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    MT24429411

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    MT24429411

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    ラーヒュンワンライ「夏バテ」

    #ダイ大(腐)
    daiDai
    #ラーヒュン
    rahun
    #ワンライ
    oneLai

    夏バテ「おい、大丈夫か」
    「あぁー…何とも言えんな」

    気だるげに答えた声の主は、問う声の主に視線すら寄越さず、寝台に身を横たえていた。
    普段の凛然とした姿勢は見る影もなく、額の上に手の甲を乗せ、茫洋として虚空を見るとも無しに見つめている。
    それをさほど心配するでもなく、銀髪の青年は湯気の立つ銀盆をベッドサイドテーブルに置き、傍らに腰かけた。
    「そら、お前は暑いからと言って冷たい水だの生野菜だの摂ってばかりいるからだ」
    「ああ、反省しているとも、大いにな。我が身の不甲斐なさが情けなくて堪らん」
    バツの悪そうなラーハルトの目の前に、ぐいとスプーンが差し出される。
    「ならちゃんと食え。食わんことには回復せん」
    強い匂いを発するそれに、ラーハルトは思わず眉をしかめた。
    「まて、匂いがまずキツい。何だそれは」
    「白身魚のソテーに香菜を和えた。消化はいいはずだ」
    「……感謝したいところだが今は胃が受け付けん。悪いが明日いただこう」
    部屋のすみに設えられた木製の箱をラーハルトが指し示す。それはアバンとポップが試験的に開発したもので、内部の温度が上がらないよう呪法を掛けた木箱の内部を二段に分け、上段にヒャドによって作られた氷を納め、下段に腐らせたくないものを入れる、家庭用の保冷庫だ。保存食や携帯食料ばかりではつまらないだろうと世話焼きのアバンから魔法の筒に入れて押し付けられたものだが、使ってみると食料を始め薬液等の保管にも役立つので彼らはすっかり頼りきっている。
    「食って体力回復せんとダイの前で失態を晒す事になるぞ。普段から誇り高き竜の騎士の臣下としてどうのこうの言っているのはお前だろう」
    渋るラーハルトには実のところダイを持ち出すのが一番効く。果たしてぐうの音も出なくなったらしいラーハルトは、渋々の表情で身を起こし、手を皿へ差し出した。
    「自分で食う」
    だがヒュンケルはその手を制し、尚も匙をラーハルトの口許へ突きつける。
    「有り難く食え。体力回復が最優先だ」
    黒檀の瞳が強い光を湛えてラーハルトを射抜く。何がなんでも己が手ずから食べさせたいという意思だ。
    ぐ、と詰まったラーハルトは、諦めの表情とともに口を開いた。
    こうなるとヒュンケルという男は梃子でも効かないし、そもそも体調管理を怠ったのは自分の責任だ。

    「……うむ、確かに効きそうだ」
    気怠い身の今は美味いとも不味いとも述べかね、敢えて薬効の実感を選んだ。普段ならば一も二もなく美味いと自然に口をついて出たろうに、自己管理の甘さが口惜しい。
    そんなラーハルトを気遣うように、ヒュンケルが肩に手を置き、宥めるような手付きでさする。
    「しかし意外だな、お前はいつもしっかりものだから夏バテなんぞにはならないと思っていたよ」
    「元々暑いのは苦手なんだ。バラン様がご存命の時はそれなりに気を張っていたし、どうやらあのお方の竜闘気は――知らず知らずのうちにだが――我ら竜騎衆の基礎体力や身体能力を上げて下すってもいたらしい。バラン様のお力を感じているうちは妙に体調が良かった」
    その答えにヒュンケルは好奇心を刺激されたよう、目を見開いた
    「竜の騎士の力か……なるほど、神の造りたもうた存在ならばそういうこともあるのかも知れんな」
    「ダイ様の前に馳せ参じた時も、似たような高揚感と安心感を感じた。お前達にもそういうことがあったのではないか。竜の騎士が偉大たる所以だ」
    確かに、ダイの存在にヒュンケル達は安堵と高揚感を感じていた。幼い双肩で勇者への期待を背負い戦う彼に痛ましさを感じつつも、彼の優しさ、勇壮な竜闘気、雄大な大気と天上の灝気にも似た神秘性が仲間達にいつも勇気を与えていてくれたのだ。
    物思いに耽り掛けたヒュンケルだが、ふと何の気なしに言葉が口をついて出た。
    「オレが相手では気を張らんのか」
    その言葉に、ラーハルトの視線が外され、枕に伏せる。
    「……言っておくが、お前を蔑ろにしているわけではないぞ」
    ラーハルトは他者へは寸分足りと隙を見せぬ、誇り高くも気位の高い男である。そのプライド故に意地を張りがちだが、また嘘は決して言わない性分でもあった。
    ヒュンケルの唇が、柔らかく綻んで穏やかに笑みの形をとる。
    「分かっているさ。ゆっくり休め」
    その意地っ張りな額へ、優しく唇を落とした。

