素直に助言を聞いた自分が馬鹿だったなぁ、と思う。
玲王は居心地悪く、テーブルの下で足を組み替えた。カジュアルなイタリアンバルの個室で、厚く切られたローストビーフをあまり噛まずに飲み込む。
一方の凪は、珍しく小さな口を懸命にもぐもぐと動かしていた。いつもなら食べるのが面倒くさいとすぐに投げ出してしまうのに、今日の凪は面倒くさいことをひとつひとつ丁寧にこなしている。
そもそも、この店を選んだのは凪だ。予約してくれたのも凪。
数週間前、『クリスマスデートは俺がエスコートするね』と凪に言われた。てっきりそういうことはすべてこちらに一任されると思っていたから拍子抜けした。
目を丸くして驚く玲王に、凪がツンと唇を尖らせて言う。初めて恋人と過ごすクリスマスだもん、それぐらいはするよ、と。
1983