馬鹿げた、本当に狂っているとしか思えない役どころから罷免される。
    そう考えると妙にすっきりとした気分になった。



    と、思っていたのだが、数週間経っても、一向に、お役御免の話はビーマの元へ来なかった。ドゥリーヨダナの婚約者が決まったという話も聞こえてこなかった。
    ビーマの苛立ちは段々と募っていくばかりだった。状況が状況なのに何故何も言わない?早く報告しろクソ馬鹿野郎、と直接言ってやりたいくらいなのだが、まず、個人的な連絡先を知らない。ドゥリーヨダナの家は事情を知っている者、例えば兄あたりに話せば調べて秘密裏に教えてくれそうなものだが、そこにはドゥリーヨダナの弟たちがひっきりなしに出入りしていると聞いているし、目に見えて面倒なことになりそうなので却下だ。
    残るは、一つ。ドゥリーヨダナの会社に直接赴く。これならば一族の経営グループ会社を調べれば簡単に分かる。
    ビーマはすぐに行動に移した。午後から休みを取って、早速ドゥリーヨダナの会社のビルへと向かう。受付で案の定、予約がないと、と断られたが身分を明かしてまずは秘書課の者を呼び出し、緊急だから融通を利かせてさもらえないか、と頼み込めばとりあえずは応接室まで通してもらえる事となった。
    予約を取ろうものならドゥリーヨダナの耳に入り、絶対に本人はビーマの前に出てこない。こうするしかなかったのだが、受付には悪いことをしたな、とビーマは反省しつつ今度なにか美味い差し入れでも渡しておこうと心の内で考えた。黒い革張りのソファーに座りながらそんな事を考えていると、とんとんとん、と応接室の扉が叩かれる。失礼する、と言って入ってきた人物を見て、ビーマは目を見開いた。
    白い、男。
    「おまえ…」
    「……本当だったか…」
    白い男、カルナがビーマを見てそう呟く。何が、と問おうとして、しかし先に口を開いたのはカルナの方だった。
    「ドゥリーヨダナは出ていて今はいない。そろそろ戻ってくるとは思うが、少々待っていてもらえないだろうか」
    初めて会う者同士、敬語も使わず、けれど何故かカルナが発する言葉はとても自然な耳心地でビーマはそんな事を気に留めることもなかった。
    「そっちが待ってて良いってんなら遠慮なく待つが…なあ、あんたの、本当だったか、ってどういう意味だ?」
    「ああ、ドゥリーヨダナの従兄弟が来ている、と、ビーマと名乗っていると聞いたからな。アルジュナならあり得そうだが、まさか互いに嫌い合っているはずの者が来るわけがないと、俺もどこか半信半疑だったものでな、驚いた」
    アルジュナの名前を出されて、ビーマはぴくりと反応する。この男は一族の事情をどこまで知っているのか。ドゥリーヨダナとビーマが嫌い合っていてお互いに顔を合わせる訳がないというのも知っているようだ。やはり、この男は、ドゥリーヨダナの。
    「不躾で悪いが、あんたはドゥリーヨダナの」
    「カーーールナーーーー!!!」
    ビーマが質問しかけたタイミングで、うるさいほどの大声と、バンッという扉が勢いよく開いた音がした。ビーマは思わず口を止めてそちらを振り返る。らしくもなく髪を乱してドゥリーヨダナがほんの少し息を荒げながら応接室へと入ってくるところだった。
    「む…大丈夫だ、お前が心配することは何もない」
    真っ先にカルナの元へと足を向けたドゥリーヨダナにカルナはそう伝える。
    「いや、しかしだな、お前の…」
    「問題ない」
    何の話かさっぱり分からないが、二人のめくるめく世界を目の前で展開されてビーマは半眼になりながらも、どこか冷静に問うなら今か、と思っていた。
    「なあ、お前らが結婚するって話は本当か?」
    ぴた、とドゥリーヨダナとカルナが固まって仲良く二人してビーマの方への首を向けた。
    「は?貴様何を言っておる」
    「噂になってんぞ」
    「はああぁ!?まさか、貴様、それだけを言うために来たのか!?アホか!?」
    「ちげぇよバカ!その話が本当ならとっとと本家に報告しやがれってテメェに文句言いに来たんだ!そしたら俺もお役御免であの馬鹿げた話もなくなるだろうが!」
    「ふむ、馬鹿げた話とはドゥリーヨダナとビーマが番わされそうになっているという話か」
    声を荒げるビーマとドゥリーヨダナをよそに冷静な声音でカルナが問う。それも知ってんのかよ、とビーマは何故か辟易した。
    ふと、カルナがビーマの方へと体ごと向き合った。
    「安心しろ、俺とドゥリーヨダナはそういう関係にない。唯一無二の親友だ」
    「そうだそうだ!」
    「ふっ…そういうことだ。お前が嫉妬することなどない」
    カルナの言葉にビーマは固まった。ドゥリーヨダナも固まった。
    「ビーマ…おまえ…わし様とカルナの仲に…し、嫉妬して…」
    「するかボケが!うわ、おい、鳥肌がすげえんだが…」
    急に部屋の気温が7度くらい下がったように感じる。違うのか、とカルナが首を傾げるので、ちげぇよ!とビーマは食い気味に返しておいた。
    「…っとに、それならそれでしょうがねえが、お前ら噂になってるぞ?よく一緒に社交の場に来るとか、バース性の研究で有名な病院に二人で通ってたとか、な」
    「ふん、言わせておけそんなもの」
    「事実無根ってことか?」
    「そう、」
