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    八丁目

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    八丁目

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    💚露億 ⚠️女体化
    タイトル違いますがpixiv掲載済
    生理痛で苦しむにょ泰ちゃんにひどい扱いするツンデレマックス露伴先生が欲しかっただけです

    #露億
    luYi

    バイトなんかよりさァ 「いて……」
     ぴりぴりと痛み出した下腹部に手を当てた。
     月経痛はひどくないほうだが、痛みはじくじくと長引いて治まる気配がない。
    (はやく、治んねえかな。せんせぇンとこ行かなきゃなんねえのに)
     最近始めた有名漫画家、岸辺露伴宅での家政婦アルバイト。
    『せんせぇ、俺のこと雇わない?』
    『なんだよ、珍しく無駄遣いでもしたのか?』
     小遣い稼ぎと言われようが構わなかった。露伴と一緒にいる理由が欲しくて、家事などはてんで駄目な露伴の弱みにつけ込んだ。おかげであまり接点がなかった以前と違い、ふたりで一緒に過ごす時間が出来たというのに。雇われてからまだ二週間と少しばかり。さっそく休むことになってしまった。
     ソファーの上に放って置いたプリペイド式の携帯電話を取りに、腹部に手を添えながら歩き出す。次第に痛みが増していけば、半身を屈ませる。
     虹村邸には電話がなく、携帯電話の契約も出来ない億泰の為に『連絡用』と露伴が買ってくれた。支払いは『バイト代から引いておくならな』だそうだ。

    『なんだ?寝坊しただなんて言うんじゃないだろうな』
     「せんせぇ、おれ、今日はやすませて、くれねえかなァ……」
     露伴の声を聞けば少しは良くなるんじゃないかと思った。
    『……まだ始めて二週間だろ?もう体調崩したのか?慣れないことをするからそうなるんだぜ。体調管理ぐらいしっかりしろよな……いてッ』
     なにかにぶつかったらしく、小さいながらも『いてッ』と声がした。
     「べつに、仕事で疲れたとかじゃあねェんだよぉ……」
    『じゃあなんだよ。お前、働き始めてからかなり浮かれていたぞ。僕のとこで働けばそりゃあイイ金になるだろうが、だからってこんなすぐに体調崩されちゃあ雇い主としてはだな……すまないな、バキン。今日は散歩は中止だ』
     億泰と話している途中、愛犬であるバキンに話し掛ける声も聞こえた。散歩ぐらい自分で連れていけばいいのに、とか浮かれていたのは金がイイからじゃないと言ったところで信用してはくれないだろうし、今は言い返せる状態じゃない。うん、うん……、と頷くのが精一杯だった。
    『で?どこが悪いんだ?アタマ、だなんて冗談は言えるほどの元気は無いんだろ。腹か?何を食べたんだよ。それとも昨夜、腹を出して寝ていたんじゃないだろうな。まったく……、女のクセにホントにガサツだよ君はっ!』
     「そうじゃなくて、……ぅぅっ、いてぇ……」
     痛みが増していく。
     露伴の声を聞けば、なんて思ったが、余計に酷くなるばかりだった。話もなかなか途切れず、はやく終わりたいのに、終わりたくないような気もする。苛立ちはするし、腹部の痛みが増しても、やはり好きな人と話していたい。それなのに──
    『お、おい…、とにかくっ、あれだ、その、君はクビだ。悪いが、……クソっ靴がうまく履けないっ!ああっ!しまっ……!!』
     「せんせえ?」
     思いがけないタイミングで電話が途切れた。しかしそれよりもショックなのは、露伴邸での家事バイトがクビになってしまったこと。
     「う゛ぅ……いっ、ぁ……」
     ソファーの上で体を丸める。痛みは腹部だけに留まらず、胸の奥もズキズキと痛み出した。
    (あ~あ、せっかく露伴せんせえとの時間が増えたと思ったのになァ)
     もうどこが痛いのか分からない。目の奥が熱くなって、鼻も痛い。いつの間にか涙が溢れてソファーの座面を濡らしていた。
     「……いたい、いてェよぉ、せんせえ」
     バキンの散歩には行けないと言いつつ、靴を履いていた様子のあった露伴。犬が禁止されている場所へ取材にでも行くのだろうか。かなり焦っていたようだから、時間厳守なのだろう。いや、そもそも取材なのだろうか。誰かと会う約束でもあるのではないか。
     ──誰かと。──誰と……?
     自分の心配なんか一切してくれない。もちろん心配して欲しいわけじゃないし、してくれるとも思ってない。それでも、やっぱり好きな人に放っておかれるのはつらかった。
    (ダメだ、体調悪ィとへんなことばっか考えちまう……)
     寝よう。寝れば良くなるなるし、余計なことを考えなくて済む。

