狂い咲く花は風を乱吹く9ハスティナープル、古代クル国の首都。
盲目の王、ドゥリーヨダナの父、ドゥリータシュトラが治めていた国。
その首都で藤丸立香は旅人としてこの国の情報と状況を確認していた。
この特異点であるハスティナープルでは五王子が行政を行なっているらしい。
カウラヴァとパンダヴァの戦の事を聞くが、誰も知らず、カウラヴァは大人しく五王子が長男で、半神のユディシュテラに王権は譲られ、前王は平和に妻と共に隠居生活をしているらしい。
神の子達は神々と共に、人間(民)を管理しているらしい。
神々が定めた「正しくない人間」を除去し、「正しい人間」を選定して祝福している。
「…なんか、インド異聞帯とオリンポスを思い出すね」
レイシフトして最初に見た神々が直に人間を裁くあの行いを思い出す。
神のアルジュナが異聞帯で何回も何回も世界を破壊しては新しく作るサイクルをおもいだした。
ここでも同じような事が起こっているという事だろうか?
アルジュナオルタの事を思い出し、ビーマは胸を痛める。
全てを抱えてしまった可愛い自慢の弟の姿。あの存在の可能性のイフにビーマは驚き、このような姿になる前に止められなかった異聞帯での己を許せなかった。
ここにも、弟のように兄弟達の中で全てを抱える事になった者がいるのだろうか
首都では自分の顔が認識されるであろうと、霊体化しているビーマは静かに拳を握った。
「マスター、もうここでの情報は十分だろう。…そろそろ敵の本拠地(宮殿)の方へ行こうぜ」
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「わー、すごい規模だね」
白く美しい王宮はビーマが覚えていたものと全く同じで、懐かしさが胸いっぱいになる。
「しかし、警備が全くなってねぇな」
本来なら者には何十人もの門番が配置されている筈なのだが、誰もいなかった。
「これじゃ侵入者を歓迎してる見たいじゃねぇか」
「返って、チャンスなのでは?あ、でも罠かも」
マスターの提案に答えようとした途端に、恐ろしい人物が近づいてきたのを二人は気がつかなかった。
「まぁ、そうだね。もし侵入者が来ればそれに気がついた神から呪いを受けて即死だからね」
ニコニコと笑う高貴な装いをした肌黒の男が現れた。黒というよりも深海のような暗い青の肌。
「あなたは…?」
「…クリシュナ?!」
「え?!あなたが?!!」
ビーマの言葉に藤丸立香は驚く。
「…そこにいるのは、ああ、なんだビーマか。隠れないで出てきよ。」
クリシュナに霊体化を見破られ、ビーマは大人しく姿を見せた。
「やぁ、ビーマ。久しぶりだね。…アルジュナはいないのかい?はーそいつは残念だ」
クリシュナの言葉にビーマは口を強く閉じた。ビーマの様子に心配する藤丸立香はクリシュナの方を静かに見る。
「それで?宮殿に入りたいのかな君達?」
正直、ここからの記憶はあやふやだった。
「ふーん、構わないさ。『何もない』けど、入ってもいいよ」
何故なら藤丸立香とビーマはこの先見た光景に圧倒されたのだ
「何だよ、これ…」
本当に「何もなかった」のだから
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「…お、カルナじゃねぇか!」
「む、アシュヴァッターマン。風呂帰りか。」
先ほど他のサーヴァント達と共にシミュレーションで鍛錬し、大浴場から帰る途中だったカウラヴァの戦士、アシュヴァッターマン。
「お前は、あー、何だ?それ?」
「ああ、先ほどガーネシャと共にげーむをしていた。それに登場するますこっときゃらだ。愛い。」
「へ、へぇ〜相変わらずあの方とは仲良しだなぁ、お前等」
「げーむは一時間までと言いつけを破った事に、パールヴァティから今は説教されている」
「あ〜」
その内容を詳しく脳内で再生できる自分の恐るべき想像力やいかに。アシュヴァッターマンはそれらを霧散するべくして、頭を振った。
「ということは今暇か?今から食堂行くんだが、どうだ?」
「ん。その提案に乗ろう」
「その後は管制室にでも行って、ドゥリーヨダナの旦那の様子を見ようぜ」
まぁ心配はないと思うけどな!