未亡人スチャン01「まあ、寂しいは寂しいよ」 俺の問いかけに、上から下まで黒い服を身に纏った男は、ややあってから呟いた。フェンスにもたれ、煙草をふかしながら、彼の雰囲気にまったく似合わない古びた麦わら帽子を被り、どこか遠くを見ている。


夕日の光。頬が明るく赤く燃えていた。暗い色の瞳は、つば下の影に隠れてよく見えない。「あいつが死んでから三年以上経つけど、それでも寂しい。まあ、慣れたけどね」彼は唇で煙草を柔く挟むと肺いっぱいにふかし、自嘲的な溜息と共にゆっくり吐き出した。

彼にならって、自分も隣でフェンスにもたれてみる。ひまわりの海。突き抜ける赤い光。風に揺れるオレンジ色。陰りに青々とみえる茎。夜と影の住民に見える彼が種をまき、育て、作り出した景色だとは到底思えなかった。

無題2「セブと離婚したほうがいいのかもしれない」
呂律いささか怪しいコニーが、カウンターに突っ伏しながら悲嘆に暮れた声で呟く。ルーカスはアホだ。アホなので、自分が気分よく飲んで食って喋っていたために、隣の友人が珍しく次々とグラスを空けていたことにも気が付かない。

突拍子もない一言に、ルーカスは噎せて口の中のビールを噴き出した。見事な霧状。カウンターの向こう、ガスが笑顔のまま額に青筋を立てて布巾を手渡してきた。ルーカスは咳き込みながら慌てて顔を拭き、それからテーブルを拭く。ガスは小鼻をひくひくさせた。

まあ、彼はアホなのでそういった無言の訴えの類はまるで気が付かない。彼の頭の中は、隣人の一言でいっぱいだ。「……いや、なんで！？」カウンターに突っ伏していたコニーがちらりとルーカスを覗き上げる。酒で据わった目と赤くなった顔には影がかかっていて、アホでもわかるほど沈み込んでいた。

無題1　セバスチャンは到底許容できないある情報を得た。彼の夫であるコニーを、昔、あのルーカスが抱いたことがあるというものだ。セバスチャンは男の抱き方を知らない。そもそも、男を好きになったのはコニーがはじめてだ。まったく勝手を知らないために、任せられることは全てコニーに任せきりできた。

　コニーに身を委ねるばかりだったセバスチャンは、彼を抱いたことはなかった。セバスチャンはルーカスが嫌いだ。心底嫌いだ。パーソナルスペースという概念を持たず、図々しくてデリカシーの欠片もない癖に、奇妙にも人々の中に溶け込んで、しれっと最も望ましい結果を手にしている。それがあの男だ。

　他の誰かが、ということであれば気にもとめなかっただろう。誰にでも過去はある。ただ、ルーカスだ。よりにもよってルーカスだ。心底見下している男が、愛する人の知らぬ一面を知っていると思うと、気分が悪くなった。

弊谷の農家コニー（主セバの農家）

ゲイ　農場を継いだ方
釣り、鉱山、花を担当
育ちがよく高学歴ハイスペ好青年然としているが、家庭環境に難ありで色々と抱え込んでいる。ルアウでは『なんか面白いことしようと考えるけど結局ゴールド品質の手堅い野菜を持って行く』タイプ。元joja法務部弁護士。jojaが社員を使い潰したりあくどい商売ができるよう、法的サポートを提供していた。踏みそうになった虫を何の気なしに避けるぐらいのつもりで、社内で窮地に陥っていたルーカスを法的に助けてあげたのをきっかけに彼と知り合う。コニーは愛称で、本名はコーネリアス・ブラウン。

大嫌いなもの
イカ イカフライ ドワーフの巻物各種 粘土
嫌いなもの
ポロネギ 葉タマネギ 海の泡プリン イカスミのラビオリ