未亡人スチャン01「まあ、寂しいは寂しいよ」 俺の問いかけに、上から下まで黒い服を身に纏った男は、ややあってから呟いた。フェンスにもたれ、煙草をふかしながら、彼の雰囲気にまったく似合わない古びた麦わら帽子を被り、どこか遠くを見ている。


夕日の光。頬が明るく赤く燃えていた。暗い色の瞳は、つば下の影に隠れてよく見えない。「あいつが死んでから三年以上経つけど、それでも寂しい。まあ、慣れたけどね」彼は唇で煙草を柔く挟むと肺いっぱいにふかし、自嘲的な溜息と共にゆっくり吐き出した。

彼にならって、自分も隣でフェンスにもたれてみる。ひまわりの海。突き抜ける赤い光。風に揺れるオレンジ色。陰りに青々とみえる茎。夜と影の住民に見える彼が種をまき、育て、作り出した景色だとは到底思えなかった。

俺はもう一つ質問をする。今度は考える間もなく即答だった。「幸せだよ」空の奥に浮き上がりはじめた夜に溶けて還ってしまいそうな、自然で穏やかな声だった。図星をさされ、思わず虚勢を張って思わずそう答えた……そんな風に聞こえてくれれば良かったのに。

「慣れてきたからこそ思うんだけどさ、これで良かったような気がするんだ」逆じゃなくて良かった。彼は言う。死ぬ方じゃなくて死なれる方で良かった。紫煙が風に消える。「だって、あいつの気持ちがオレの死んだ後も続いたかなんて、わからないだろ」

「オレが死んだしばらく後に、別の誰かと再婚して。オレのいた場所が全部そいつのものになって。オレは思い出されるだけの男になって、そしていつか、思い出されなくもなるんだ」彼の切羽詰まったような饒舌さは、奇妙な実感を伴っている。

「オレが死んだあとのあいつの気持ちは保証できないけど、オレはオレの気持ちを保証できるから」だから、誰にもあいつの居場所を奪われなくて済む。その呟きが、どうしようもないくらい明確な答えだった。拒まれた花束が、俺の手に強く握られたまま、行く宛もなく死にかけている。