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    やきが氏

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    やきが氏

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    閑話4



    「なにそれ尊すぎて死んじゃいそう。
    ありがとう〜!
    可愛いなぁ!世界でいちばん可愛いよ〜スイちゃん!
    尊さであるじ胸が苦しい〜!」

    スライムから渡された草(たぶん…花?)を耳元の髪にさしてムコーダがキャッキャとスライムを高い高いしている。
    デレデレの顔の男が水が球体になったようなスライムをあっちこっちへ持ち上げている姿は滑稽だが…………
    「ムコーダさん、いま、なんて言ったんだ?」

    ラーシュは手に持っていた石(ちっさいドラゴンと石積み遊びをさせられていた)をポロ…と取り落とした。
    キュッキュ、キュイキュイ!とドラゴンがパタパタ羽根を動かし、抗議なのか笑いなのか分からない形に口を開けて鳴く。
    「あ、ごめんごめんドラちゃん。
    次俺の番だね。」
    スライムを腕に抱いたままムコーダがラーシュの隣にしゃがみ、コツン、と石の塔にまた1段石を積む。
    「えと、ラーシュさん、なんでしたっけ。
    なんか聞かれたような…」
    「ぁ、ああ、さっきスライムに草を渡された時、尊いって言ってたか?」
    「あはは、冷静に聞き返されると恥ずかしいな。
    いや、だって、うちのスイたん可愛すぎてこの可愛さが尊いんですよねぇ〜。」

    ……そんな表現の仕方があるのか…。
    いや、それは正しいのか?

    「尊い…か。
    それはその、スライムの可愛さにあてがうのに適切な表現だろうか。」
    「あ、なんです?ラーシュさん、スイはスライムですけどすっごく有能なんですからね!」
    「あ、いや、言葉が悪かったな。すまない。
    バカにした訳では無いんだ。
    なんというか……尊いという言葉を普段使いしているのが斬新でな。
    その、なんというか、その表現はもっと希少なものに使うものかと思っていたもんで。」
    「希少。
    希少ですよ!
    俺に花をくれるスライムはこの世でスイだけですもん。
    ダンジョンのスライムはすーぐ俺の事溶かそうとしてくるし。
    俺をこんなに嬉しい気持ちにしてくれるスライムは尊いですから希少ですよ。
    それに尊さなんて人それぞれですって。
    俺は毎回捨ててましたけどヨハンのおっさんはフェルの抜け毛が多分尊いと思いますし。」
    「フェンリルの、体毛を捨ててたのかっ…!?」
    「えっ、だってばっちいんですよ!?汚れてるし、ブラシがけしたあとの毛なんて。
    馬だってブラシについた毛捨ててましたよね!?」
    「いや、いやいや、フェンリルだぞ!?
    正真正銘の希少な……それこそ尊いって表現が一般的な存在じゃないか?」
    「でもフェルも自分の 抜け毛金に変えるの嫌がりますし、まぁ、確かにフェンリルもドラゴンも希少ですよ。
    他に見た事ありませんし。
    でもそういう世の中にとっての尊さと、俺個人がときめく尊さは別というか、まぁ飯の好みと似たようなことじゃないですかね。」

    ラーシュはピクシードラゴンに促されたのでまた足元の石の塔に小石をひとつ積んだ。

    赤い鱗のピクシードラゴンは何がそんなに興味深いのかパタパタと周りを飛び回って次にどこへ積もうか思案しているような素振りだった。
    ムコーダの方に向かってキュッキュイッと鳴く。
    正確にはムコーダではなくスライムに鳴いたようだった。
    スライムは音を発さないのでラーシュからしたらポチャン、と震えたようにしか見えなかったが、ムコーダが「スイもやりたいなら一緒に積む?」と言ったのでそういう会話をしていたのだろう。

