語らいn風 怪談白物語について話すヴィユマ……
「ヴィヴィアさん、何を読んでいるんですか?」
「ああ、ユーマくん……珍しいかい?私がこういうの読んでるの……」
「はい、なんだかヴィヴィアさんが普段読んでるようなものとは違うなと思って。表紙も派手だし、中身も薄いですし。」
「ふふ、君は私のことをよく見ているんだね。そうだよ。珍しく、新しい本が入ってね……ゲームのルールブックなんだ。」
「ルールブック?」
「カナイ区は携帯端末がない分、娯楽の幅も狭くなる……紙媒体で手元に置いておけるものは重宝されるんだと思うよ。」
「それに、人と親交を深める手段としても有用的といえるんだ……」
「へえ、どういうゲームなんですか?」
「この本にはゲームがいくつか収録されているけど……その中の1つで、思い立って始めやすそうなものは……怪談白物語かな。」
「怪談白物語?」
「このゲームでは、怪談を100話話すと恐ろしいことが起きると言われているんだ……その99話目を語り終えたところからゲームが始まる。」
「その恐ろしいことを回避するために、ゲームマスターが話す100話目をプレイヤー達が怖くない話に書き換えて、百物語の完成を阻止しようってゲームなんだ。」
「なんだかヴィヴィアさんらしいですね。」
「……私らしい?」
「いや、ただ好きそうだなって……」
「そのゲーム、勝ち負けとかはあるんですか?」
「ゲームマスターが話す怪談には、10個のキーワードが散りばめられていて……その単語を書き換えればいい。ただそれだけなんだ。」
「全て書き換えられたらプレイヤーの勝ち。……書き換えられなかった場合はその話が怖かったかを話し合って、怖かったらゲームマスターの勝ち、怖くなかったら引き分け。」
「もしゲームマスターが勝ってしまったら……一体どうなってしまうんだろうね。」
「ヴィヴィアさんが言うと怖さが増しますね……」
「こう聞いていると、たしかに遊びやすそうなゲームですね。」
「この本の中で、怪談白物語のルールが載っているのは1ページだけなのもその良さを引き立てているのかもしれないよ……」
「い、1ページ!?」
「準備はサイコロとメモ用紙だけで……プレイヤーは役職を決めることもできる。いい彩りになりそうだよね。」
「……ヴィヴィアさん、もしかして遊んでみたいんですか?事務所のみんなで。」
「……どうしてそう思ったのかな?」
「だって、怪談白物語が書いてあるページは1ページしかないんですよね?ヴィヴィアさんはさっき何度もページをめくっていたじゃないですか。それも、何度もページを行ったり来たりして。それなのにルールが全部頭に入ってるってことは……」
「もう既に本は読み終えてて、ヴィヴィアさんはその中からみんなでも覚えやすくて遊べそうなゲームを選んでくれてたんじゃないかなって」
「そう、ユーマ君は考えたんだね……」
「違うんですか?」
「いや、私は君の推理を否定しないよ。そう考えたのなら、そう思ってくれて構わない……」
(なんだか煮え切らないなあ……)
「もしも遊ぶんだとしたら……このゲームの性質上、怪談があらぬ方向に破綻することは避けられない。誰が怪談を語るかは、慎重に選んだほうがいいかもしれないね……」
(ヴィヴィアさんは多分、プレイヤー側をやりたいんだろうな……折角なら機会があればみんなを誘ってみてもいいかな、って思ったりもした。)