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    kadota_zy

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    kadota_zy

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    あさくろです

    あさくろ 同室の橘が祖父の家へ様子を見に行っているあいだにとある事を済ませておこうと、黒田は前日から考えていた。性欲が盛んな時期での他者との寮生活、タイミングを逃せば中々処理する時間もない。ましてや硬派で真面目な同室の橘になど、相談できるはずなく。橘が爽やかな笑顔で「じゃぁ、行ってくる」と部屋を退室したあと、黒田はすぐにカーテンを閉めてスマホを取り出す。用意していた動画を見ていると、一気に熱が一点へ集中しはじめる。厳しい練習で慰める時間が極端に無かったため、すぐにでも高みに昇り詰めそうだ。動画の女性から響く甘ったるくて甲高い声をイヤフォン越しに聞き、頭のうしろが白く濁りだした……その時だった。
    「黒田? いるんだろ、開けてくれないか」
     扉の向こう側から、朝利の声がした。吐き出すものも吐き出せず、悶々とした塊が体の内側で溜まっている。完全なる消化不良。どうしていまなんだよ朝利、と文句をこぼしたくなるが、自分を尋ねてきた友人のことを無碍にはできないため、黒田は衣類を整え渋々と扉を開いた。
    「なに?」
     自分のペースを崩されることはあまり得意ではない。素っ気ない態度になってしまったかとは思いつつも、消化不良の気持ちでは謝る気も起きない。
    「昨日の紅白戦のことで、確認したいことが……」
     ノートを片手に持っている朝利がぴくりと反応を示す。
    「黒田、なぜカーテンを閉めているんだ?」
     あ、とちいさく吐息が漏れた。怪しまれないようにと急いで扉を開いたため、カーテンまでは気が回らなかった。黒田は観念したかのように事実を口にした。
    「シてただけだよ、ひとりで」
    「……あー、……それは、ごめん」
     朝利がすべてを察し、気まずい沈黙が流れる。言っても言わなくても、どうせ気まずくなっていただろうと分かり切っていた黒田は、「で、紅白戦のなにが確認したいの?」と朝利に詰め寄ろうとした刹那。
    「え、」
     ぐるりと視界が回転した。
     扉がゆっくりと閉まる。
     部屋は元の暗闇に包まれた。背中を壁に押しつけられ、押し入ってきた朝利のいい香りが鼻腔を突く。
    「朝利……?」
     黒田の服のなかに骨張った手のひらが侵入し、するすると肌を這いはじめる。
    「んぅ……、ちょ、……っと、今さわられると……っ、」
     中途半端に止めたため敏感になっている身を捩り、逃げようとするも朝利は上半身を押しつけてくる。
    「中途半端なのはつらいだろ。手伝ってやろうか、黒田」
     信じがたい言葉に黒田が目を見開くと、薄暗いなかで朝利が微笑を携えていた。
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    kadota_zy

    DOODLEまきあき。青森星蘭戦後、秋山さんと槇村さんが連絡を取り合うまでの空白時間の小説です。
     青森星蘭高校との激闘を終え、秋山は何としてでも槇村に伝えたいことがあった。サッカーに賭ける想いは変わらない。それは試合を通じて十分に理解できた。しかし、まだ確認しておきたいことがある。大切に思ってきたからこそ、槇村と繋がっている糸を切らせたくはなかった。トイレに行ってくる、とチームに告げて集団から抜け出すと、青森星蘭高校が荷物をまとめているであろう場所をぐるりと見回す。冷めやらぬ熱気を抱えた観客たちからは、「優勝おめでとう」と労う声が秋山へ飛んでくる。会釈をしながら見慣れた背中を視界の隅に捉えると、秋山はすぐさま自動販売機の裏側へ駆け出した。
    「槇村!」
     槇村はひとりスタジアムの片隅で静かに泣いていた。試合終了後に崩れ落ちていた彼の周りには幾人ものチームメイトが集まっていたが、いま近くには誰もいない。人一倍、責任感の強い槇村のことだから自らひとりになりたかったのだろうと秋山は推測する。かつてのチームメイトがどこにいようが探し出してしまえる己の才能に、感心すらしてしまえる自分がいた。反射的にこちらを振り返った彼の目は赤く腫れ、頬は濡れている。名前を呼んだ人物が誰なのかを悟った槇村は、ちいさく「なんでお前がここに……」と唸った。そして秋山がなにかを言う前にと、踵を返してその場を去ろうとした。
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