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    saiha(SDV)

    SDV関係のあれやそれや

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    saiha(SDV)

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    ついったに連投してたやつ

    無題1 セバスチャンは到底許容できないある情報を得た。彼の夫であるコニーを、昔、あのルーカスが抱いたことがあるというものだ。セバスチャンは男の抱き方を知らない。そもそも、男を好きになったのはコニーがはじめてだ。まったく勝手を知らないために、任せられることは全てコニーに任せきりできた。

     コニーに身を委ねるばかりだったセバスチャンは、彼を抱いたことはなかった。セバスチャンはルーカスが嫌いだ。心底嫌いだ。パーソナルスペースという概念を持たず、図々しくてデリカシーの欠片もない癖に、奇妙にも人々の中に溶け込んで、しれっと最も望ましい結果を手にしている。それがあの男だ。

     他の誰かが、ということであれば気にもとめなかっただろう。誰にでも過去はある。ただ、ルーカスだ。よりにもよってルーカスだ。心底見下している男が、愛する人の知らぬ一面を知っていると思うと、気分が悪くなった。

     それは対抗心のようなものだった。自分の方がずっとコニーのことをわかっているし知っている、というような。気後れと緊張を蹴り飛ばして、「あのさ」と話を切り出させるだけの熱量を持った感情。

    本棚を整頓しながら、コニーが「うん?」と先を促す。口に溜まったぬるい唾を一度飲み込む。内心威勢よくはじめたはずが、どういうわけか、男の声を聞くとみるみる自信が萎んだ。拒絶されたらどうする? ルーカスはよくて自分は駄目、そんな構図ができあがってしまったら?

     もごもごと口を開く。恐怖が喉に膜を張って、捉えて引き戻そうとしたようなはっきりしない声が出た。「嫌だったらいいんだけど……夜、オレがお前のこと抱いてみてもいい?」

     どさどさどさと大量の物が落ちる音がした。何事だ。俯いていた顔も、思わず音の方に弾かれたように向けていた。本棚の傍ら、一体全体何がどうなったのか、本の雪崩に巻き込まれたらしいコニーが突っ立っている。

     顔を赤くして硬直し、セバスチャンを凝視しながら口を間抜けに開いている。ややあった。ほんの少しの間だったが、セバスチャンにとっては永遠の沈黙のように思えた。顔の赤らみは、今やセバスチャンに伝染していた。「ええと」コニーが視線をそらして、首の後ろを手で擦る。「よろこんで……?」
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