    にゅう、とムコーダの腕の中のスライムから透明な触手が伸び、ラーシュの足元に集めてあった小石をひとつ拾ってコツン、と塔に積み上げた。
    「うん、いいんじゃないか?
    もう結構高くつめたね。
    こういうの久々だなー。
    そして早くお肉出来たらいいねぇー。今日はピカタかトンカツかどっちにしよっか?」
    キュッキュ鳴くドラゴンと、無言で震えるスライムに、まるで小さな子供に話すみたいな口調で話しかけている。
    事実、ムコーダには2匹の声が聞こえているのだろうが、ラーシュには聞こえないので不思議な光景に映る。
    そして…
    『暇だのぉ〜…主殿、わしもその小石を積み上げる遊びに参加してもいいかのぉ。』
    これまでラーシュがかたくなに振り向かなかった方向から声がして、ムコーダの方にヌゥ、と大きな顔が寄せられた。
    「いや無理あるでしょ。
    そもそもゴン爺こんなちっちゃな石どうやって持つの。」
    『そうじゃのう…例えばこうしたらあるいは…』
    ムコーダから視線を外し、大きな胴体をズイとラーシュの方へと向ける。
    ヒヤッと汗がにじむ。
    大きなドラゴンはラーシュの足元に集めてある小石の方へと片方の前足を伸ばし、鉈のような大きく鋭い爪を一本(一本という単位でいいかどうか分からないが)持ち上げ、的確な狙いで一粒の小石の上へと下ろした。
    ガキンッと硬い音がして爪の下の小石が弾け飛んだ。
    「いでっ」
    弾け飛んだ欠片がまぁまぁな勢いで太ももに当たり、ラーシュは軽く飛び跳ねた。
    「あっぶな!!ゴン爺!まさか小石を爪で突き刺そうとした!!??」
    『無理じゃったか』
    「いやいや無理でしょ!石に爪が刺さるとか聞いたことないから!」
    『もう少し大きい石ならこれで持ち上がるんじゃがなぁ。……馬車くらいの石なら』
    「馬車のデカさはもうそれ石って言わないよ…。
    ラーシュさん大丈夫でした?当たってましたよね。」
    「ぁ、ああ、別になんともない。
    しかし、すごいな…本当に…どうなってるんだ…爪…」
    一本軽く振っただけで小石を砕く強度の爪が四つ足全てに備わっている。
    正直、逃げたかったが動けなかったというのが現実だ。
    「ゴン爺、ちっちゃい石でも目とかに当たったら危ないから街中で石に爪たてんの禁止!」
    そんなドラゴンに簡単に小言を言えるムコーダも一体なんなんだとラーシュは頭が痛くなる思いだ。
    『スマンスマン、どうしても暇でのぅ。
    …………そこの人間もすまんかったのぅ』
    急にドラゴンの曲がった角がこちらを向いたので、何も当たっていないのにラーシュはまた飛び跳ねた。
    「え、オレ??いや、え?」
    『謝罪を渋って食事を肉抜きにされるのは二度とごめんじゃからな。
    主殿に苦言を貰った時は即座に行動に移すことにしとる。』
    「ラーシュさんが怪我なんかしてたら昼飯は食パンだけになってたかもな」
    『そ、それだけは二度とないよう避けたいでな…』

    どんだけ胃袋掴まれてんだよ…
    いや、逆か、こんな見たことない生き物の胃袋掴むムコーダさんの料理の能力が特殊なのか…

    『む、なんじゃ。
    大きさの問題じゃろうそれは。
    儂もそんな砂利ではなくて足の腹を付けられるほどの岩塊なら積み上げられるんじゃぞ。』
    自分の周りをキュッキュ言いながら飛び回る小竜に向かって古龍は髭を揺らして口を開けた。

