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    saiha(SDV)

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    saiha(SDV)

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    ついったに連投してたやつ

    無題2「セブと離婚したほうがいいのかもしれない」
    呂律いささか怪しいコニーが、カウンターに突っ伏しながら悲嘆に暮れた声で呟く。ルーカスはアホだ。アホなので、自分が気分よく飲んで食って喋っていたために、隣の友人が珍しく次々とグラスを空けていたことにも気が付かない。

    突拍子もない一言に、ルーカスは噎せて口の中のビールを噴き出した。見事な霧状。カウンターの向こう、ガスが笑顔のまま額に青筋を立てて布巾を手渡してきた。ルーカスは咳き込みながら慌てて顔を拭き、それからテーブルを拭く。ガスは小鼻をひくひくさせた。

    まあ、彼はアホなのでそういった無言の訴えの類はまるで気が付かない。彼の頭の中は、隣人の一言でいっぱいだ。「……いや、なんで!?」カウンターに突っ伏していたコニーがちらりとルーカスを覗き上げる。酒で据わった目と赤くなった顔には影がかかっていて、アホでもわかるほど沈み込んでいた。

    アホのルーカスの頭は混乱していたが、実際のところ、カウンターで聞いていたガスも混乱していた。コニーがセバスチャンを溺愛しているのは傍目に明らかで、町民全員の共通認識だ。それが離婚だって? いや、まさか。

    コニーはふらふら不安定に揺れながら頭を持ち上げる。氷だけ残ったグラスをからから弄び、結露が作った水たまりをぼんやり眺めている。「俺はセブの人生の邪魔をしている」「ん、ん~……?」「この町を出て、都市にでるのがあいつの夢だったのに……俺がこの町に縛り付けているんだ」

    グラスを持ち上げ、ガスに掲げる。「同じものをもう一杯」ガスは眉を下げ、首を横に振った。「今日はこの辺りにしておいた方がいいよコニーさん。また今度、気持ちよく飲みに来ておくれよ。良い酒を仕入れておくからさ」

    泥酔していても、コニーはある種の彼らしさを捨てられないらしい。「……わかりました。そうします」コニーは未練がましい目でグラスを見たあと、おずおず代金と共にそれを差し出す。そしてその手と同じ手で、極々自然に、そうするのがさも当然であるかのように、斜め前のジョッキを掴んだ。

    半分近く残っていたビールを、頭を後ろに反らして喉を鳴らしながら豪快に飲み干していく。あまりに自然すぎて呆気にとられていたが、ルーカスはようやく我に返った。「おいそれオレの酒ぇっ!?」テーブルにジョッキの底が叩き付けられたときには、もう黄金色の液体は一滴も残っていなかった。

    コニーは俯きながら喉奥でくつくつ笑う。笑って、笑って、徐々に笑い声が細く弱くなる。ずるずると崩れて、彼はまたカウンターに突っ伏してしまった。「セブは、本当は俺を愛してなんかいないんだ……」細い笑い声に鼻をすする音が混ざる。

    なんだこれマジめんどくせえ!? と、ルーカスは思った。ルーカスはアホだ。アホなので、思ったことをそのまま口に出していた。しかし悲しいかな、ルーカスの言葉はコニーの耳に届かない。「そもそもセブはストレートだし、俺のことを好きになるわけがないんだ」

    「セブは家を出たがってたから……そこに漬け込んで結婚させたも同然だ。夢を妥協させたんだよ。彼のことを考えたら離婚するべきなのに……手放したくなくて、出来なくて、とうとう3年も経ってしまった……」

    「いやいいんじゃね!? 向こうから離れてかないのがお前のこと好きな証拠じゃん!!」「何とでも言える。お前は知らない……」「何を!?」「セブが俺を抱きたがったことは一度もない」「……」一拍置いて。ルーカスは叫んだ、それはもう大きな声で叫んだ。事態のあまりの馬鹿馬鹿しさに叫んだ。
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