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    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
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    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
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    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
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    岩藤美流

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    岩藤美流

    DONEアズイデワンライ「カップ」
    前回の「誕生日」の前、アズール視点の話。バグったアズールが双子に相談しているだけの話です。
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     アズール・アーシェングロットがソファに腕組みをしたまま腰かけ、そう尋ねて来たのは11月18日の夜であった。テーブルの上には会計書や誓約書が束になっており、それを整理していたジェイドと、ソファに靴を履いたまま転がっていたフロイドがアズールを見る。
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    「いいですか? 僕とイデアさんの関係については、二人共理解していますよね」
    「恋人同士、ということですね」
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     フロイドが嫌そうな表情を浮かべている。ジェイドも「できれば先に会計書を処理したいのですが」と顔に書いてあったけれど、アズールは無視して続けた。
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    岩藤美流

    DONEワンライお題「かわいい」です。
    何がかわいいって二人の関係ってことにしようと思ったんですけど、あずにゃんが「かわいい」って言いすぎていでぴが慣れて信じてくれない、みたいな設定でいこうかな、だけ考えて書きました。どっちかっていうと「火」とか「恋」のほうが主題に見える気もします。相思相愛です。


     あれは随分前のことだ。といっても、数か月程度のことだけれども。
    「イデアさんって、かわいいところがありますよね」
     何がきっかけだったか、部活の最中にひとしきり笑った後で、アズールはそうポツリと漏らしてしまった。気が緩んでいたのだ。口から零れ落ちた本音は、もう取り消せない。見れば、ポカンとした顔のイデアがこちらを見つめている。
     まずい。
     一瞬でアズールは、それまでの本気で笑っていた表情をいつもの営業スマイルへと切り替えた。
    「本当に、かわいい人だ」
     繰り返すことで、言葉に含まれた真実を、嘘で上塗りする。我ながら咄嗟の判断でよくできたと思う。思惑通り、イデアは顔をしかめて、「そーいう煽り、キツいっすわ」と溜息を吐いた。よかった。本音だとは思われなかったようだ。アズールはイデアに気付かれないように、そっと胸をなでおろした。



     陸の事はよく勉強したから知っている。人間は、一般に同性同士や親族間で番にはならない。今でこそ理解の必要性が問われ、寛容な社会の形成が始まっているとは言うけれど、それでも一般的なことではないのだ。多種多様な生態を持ち、性的タブーの形が全く異なる人魚の 3062

    岩藤美流

    DONEアズイデワンライ「誕生日」
    いつものハードプレイしている時空のあまあま誕生日。ノーマルなえっちをしたことがない二人にとっては特別なのは普通のことでしたとさ。
    『18日、金曜日ですよね。生憎モストロ・ラウンジの仕事も年の瀬を控えて忙しいので。当日はお伺いはできませんが、祝福しますよ、イデアさん』
     大切な後輩兼友人かつ恋人であるアズールが、いつも通りの営業スマイルでそう言ったのは先週のことだ。イデアは自室で一人、高級そうで繊細なティーカップを眺めている。青を基調とした優雅なそれは、確かにイグニハイドや、イデアの髪に近い色をしていたし、美しいとは思う。けれど、この汚部屋にリーチのかかったオタク部屋には不似合いだ。
     今日は日付変更からゲーム仲間にお祝いされテンションが上がったものの、この学園でバースデーボーイが晒し者になるのだということに気付いて憂鬱になりながら部屋を出た。顔も知らない寮生達にお祝いの言葉をかけられるのは、通りすがりに雪玉でもぶつけられているような気分で、イデアはとても気分が落ち着かなかった。
     購買に行く道、できるだけ人のいないところを……と、裏道を通っていると、ばったりとアズールに出会った。いやもうそれは、教科書に載せたいほど偶然に、ばったりと。
    『ああ、イデアさん。こんなところで会うなんて偶然ですね。そういえば今日、あなた 2794

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