    怖……笑ったのかもしれんが怖…

    「すげぇなぁ…、正直ビビった」
    ムコーダの隣に移動し、ラーシュは小さい声でそう言う。
    「なんかすみません。」
    「家の中壊れたりしたいのか?」
    「……そういやそういうことはあまりないな。
    部屋を移動する時狭そうにはしてますけどね。
    主に庭とか、いちばん広い庭に面した部屋とかに居ますし、あんまりウロウロもしてないので気にしたこと無かったですね。
    あ、ふろ場くらいかな。毎日行くのは。」
    「そういや従魔のために風呂の拡張したんだったか。」
    「ええ。
    住宅工事はドワーフの棟梁に任せ切りでしたが、速やかに済むので助かります。
    ……酒が入ると厄介ですけどね。」
    「間違いなく全てのドワーフが酒の存在に弱いよな。歯止めが効かんというか。」
    「本当にそうです。
    俺も酒は好きですけど、強い酒が飲みたいってわけじゃないからなぁ。
    つられて飲むと次の日までそこら辺で寝てることになっちゃって参りますよ。
    ところで」
    「ん?」
    「何か尊いが当てはまるものでもあるんですか?」
    「え?」
    「いやなんか、変な煮え切らない聞き方だったもんで。」
    「いや、うんまぁ、人に言うような事じゃないんだが。
    ここのところ、なんというか…どこに整頓していいかわからん感情を覚えたもんでな。
    ムコーダさんがさっきスライムに尊いと言った時に、そういう言葉だともしかしたら当てはまるかなとも思ったんだよ。」
    「……スイちゃん、お肉まだ出来ないみたいだから
    このお菓子ドラちゃんやゴン爺と一緒に食べて石積みちょっとおやすみしない?」
    ムコーダが急に腕の中のスライムを地面に下ろしてそう言い、アイテムボックスからバラしたクッキーやスナック菓子を取り出した。
    「うんうん。鼻の前に持っていったらフェルおじちゃんも起きると思うよ。
    仲良くね。」
    ムコーダが渡したまあまあな量のお菓子をポヨンポヨン抱えて、スライムは震えながら古竜の脇を通り、ずっと目を閉じて伏せているフェンリルの所へとはねて行く。
    赤い小竜も鳴きながらパタパタと飛んでいく。
    とはいえ、すぐ目の前ではあるのだが。
    「それで!?」
    「ん?」
    「いやいや、ピンと来ましたよ。何が尊かったんです!?
    女の子関連の話ですねっ?」
    やや楽しそうにムコーダはラーシュにもスティッククッキーを差し出しながら聞いてくる。
    「…変な話になるからあんまり聞かせたくはないんだが…」
    「そんな、四つ足と子持ち円満夫婦の中で生活する可哀想な独身男なんて潤った話しどころか関わる独身女性は10歳以下のお嬢ちゃんか動物っていう状況なんですよ?
    変な話なんていつでも来いなんですが!?」
    「そ、そうか…じゃあちょっと声抑え気味に言うが…
    その…むちゃくちゃ見た目が好みの女がいる店に行っててな。」
    「ぐぅッ」
    「どうした。」
    「いえ、続けてください。見た目が好みの女の子に巡り会う機会すらない俺がちょっと痛手を負っただけなんで。」
    「…うん、まぁ、アレコレはあんまし上手くないが、それもまた可愛いというか、とにかく全体的に気に入ってるんだ。」
    「うらやまァ…その子が尊いってことですか?」
    「いやそうじゃない。
    それだけだったらただ単に好みの女に触りに行ってるだけだからな。」
    「あ、そうか。」
    「で、それとは別に、…なんつーかそっちは遊び相手なんだが…正しく見た目だけが好きな人が居てだな。」
    「2人目登場…」
    「そっちは単にほんとに顔だけが好きで、なんつーか正しく遊び相手だ。
    で、その、2人がなんの偶然か一緒に話をする機会があったらしくてな。
    その話を聞いた時の気持ちがこれまで感じたことの無い感情だったんでもやついてたんだ。」
    「それが尊いと?」
    「…ふたりが仲良く茶飲みしたって話を聞いた時に、綺麗な見た目の……というか俺の好みの人間が2人楽しそうにしてるところを想像しちまったら妙に…なんと言ったらいいんだか…その場面見たかったなぁっていう感情に支配されてしまってな。」