     
     なんで俺、

     あんな面倒くせえひと

     すきになっちまうかなぁ


     ソファーの前にあるローテーブルをぼーっと眺めてどのくらいの時間が経っただろうか。そもそも自分は寝ていたのだろうか。感覚がおかしくて時計に目を見遣れば、電話を終えてから一時間が過ぎた。あまり時間は経っていないが、腹部の痛みは消えていて楽になった。体もラクになって気持ちも、とまではいかないが、少しだけ落ち着いた。

     コン、コン

     微かに玄関の戸を叩く音がした。

     ……ガチャ

     しかも勝手に入ってきた。どこの変態が入ってきたのかと思ったが、すぐに「あっ、あの娘ェ、鍵掛けないのかよ!不用心過ぎるだろォ~!変態趣味のドグサレ野郎に侵入されたらどうするつもりだぁ~?!」と独り言の多い聞きなれた声が聞こえてきた。

     「せんせぇ~!どうしたんだよォ~」
     玄関へと顔を出しに行けば、土間でぱんぱんに膨らませた大きなビニール袋を両手に持ちながら、億泰の顔を見て驚く露伴がいた。
     「お、おい!君、平気なのかい?熱や吐き気はないのか?!なんの病気か知らんが寝ていろよっ!」
     「ん、もう治ったみてえ」
     「そっそうか……」
     「せんせえ、ソレなに?」
     億泰はずっと気になっていたビニール袋の中身を聞いた。
     「これ、は……な、なにが必要なのか分からないから、とにかくそれっぽいものを買ってきたんだが……いやもう必要ないみたいだからこのまま持って帰るんだがなっ!」
     誤魔化そうとして背を向け帰ろうとする露伴に向かって、億泰は右手を振りかざした。
     「ぬわあぁっ!」
     露伴は引き寄せられながら、持っていたビニール袋の中身を散らばせていく。中身の物がレールのように敷かれていった。レールのように散乱した物は様々な市販薬やスポーツドリンク。市販薬の中にはなぜか妊娠検査薬まであった。なんの病気か分からず、とにかくいろんな薬を買ってきてくれたようだ。
     間抜けな声と一緒に引き寄せて、露伴をガオンキャッチすれば、自分のほうが背が高いことに引け目を感じるも、骨ばった体を後ろから抱きしめた。
     「せんせえ、ありがと。うれしかった」
     来てくれるなんて思っていなかったから。あの露伴が自分を心配するなんて有り得ないと思っていたから。それだけで充分なのに、案外自分は我儘なようだ。仕事がクビになってしまったから、もう露伴と会うこともなかなか出来ない。だから最後に、ずっとずっとちいさな声で想いを告げた。

