忘れられたホワイトデー忘れられたホワイトデー
「デート、しない?」
背丈の高い見知らぬ男の子に、私あんどうりんごはナンパをされました
こんなセリフを言われるのは、プワープアイランド以来ですし、何よりも、口説き文句が大正のように古くさいです!
「人違いではありませんか?あと、中学生に声をかけると通報されて、不審者情報として大人の人たちに連絡が一斉送信されるので、止めた方が良いですよ」
「え、覚えてない?え?マ?」
「マですね。存じ上げませんし」
男の子は愕然とした顔で、次第に泣き顔になって来た
彼は、りすセンパイほどではなくとも、私やまぐろくんよりも背が高いのに
私たちよりもメンタルが子どもみたいだなと思いました
何故かスネて、めそめそしている男の子に謎のデジャブを感じ、私はすみやかに立ち去る事はせず、男の子に声かけをした
「商店街なら人が多いし探してる人に会えるかもしれませんよ」
目の前にいるんだけどなーと、依然としてスネてる男の子は、口をとがらせながらも私に同行するようにした
謎の男の子をともなって、商店街をうろついても彼の事を知る人はいなかった
りんごちゃんのお友達?と聞かれることはあったものの、誰も知らないようだ
あの、ささきまぐろくんも彼のことを知らなかった
というより、私がまぐろくんと雑談し始めたら、男の子がスゴくふてくされ、強引に私の腕を引っ張っるので2人して魚屋から強制的に去ることになった
「本当に私の知り合いですか?」
「だからーボクだって言ってるじゃん」
「えええー…知らないですよー」
「とうとう、りんごちゃんも忘れちゃったのかな」
男の子は再び涙目になった
私はいたたまれなくなり、とはいうものの、本当に私が目的で男の子は会いに来たようなので、こうなったら昔も今も私のことをよく知る人に力を借りることにした
そう、おばあちゃんに
ーーー
安藤青果店をカジノに変えようと考えている
安藤あまなつ…私のお婆ちゃんの所に私たちはやって来た
だが、あまなつ婆ちゃんも謎の男の子を知らなかった
それどころか初めて知ったという
私は解けない謎に対して屈服し、床へ思わずひざまづいてしまった
「なんということでしょう」
「いや、あのね、だからさ、りんごちゃん以外は皆知らないんだってば」
「私も知らないよ」
禅問答みたいなやり方に業を煮やした
私は男の子に名前を聞くことにした。よく考えたら彼の名前を知らない
男の子は仕方ないなと口をへの字に曲げてからエコロと名乗った
「エコロ?エコロはこんな、前に来訪してきた人達みたいな姿じゃないですよー」
「自分の身体を手にいれたんだってば」
「りありぃ?」
「マジ」
えええええええ!!と、八百屋どころか魚屋にまで聞こえる絶叫をあげ、私は家族みんなに怒られた
その声に驚いて、仕事着のままのまぐろくんもやって来た。
先ほどまで、焼きさんまの実演販売していたようで、焦げた美味しい香りがただよってくる
「まぐろくんから美味しい香りがして来ます…いただきまーす」
「残念☆売り物だから、焼きさんまは持って来てないんだ。後で買って☆」
「ちえ〜」
「こらーーーーーイチャイチャするなーーーー」
接着剤をはがすかのように、ベリっとエコロ(仮)は私とまぐろくんを引き離した
この焼きもちの焼きようは、いわば、まさに、エコロであります
「やっぱりエコロなんだ」
「だからボクだって言っているじゃん」
「誰?」
まぐろくんは不思議そうに私達を眺める
あ、エコロの存在って皆忘れてしまうんだっけ
彼(?)は、みんなが自分のことを忘れたいから忘れると変なことを言っていた
何故か私は忘れようとしても覚えている
もちろん、元の世界に帰った他の方々のことも私は忘れていない
だけど世界中を回った、りす先輩もまぐろくんは、あの騒動も存在も全てを、ぽっかりと忘れていた
謎すぎる。
エコロや、エコロ団は変な事を言っているが、私は宇宙人あるあるの記憶抹消を施しているのではないかと正直うたがっている
私にはいつでも会えるように、あえて記憶を消していないんじゃないかと推理している
それなら合点がいく
「それにしても、まぐろみたいなポジション…いいな〜」
「友達なら、さん付けくらいしなよ」
「友達じゃないもーん」
「ふーん、そういう意地悪なエコロは私の友達じゃありませーん」
お互いムムムという顔をして牽制する
いくら直ぐに忘れるからって、エコロの私だけと繋がれば良いやという姿勢は、ものすごく気に入りません
成長しないから
私もエコロと友達になって成長したし変われたから
「でも、やっぱりエコロなんだねー、よーく解りました」
「ずっと言っていたのに」
「いや、いくら何でも姿が変わりすぎでわからんわ!!」
私はエコロの真ん中の星のような部分を強くはたく
彼(?)の急所なのだ
「ぐはっ、や、そこ叩くの止めて!それにしてもおかしいな、りんごちゃんのリアクション
美少年のボクにキャーと言うはずなのに」
「よだれを垂らしている美少年なんてイヤですね」
そもそも私は美形とかあまり関心がない
幼なじみのまぐろくんが人や人外が見ると魅了されてしまう凄まじい美しさなのだけど
別に顔が素敵だから、まぐろくんの事が好きというわけではない
別に顔が美しくなくても、私にとってはまぐろくんは大切な幼なじみだし、好きである事は変わらない
それは、りす先輩もエコロも、みんなに対しても同じ気持ちだ
わかってないなと思う
「わかってないなー…」
「え?」
エコロは私のごちた独り言に反応したが何もわかっていないし気付いていない様子
「私が何で呆れているかを答える。来年以降のバレンタインまでの宿題です」
「じゃ、未来に行ってカンニングしちゃお~っと」
「今の時間軸のままだと答えられないから無理だけどね」
「えー?なにそれー」
「少しは考えろ!」
「ぐはっ」
私は再びエコロの星に正拳突きをした
答えがもし解けたら本命チョコをやらんでもない
たぶん答えが解けていないから義理チョコでしょうが
おしまい