深層心理とリアリティ 捜査で疲れてやっと家に着く。鍵を開けると玄関に向かってぱたぱたと足音が聞こえてくる。
「おかえりなさい、銃兎さん」
満面の笑みで俺を迎えてくれる可愛い恋人。
「何してた?」
「ご飯作って、今宿題してた」
そう言って俺の腕にまとわりついてくる。
「そうかえらいな」
頭を撫でてやると「えへへ」って照れた顔をして見上げてくる。たまらない可愛さに頬にキスをしてやると
「ほっぺじゃなくてこっち」
背伸びして唇にチュッと仕掛けて来た。こちらからも応えて玄関先でチュッチュッと甘いキスを堪能する。唇が離れるとちょっと寂しそうに俺をチラリと見るけど気づかれてないと思っているのだろう「お部屋行こ」と腕を引っ張られる。
「先に着替える」
「じゃ僕が手伝うね」
サ○エさんのように上着を受け取り部屋着を渡してくれる。サッと埃を祓いクローゼットにスーツを片付けてくれる。シャツは腕に掛けて洗濯機にでも持っていくのだろうか。
「じゃ、ご飯の用意するね」
俺より先に部屋を出て行く。完全に幼妻のような振る舞いに驚きながらも甘えられる事に喜びを感じているのも事実だ。
ダイニングに行くと素朴な家庭料理が並んでいた。味噌汁と白飯と肉じゃがと。ほっこりした安心感。そしてなぜかガッツリとした生姜焼き。多分これはボリュームの足りない成長期の飢えからくるメニューなんだろう。
「美味そうだな」
「うん。銃兎さんが好きかなと思って作ったんだよ」
にこにこの恋人。手作りの肉じゃがは甘めで今日の疲れを癒してくれる。
「お酒も飲む?僕が注いであげるよ」
グラスとビールを持ってくる恋人。冷蔵庫に入っていたコーラもちゃっかり持って来て俺の前にグラスを二つ置いた。ビールの蓋を開け俺のグラスに注ぐ。最初の頃は泡だらけにしていたが今はキレイに泡の層が出来るように注げるようになった。それが終わると手酌でコーラを注ごうとするからその手の上に俺の手を置き「俺が注ぐよ」と言うと嬉しそうにグラスを差し出す。二人のグラスがカチンと合わせ微笑みながらお互い一口。なんとも幸せなひとときなんだろう。
旨い飯は会話と笑顔でさらに美味く、ゆったりとした時間が過ぎる。
食事の後の二人の時間も今日はドルチェのように甘い。ずっと俺の側から離れない。ずっとべったりとくっついてキスをしたりギュッと抱きついてきたりしている。そのままスキンシップへと手を入れると流石にびっくりしたのかドンと身体を押し返される…………
リビングでスーツのまま倒れている僕のパートナー。朝ここに来たら倒れ込んでるから事件にでも巻き込まれたのかとびっくりして駆け寄ったけど幸せそうな顔しながらグーグーいびきをかいてたから「おい!こんなとこで寝てんなよ‼︎」とバシッと叩いてみた。
「んん」と声を出したが起きる気配はない。珍しいなと思いながらゆさゆさと揺らすと「さぶろー……」と僕の名前を呼んでいる。夢の中でも僕にちょっかい出してんのか。
「おい、起きろって!銃兎‼︎」
バシッと頭をはたく。うっすら目を開けたと思ったら僕に抱きついてシャツの裾から手を入れられゾクッとする。
「ふっ、ざけんな‼︎」
ガクガク揺さぶって起こしにかかる。ハッと銃兎の目が開く。
「さぶ、ろ?」
「寝ぼけてないでさっさと顔洗って来い‼︎今日出かけるって言ってただろ!行かないなら帰るからな‼︎」
甘さ120%から糖度0への落差に戸惑いながらも恋人がいつも通り元気に遊びに来たことに幸せを感じながら洗面所へ向かった。