    「挟まれたかったって事ですか?」
    「逆だ。
    そこにオレが必要ないというか…
    オレが入ることで景観が崩れるというか。
    それを尊いと言っていいかどうかわからんが、その現場を見たかったという気持ちだけが残ってな…。
    自分でも正直、意味がわからん。」
    「それは、正しい意味での【尊い】ですね!」
    「正しい…?」
    「侵害したくないほど素晴らしいって思ったんですよね?その場面。
    …あ、見てないんですっけ?」
    「侵害したくない……うんまぁ、言い換えればそういえなくもないのか?
    ……」
    そこでラーシュはいっそう声を落としてムコーダの方に向かってつぶやく。
    「どちらとも肉体関係持っててもそう思うか?
    散々侵害してるんだが?
    まぁ、金は払ってるが…」
    そのつぶやきを聞いたムコーダは目も口も開けて眉をはねあげる。
    「エッロ……、さんざん侵害してるとかいう言い方めっちゃいやらしいですね!
    俺も侵害したい……
    …金はあるのになんで…」
    「わははっ!
    言ってみてぇなそんな言葉!
    オレはカレーリナでは利用しないが、店の紹介はできるぞ。」
    「…ありがたいんですけど、その……デカい従魔複数連れてる上に、話の流れで豪邸買い取ることになっちゃって…従業員も二家族雇っちゃってるし、俺の存在それなりに知られてますよね…この街で。」
    「そりゃまそうだ。
    ランベルト商会に従魔連れて出入りしてるとこもさんざ見られてるしな。
    ムコーダさん有名人だぜ?」
    「……俺女の人にあんまり強気で出れないんですよね。
    弱いっつーか、
    そんで、ラーシュさんも知ってるとは思いますけど、俺の今のこの冒険者ランクの大元はフェルによるところが大きいんですよね。
    俺自身も頑張ってはいますけど、個人的な能力は結構ヘナチョコなんです。
    もし女の人のいる店に行ったとして、フェルを連れて入れないですし、そんなとこにまで言葉の通じる従魔連れてく気もありませんし。
    スイやドラちゃんにそんなとこ入るの見せられないし。
    俺の、なんつーか財力悪用しようって人とかに目ぇ付けられたら俺だけじゃ対処出来ないんで、そういう素敵な楽園に金払うなら違う場所じゃなきゃいけない気がしてます。」
    「なるほど。
    すまん、考えてもみなかった。
    それはおそらくその通りだと思う。
    少なくともカレーリナではやめといた方が良さそうだ。
    そのうち家なんかにも売り込みに来る厚かましいやつが出てきそうだしな。」
    「あ〜…それは一番困る展開だな〜。
    小さな子もいるわけだし。」
    「結構不便してるんだな。」
    「ええ。ほんとに。
    ほんっとに…
    そりゃ毎日やることいっぱいですし、一日三回大量の飯用意しなきゃだし、すーーーぐダンジョン行こうっていう奴らを制御しなきゃいけないしで忙しいんですけど。
    ……はぁ、でも今不用意に女の子に触ったりしたら反射で好きになっちゃうかもしんないのもちょっと怖いなぁ。」
    「なんだそりゃ」
    「まじでそのくらい動物と魔獣としか触れ合ってないんですって。
    それこそ、相手がどんな子だろうが女体尊い〜ってなりそうな気すらしますよ。」
    「なるほど。
    …どうしたもんかねぇ。」
    「あ、ところで食べませんか?お菓子。」
    「ああ、もらおう。」
    「……従魔の飯めっちゃ用意しまくってるんで実はかなり料理の腕というか…スキルが上がってるんですけどね。俺。
    食わせる先が結局従魔っていう…
    いや、別にいいんですけど…みんな喜んでるし。」
    「うん、いや…美味いぜ、この菓子も。」
    切なそうに眉を下げるムコーダになんと声をかけたものか困ってラーシュは一応そう言ってみた。
    「うん、俺もそう思います。」
    パタパタと羽音がし、ラーシュの肩口にとしっと軽いものが降りた。
    小竜の羽根が畳まれる気配がし、キュキュッという鳴き声が耳元にする。
    首を捻ってそちらを見れば、ラーシュの肩からムコーダの方を見て小さい頭をくりくり動かしながら何やら喋っているのがわかる。