     ──大好きでした。いや……たぶん、これからもずっと。

     想いを告げては、ぱっと露伴から手を離す。
     「そういやあ、クビになったから電話も返さなきゃだよな!いま持ってくるから待ってて~」
     背を向けたまま、何も返さない露伴を見て予想はしていたが、やっぱり苦しい。ちょっと優しくされたくらいで調子に乗ってしまったかもしれない。それでも、告白しないまま会えなくなるよりずっといい。そう思うことにした。
     リビングのソファーに電話はあった。せめてクッションの隙間に入っていたりすれば、もう少し露伴をここに引き留めておけたのに。いっそのことハンドの能力で削ってしまおうか。電話が見当たらないと言って時間を引き延ばそう。電話を弄り回しながらそんな考えが過ぎった。
     「きたねえなぁ、おれ……」
     早く行って露伴に返そうと顔を上げた時、「億泰」と名前を呼ばれて振り返った。
     「正直言って僕もここまで来るのに色々考えて、腹を決めたつもりだった」
     露伴にプリペイド式携帯電話を取られ「あっ」とつい声が出てしまう。好きな人といる時間も、楽しい片想いもこれで終い。
     「それなのに、まさかあんな形で君に先を越されるとは思わなかったよ。雇い主として金で君を繋ぎ止めておくのも悪くないと思ったが、それだと不安が絶えないからな」
     「なんだよ、なに言ってんのせんせえ?」
     先に越される、金で繋ぎ止める、不安?
     いったい何の話をしているのか、億泰にはさっぱり検討がつかない。
     「いつもうるさいくらい元気な君がだぞ?電話越しにあんな弱々しい声で休ませてくれなんて言われて、僕は、息が止まりそうだったよ。それでも君のそばに行ってどうにかしてやらないとと思ったら、靴はうまく履けないし、電話は落としちまうし……君の前では全く格好がつかないよ……」
     クソ、と悪態をついて頭を抱えている。
     露伴が本当は優しいところがあるのも知っている。それも好きになった理由のひとつでもあるから。だから、露伴は家で億泰を看てくれる者がいない代わりに来てくれたのだと思った。けれど、それ以上に億泰自身のことが心配で堪らなかったらしい。
     「君の気持ちを聞いてから僕の気持ちを告げるのは、男らしさの欠片もなくて情けないばかりだが、それでも聞いたからにはしっかり答えなきゃいけないからな」
     仏頂面は緊張のせいなのか。頬は微かに赤らんでいるが目線はしっかり億泰を見つめていた。初めて見る露伴の表情に、億泰の胸の音は止まらない。手をすっと伸ばされて取られると、心臓の音が伝う。自分も露伴もドクドクと激しく高鳴っていた。
     「アホの億泰、ぼくも、きみが、すきだ……」
     「せんせ……っ」
     うれしい。すき。だいすき。
     それは露伴も同じ。
     このまま露伴の名前と『好き』を叫びながら杜王町内を走り回りたいくらいだ。
     互いに目線を絡めて、ゆっくりと距離を縮めていく。手はするすると手首を通り腕を撫でる。それから露伴の手が億泰の腰へと回りかけ、瞼が次第に閉じていき、顔を近づけて、キスを──のハズだった。

     ──どくりっ

     「せんせえごめんっ!!!」
     「はぁ?!」
     億泰は露伴を横切って走り去った。どこへ行くんだと露伴の目は億泰を追う。リビングを飛び出していく姿を見て露伴も後に続く。億泰が走り去っていった先は、トイレだった。
     「なんだよ!下痢なのか?!」
     扉越しに叫んだ露伴に「さいてー!ばーか!」と叫び返す。けれど、今度は申し訳なさそうに「せんせ、はずかしいから、リビングにいてくれよ~」と言えば、連れて露伴も申し訳ないと云わんばかりの顔でリビングへと戻っていった。


     告白し想いを通わせた後のドキドキな雰囲気からのキスは、億泰の生理開始の合図により、先送りとなった。
     「お前、生理痛ひどいのか?」
     「んーん、こんなに痛えのは初めてだぜぇ」
     ソファーで隣同士に座るも、微妙な距離間を保つふたり。
     「やっぱり腹出して寝てたんじゃあないのか?体が冷えちまって痛みが増すって聞いたことがあるぞ」
     「せんせー本当に俺のこと好きなのォ?ガキ扱いし過ぎじゃねえかぁ?」
     大きく開いた脚の腿に肘をつき億泰を指さす露伴に、高校生にもなって、腹を出して寝るような女をよく好きになったもんだと感心する。
     「だから、体を冷やすなよ。なんなら僕が抱きしめて温めてやってもいいんだぜ?」
     「別にそん時ゃ、薬飲めばなんとかなるからいいよ」
     「お前こそ、本当に僕のことが好きなのか甚だ疑問だな」
     本当ならもっと近くに寄り添って、キスしながらお互いの気持ちを言い合うのが恋人らしいのだろう。そして、出来るのならそうしたい気持ちはある。けれど、何故かそういう雰囲気にならないのは自分のせいなのか、それとも露伴のせいなのか。
     「だってよォ、せんせえは自分よりデカい女ってどう思う?」
     普通の男は自分より小さくか弱い女を守りたい、優しくしたいと思うものだと億泰は思っている。平均より背が高いことに何とも思っていなかったが、露伴を好きになった時から、コンプレックスのように感じ始めてしまっていた。
     「僕はデカいとか小さいじゃあない。お前のそばにいたいんだよ」
     まさかこんなにもハートをきゅんきゅんさせるような言葉が露伴の口から出てくるとは思っていなかった。だから、素直に照れてしまうのも悔しいので、「うわぁ、かっこつけ」とからかってみれば、「なんだと?」と照れ隠しがバレバレだと云わんばかりに笑みを浮かべる露伴がいた。




     はっぴーえんど♡








     
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