アンニュイから始まる…………
「んー…?」
リビングのソファの上。
スマホロトムの画面とにらめっこしているオレさまの口から思わず漏れてしまった小さめな音量の唸り声。
そんなオレになんとなく体重を掛けて座りながら雑誌を眺めていたダンデも「ん?」と頭にはてなマークを浮かべながら、コチラを気にするような表情を向ける。
「珍しいな、まだ終わりそうにないのか?」
「うん…もうちょいかかりそう…」
へにょりと笑って誤魔化すものの、どうも返答に力が入りきらず微妙な受け答えをしてしまった。
こんなにも可愛い恋人が目の前に居てくれるというのに、臨時を要する連絡が入ってくるのが悪い!
自分の管理するスタジアムの件となると、仕方のない事なのだがせっかく2人の時間なのに。とやり切れない気持ちを押さえつつオレさまの身体に体重をかけていたダンデに手を回して頭を撫でながら、もう片方の空いた手でスマホロトムで作業をはじめる。
このメールでやり取りをお偉いさんと済ませば一通りケリが付くはずなのだ。
そう思いながらメール本文の入力を進めていると、横目で見えるダンデがぱたん。と読んでいた雑誌を閉じたのが見えたのだった。
「ごめんなー。もうちょいで終わる、はず……」
とスマホロトムの画面からは目線を外さず、ダンデのふわふわな髪を片手でいじりながら告げると「オレの事はお構いなく、だぜ」と優しくそんな言葉を掛けてくれる。
愛おしさを感じて今すぐ思いっきり両手で抱きしめたくなる気持ちをなんとか押さえ付けながら、一刻も早くこのメールの文章を完成させてしまおう。と決心して作業の方へと気持ちを集中させる。
一方ダンデは、お構いなくとはいいつつもこの状況にどうやら飽きてきたらしく自分の髪に触れていたオレの手を取り、お互いの手と手を合わせて何やらし始めた。
「キバナの手は大きいな」
「んー…、身長デカいしなぁ」
あまり深くは考えず、話半分で受け流しながら会話をする。
そんな中でも暇つぶし最中のダンデは真剣に合わせたお互いの手の大きさを比べたり、ぐっとそこから握ったりしてオレさまの手とじゃれ始めたのだった。コイツのこういうとこ、ほんと可愛すぎるんだよなぁ…
入力していたメールを書き終え、誤字脱字がないか軽くチェックを済まして送信ボタンをタップする。
ふぅ、と一息ついてそのまま「さんきゅ、ロトム」と告げてロトム解放し、視線をようやくダンデの方に向けたのだが相変わらず少し楽しそうにオレさまの手とじゃれている真っ最中だった。
オレの用事が終わった事にも気が付かないくらい夢中になっている姿が可愛いと思う反面、自分の中にある嗜虐心が少し擽られてしまう。
「いつまでオレさまの手とイチャついてんの?」
ぼそりとダンデの耳元で囁けば、ビクリと体を震わせてせてようやくこちらに視線を向ける。反応がホントいちいちオレさまを刺激してくるんだよな。
「す、すまない。もう用事は済んだのか?」
「うん。手もいいけどオレさま本体にはかまってくれねーの?」
にこりと笑ってそのままダンデとの距離を詰め、やんわりソファに押し倒し上に覆いかぶさる。そのまま身体にするりと手を滑らせれば、握られっぱなしだったダンデの手に力が入ったのが伝わってきた。
「て、手つきがいやらしいんだぜ」
「そう?」
まぁこの雰囲気だったらやること、1つしかないしな。と思いながら握り合っていたダンデの手を口元に持ってきてそのままちゅ、と軽いキスをする。
散々オレの手を可愛がってくれたお返しに、今度はオレさまがダンデの手を可愛がる番ってコトだ。
手にキスを何度もおとして、そのままべろりと手の平を舐めたり指を甘噛みして反応を楽しむ。
事ある毎にびくびくと身体を震わせてくぐもった声を漏らすダンデ姿は更にオレさまの嗜虐心を逆撫でしてくるのだった。
「あー……、クソ…ベッド行こうぜ」
「ん…。あぁ…」
ふにゃふにゃし始めたダンデはされるがままだ。
ぐいっと手を引いて身体を抱き上げ、ふにゃりとしたダンデの額にキスを落とすと力のない手がオレの背中に回されたと同時にダンデがむに、と唇に触れるだけのキスをしてきた。
「オレだって構ってほしくて我慢してたんだぜ?」
リビングから数歩のベッドルームの距離がやけに長く感じる程、その一言のこうかはばつぐんでオレの理性は紙一重状態だ。
……
第155回 // お題『手を取り合う•タッチ』
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