    「それは、俺の出生のせいだな」
    「カルナ!」
    「いい、ドゥリーヨダナ、いつかは知られていた事だ」
    二人の会話にビーマは素直に疑問符を浮かべる。カルナがまた、ビーマへと向き合った。
    「俺はお前の兄だ」
    「……は?」
    トンチキ野郎の親友はトンチキなのか?という暴言を初対面の相手にするのは失礼だと、なんとかその言葉を飲み込んでビーマは眉間に皺を寄せた。
    「ふ、ざけんなよ…何言ってんだ?お前。俺の兄貴は一人しかいねぇ」
    「だろうな。本当は自然にバレてしまうまで言うつもりはなかったが…俺はいわゆる私生児というやつだ。お前たち兄弟とは母が一緒なのだが、お前たちの父親と結婚する前に生まれたから赤ん坊のうちに施設に預けられた。結婚前にこの件が露呈することを恐れて、母は俺をアルファの一族から出来るだけ遠ざけようとした。ベータ性として育てるよう施設の者に言い渡して俺もそのつもりで生きてきたが思春期の検査でアルファ性であることが分かった。ドゥリーヨダナと出会ったのもその頃だ。大人になって、施設を出た俺は出生を知りたいと思い、ドゥリーヨダナの協力も得ながら自分で色々と探り始め、そしてお前たちの一族へと辿り着いた。まさか親友の一族に連なる血筋だとは自分でも思っていなかったがな。…実は母にも会った。俺は、今更お前たちの一族に入る気は毛頭ない。ベータとして生きるのも全く苦ではない。だが、アルファとして生まれたからには何か、この世界に還元出来る働きをしてみせたいとは思っている。そんな俺の想いを知っているドゥリーヨダナが、アルファの社交界へと俺を連れて行ってくれている訳だ。コネ、が出来るのは良い事だからな」
    ふ、とカルナは笑う。自嘲ではない。自慢でもない。ただ、今が幸福であると言わんばかりの優しい微笑みだった。
    「信じられないなら…髪の毛でも、唾液でも、血でもやろう。遺伝子検査をすればお前との血の繋がりは証明されるはずだ」
    怒涛の話にビーマは唖然としていたが、どうにもカルナが嘘をついているようには見えない。もう、いい、とビーマはカルナを制した。
    「ったく、本当、根も葉もない噂話が好きだな、社交界の連中は……今度そんな噂聞いたら適当に否定しておいてやるよ。病院に行ってたってのも、ただバース性の相談でもしてたんだろ?」
    「ああ、いや、それは」
    「わし様が頼んだ事だ」
    それまで大人しくしていたドゥリーヨダナが口を開いた。
    「カルナは、アルファで、しかもお前とは半分血が繋がっている。わし様とお前の間でしか分からないあの匂いの正体を突き止める為に、カルナに生体情報の提供を頼んだ。わし様とカルナの生体情報を元に、今、わし様たちの身体で起きる生体反応の解析を進めさせている」
    「は?検査頼むなら俺を呼べば良い話だろうが」
    「はあ〜?連絡先も知らんしぃ?万が一わし様とお前が揃って互いの生体情報と生体反応を調べているなんて一族に知れたらそれこそ奴らにいらん餌を与えるようなものではないか!奴ら嬉々として番わせようとしてくるぞ」
    「……すまねぇ、カルナ、巻き込んじまって」
    「わし様に謝罪はぁ!?」
    「いや、俺がドゥリーヨダナにしてもらったことに比べればなんて事はない」
    「お、おお!カルナー!心の友よー!」
    ひしっ、とカルナに抱きつくドゥリーヨダナを横目に、ビーマは呆れながら人知れず笑う。ドゥリーヨダナがどうにも焦った様子でこの部屋へ入ってきて一番にカルナを心配したのは、己の出自を隠すカルナの意志を慮ってのことだろう。実の兄弟(と言われても全く実感はないが)にふとした拍子で、それがバレてしまうことを危惧していたのだ。
    「帰るぜ、邪魔したな」
    「本当に邪魔だったな、もう来なくていいぞ」
    「言われなくてもこねぇよ…と、言いたいところだが一族との問題は解決してねえからな」
    「ぐっ、ううう…クソっ、非常にっひっじょーに不本意だがお前と手を組むしかないのか…っ」
    「テメエが早く結婚すればいい話だろうが」
    「それはお前もそうだろう!早く伴侶をつくれ」
    「命令すんなクソ長男」
    「お前たちはそれで良いのか?」
    ビーマとドゥリーヨダナのやり取りに、ふと、カルナが疑問を挟む。
    「いいに決まってんだろ」
    「いいに決まっておる」
    見事に重なった二つの声に、カルナは、そうか、とだけ応えた。

    カルナは知っている。
    カルナが、ビーマたち兄弟に己が兄であると伝える気はないがバレるのはしょうがないと思っていると、ドゥリーヨダナはちゃんと理解していること。
    ───つまるところ、ドゥリーヨダナがあんなに焦って入ってくる必要はこの点についてはなかったのだが

    カルナは知っている。
    己も初めてビーマの姿を見たあの会食で、ビーマがカルナに対してほんの少しではあるが嫉妬のような目を向けていたこと。
    ───本人は、嫉妬することなどないと言った俺の発言が今日のことだけに起因していると思っていたようだが


    親友と、実の弟からの無自覚の嫉妬に、それでもカルナは微笑ましいと思うのだった。
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