夢小説書くタルタリヤ/タル蛍『今夏、ついに劇場アニメ化!』
そんな帯がついた文庫サイズの本を通りかかった本屋の平置き棚で見かける。内容はファンタジーで、七つの国と空に浮かぶ島を旅する少女の話だ。主人公の女の子は金の髪に意思の強そうな琥珀の瞳、わかりやすく言えば美少女だった。旅の行く先々で巻き込まれる苦難を乗り越えて、生き別れた双子の兄と再び出会う、そんなストーリー。
「いやぁ、なんか居た堪れないな……」
うーん、と苦く笑うのは赤茶けた頭髪の男。この世には生まれ変わりというものがあると信じてやまない、ともすれば痛いことこの上ない成人男性である。そして、この目の前で続々と買われていくラノベの作者でもあった。
「これって世にいう夢小説なんだよなぁ」
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