    ああ、なんだ。
    オレの肩やら頭に止まるのはムコーダさんと喋るのにちょうどいい高さだからか。

    「え?何言ってるのプリンはここではダーメ。家に帰ってからご飯の時にね。」
    どうやら他の菓子をねだったようだったがあっさりと却下。
    キュキュッと不満そうな短い声を上げている。
    「お菓子ばっかだと体に悪いからダメなの。
    それにココじゃ皿も無いしひっくり返せないじゃん。
    仮にあったとしてもギルドの前じゃプリンは出さないからね。」

    キュイ……と言葉が聞き取れなくともわかるくらいガッカリした小竜が少し可哀想だったのでラーシュは手の中にあったクッキーを一本差し出した。
    「何を要求してたかはよく分からなかったが、食うか??
    それともこれじゃないのが良かったならこれはいらないか。」
    何も鳴かないまま、小竜は首を少し傾げてラーシュの顔と差し出されたクッキーを見て、
    とてつもなく小さな両手のひらでそれを掴んだ。
    「お、食うのか。」
    ラーシュの指からそれを掴み取り、カシャッと音を立てて噛み付く。
    ポロポロと崩れたクッキー屑が小竜の腕や、ラーシュの肩に掴まる後ろ足にこぼれる。
    さっき自分が一口で食べたものを目の前のドラゴンがもぐもぐ何口にも分けて食べるのは少し可愛いと思う。
    それに
    「手が器用なんだな。
    …ん?前足と言うべきなのか?」
    キュフッと、少しクッキー屑を撒き散らしながら小竜がラーシュの方を見上げて何事か鳴いた。
    「だいぶこぼれてるぜ。
    すまないがオレはなんて言ってるのか聞き取れないんだ。」
    足にこぼれた屑を払ってやりながら手の中にあったもうひとつを差し出すと、小竜は手に残っていた欠片を急いで口へ押し込み、差し出された二本目を受け取る。
    「…小さい腹のどこにそんなに入るんだ?
    不思議なもんだな。」
    グキュキュッ、キュイッという鼻息混じりの返答があったが、やはり何を言っているのかわかる訳では無い。
    「まあ、ドラゴンだしな。」
    「イヤ、奇跡的に会話になってるんですけど、凄いですね。」
    「そうなのか?」
    「前足でも手でもどっちでもいいそうですよ。
    ほとんど飛んでの移動ですしね。
    それに確かにドラちゃん器用だし。」
    「地面を走ったりはしないんだな。」
    「……そういやあんまり見たことないかも。
    俺が料理してるの覗きに来る時も飛んでるなぁ。
    でも階段の手すり滑り降りたりゴン爺の上に乗ったりはするし、単に飛んだ方が早いからそうしてるのかな?
    スイとはよく庭で遊んでくれてるし。」
    ムコーダがそう言うと肩の小竜は腕組みのような格好をして何事か鳴きながら首をくりくりひねる。
    そしてラーシュの首に寄りかかってムコーダの方へ後ろ足の先を見せた。
    「ああなるほどね。
    確かに言われてみればそうだな。
    ごめんごめん。そういう訳じゃないよ。
    それにドラちゃんは飛ぶ速さがすごいんだからおっきい足がついてたら逆に不便だもんな。」
    ギュキュッ
    分かればいいんだと言わんばかりの鳴き声を上げて、しゅんっと小竜は肩から飛び立った。

    「なんだって?」
    「家の庭とか森の中は草が生えてるから多少地面を歩いてもいいけど、街中とか土が露出してるとこなんかは爪に土が詰まって気持ち悪いから嫌なんだそうです。」
    「なるほどな」
    「それと後ろ足も鳥みたいに枝なんかに降りる時に掴まないといけないからゴン爺ほど固くないらしいですね。
    確かにドラちゃんに掴まれても…痛くないわけじゃないですけど、ダメージ受けるほどではないですもんね。
    ダンジョンの中とかでは魔獣の腹に穴あけるほどの速さで飛ぶんでそうは言えませんが…」
    「そういや前に見せてもらった獲物凄かったもんな。
    …菓子の屑が散ってたから咄嗟に払っちまったけど…
    触ってよかったのかね。」
    「気にしてないと思いますけど?
    そりゃ不用意に触られるのは嫌いだと思いますけど、そもそも自分から肩に止まったわけですし。」
    「そういえばそうか。」
    「ドラちゃんが嫌いなのは基本的にエルランドさんだけですよ。」
    「まぁ、ありゃ仕方ねぇよな。
    気持ち悪いしなぁ。」
    「スイもドラちゃんも結構人には近づきますもんね。
    街の子供とも仲良しだし、ギルドの職員…まぁ主に解体してくれる人たちには話しかけてますよ。
    聞こえはしないんですけどね。」
    「そうなんだな。」
    「フェルは食い物以外には案外我関せずなんで…というか誰に対しても偉そうなんでちょっと違いますけどね。
    あとゴン爺は…まぁ、ああいう存在なんで。」
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