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    岩藤美流

    @vialif13

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    岩藤美流

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    ワンライお題「金」

    思いついた時はありがとうも入ってたはずなんですが、なんか書いたら無くなってました。あまーーーーーいってやつです

    ##ワンライ

    そこにあるはずの温もりを求めて、布団の中で腕を動かす。ぽふぽふ、とシーツの上を探っても、他の存在を見つけることできなかった。不満げに小さく呻いて目を開けると、そこは薄暗いアズールの部屋だ。少し離れたところに机と、それに向かう恋人の姿を見つけた。
     間接照明が照らし出す中で、寝間着に身を包んだアズールが何か書類を見つめている。イデアはもぞりと布団から出ようとして、自分は裸のままであることに気付き、きょろきょろと寝間着を探す。そういえばアズールの部屋で情事に及んで、そのまま眠ってしまったのだった。彼と夜を共にできる機会は少ない。熱く濃い夜を過ごした後は、幸福感に満たされながら一緒に朝まで眠るはずだった。ところが、肝心の恋人はどうやら仕事に勤しんでいるようである。
    「……ああ、すいません。起こしてしまいましたか」
     アズールはイデアに気付いて、苦笑いを浮かべた。近くに有った寝間着を身に着けながら、「仕事?」と尋ねると、アズールは小さく頷く。
    「会計の計算が上手くいっていないみたいで。こういう細かなことは自分でやったほうが安心できるんですよ。ただ今回は少し量が多くて……時は金なりと言うでしょう? 早く片付けてしまいたいところなんですが……」
     書類の束を見ながら、アズールは溜息を吐く。それは彼のモストロ・ラウンジの経営が上手くいっている証でもある。それ自体は、良いことなのだろうけれど。
    「会計、ねえ。……何か特殊な計算が必要なの?」
     椅子に腰かけたアズールに、後ろからもたれかかる様にして身を寄せる。シャワーを浴びたのだろうアズールの髪はいつものように柔らかくて、いい香りがした。
    「いえ、特には。一般的な会計処理と同じだとは思います。ただ我が寮にはこういうことに慣れている者があまり居ませんので……」
    「ふうん……」
     イデアは「見ていい?」と断ってから会計書を手に取り、目を通す。一般人が見たら眩暈がしそうなほど、数字が書き連ねられたそれに目を通しながら、「これならシステム化できそうだけど」と呟く。
    「今これ処理するのにどれぐらいかかってる?」
    「ええと……ジェイドと二人なら1日あれば、なんとか」
    「どうせ睡眠時間削ってるんでしょ、自動化したら楽なんじゃないかな、アズール氏ってタブレット使えるっけ、まあ使えなくても覚えれるっしょアズール氏なら。会計システム作ってあげるからそれでやりなよ」
    「それは……ですが、イデアさんに頼む訳には」
    「時は金なり、なんでしょ、無駄な時間は短縮するに限りますわ。これぐらいのシステムならすぐ作れるし、少なくとも計算の間違いとかは起こらないようにできるよ。金額入力するだけだから、アズール氏じゃなくたってできるようになるだろうし。ついでに在庫管理とか注文の数とかも計算できるようにしたらお店のやりくりも楽になるんじゃない」
     その提案にアズールは書類の束と、イデアとを見て、それから「対価は」とお決まりの言葉を口にした。そうくるとは思っていたイデアは、「自動的に受け取れるから考えなくていいよ」と返す。すぐにアズールから離れて、ベッドに潜ると布団をひっ被った。
    「どういうことです、イデアさん」
    「考えなくていいってば」
    「ですが、僕は対価無しでは約束はできません。イデアさんだってわかっているでしょう」
    「……時は金なりって、言うんでしょ」
     イデアは布団の中に包まったまま、小さく答えた。
    「そうやってこんな時にも仕事しなきゃいけない状況じゃなくなったら、朝まで一緒に寝れるでしょ」
     言っていて恥ずかしくなってきた。ううー、と呻いていると、いつのまにやらそばに来たアズールが、布団の上からぎゅっと抱きしめてくる。イデアさん、ごめんなさい、とかなんとか言っているのが聞こえた気がするけれど、布団の中ではよく聞き取れない。仕方なくもぞりと顔を出せば、その頬に触れられて、優しく口づけられる。それを受け入れながら身を任せて、再びベッドに入って来たアズールに抱き締められた。
    「ああ、もう、恥ずかしいこと言わさせられた、もう無理、拙者寝ますわ」
    「……そうですね、寝ましょう、朝まで抱きしめていてあげますよ、あなたに寂しい想いなんてさせません」
    「寂しいとかひとことも言ってないですしおすし、自意識過剰乙……」
     形ばかりの否定をしつつも、イデアはアズールの胸に顔を埋めた。求めていた温もりが戻って来たことを喜びながら、再び微睡に身を任せ、目を閉じた。
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    recommended works

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    お題「HELIOS∞CHANNEL」
    何度も何度も震えるスマホ、画面も何度も光って、最早充電も尽きかけてしまっている。
    鳴り止まなくなって電源ごと落としてしまうのも日常茶飯事ではあるけれど、今回は規模が違う。
    ……今朝おチビちゃんが撮ってエリチャンにアップロードした写真がバズっている。
    その写真は新しく4人の体制となったウエストセクターで撮ったもので……それだけでも話題性があるのは確かだけれど、それよりもっとややこしいことでバズってしまった。

    『フェイスくん、この首の赤いのどうしたの!?』
    『これってキスマーク……。』
    『本当に!?どこの女がこんなこと、』

    「はぁ〜……。」

    止まらない文字の洪水に、思わず元凶である自分の首を撫でさする。
    タグ付けをされたことによる拡散の通知に混じって、彼女たちからの講義の連絡も合わさって、スマホは混乱するようにひっきりなしに泣き喚いてる。
    いつもはなるべく気をつけているからこんなこと滅多にない。……ただ、昨夜共に過ごした女の子とはまだ出会ったばかり……信じて寝入っている間にやられてしまったらしい。
    今日はタワーから出るつもりがないから別にそのマークを晒していてもわざわざ突っ込んでくる 2313

    affett0_MF

    TRAININGぐだマンワンドロワンライ
    お題「天使の囁き/ダイヤモンドダスト」
    はぁ、と吐き出した息が白く凍っていく。黒い癖毛を揺らしながら雪を踏みしめ歩く少年が鼻先を赤く染めながらもう一度大きく息を吐いた。はぁ。唇から放たれた熱が白く煙り、大気へと散らばっていく。その様子を数歩離れたところから眺めていた思慮深げな曇り空色の瞳をした青年が、口元に手をやり大きく息を吸い込んだかと思うと、
    「なぁマスター、あんまり深追いすると危ねぇっすよ」
    と声を上げた。
     マスターと呼ばれた癖毛の少年は素直にくるりと振り返ると、「そうだね」と笑みと共に返し、ブーツの足首を雪に埋めながら青年の元へと帰ってきた。
     ここは真冬の北欧。生命が眠る森。少年たちは微小な特異点を観測し、それを消滅させるべくやってきたのであった。
    「サーヴァントも息、白くなるんだね」
     曇空色の瞳の青年の元へと戻った少年が鼻の頭を赤くしたまま、悪戯っぽく微笑んだ。そこではたと気が付いたように自分の口元に手をやった青年が、「確かに」と短く呟く。エーテルによって編み上げられた仮の肉体であるその身について、青年は深く考えたことはなかった。剣――というよりも木刀だが――を握り、盾を持ち、己の主人であるマスターのために戦 2803

    YOI_heys

    DONE第1回 ヴィク勇版ワンドロワンライ『ひまわり』で書かせていただきました!
    ひっさびさに本気出して挑んでみましたが、急いだ分かなりしっちゃかめっちゃかな文章になっていて、読みづらくて申し訳ないです💦これが私の限界…😇ちなみにこちらhttps://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17839801#5 の時間軸の二人です。よかったら合わせてご覧下さい✨
    第1回 ヴィク勇版ワンドロワンライ『ひまわり』※支部に投稿してあるツイログまとめ内の『トイレットペーパーを買う』と同じ時間軸の二人です。
    日常ネタがお好きな方は、よかったらそちらもご覧ください!(どさくさに紛れて宣伝)



    第1回ヴィク勇ワンドロワンライ『ひまわり』


    「タダイマー」
    「おかえり! って……わっ、どうしたのそれ?」

    帰ってきたヴィクトルの腕の中には、小ぶりなひまわりの花束があった。

    「角の花屋の奥さんが、持ってイキナ~ってくれたんだ」

    角の花屋とは、僕たちが住んでいるマンションの近くにある交差点の、まさしく角にある個人経営の花屋さんのことだ。ヴィクトルはそこでよく花を買っていて、店長とその奥さんとは世間話も交わす、馴染みだったりする。

    ヴィクトルは流石ロシア男という感じで、何かにつけて日常的に花を買ってきては、僕にプレゼントしてくれる。日本の男が花を贈るといったら、母の日や誕生日ぐらいが関の山だけど、ヴィクトルはまるで息をするかのごとく自然に花を買い求め、愛の言葉と共に僕に手渡してくれるのだ。
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