懺悔室エルフィンド「…懺悔室?」
人一人入れる程の大きさの部屋。その入り口にそう書かれたプレートがかかっていた。
エルフィンド「……」
何かに惹かれるように、入って行く。
エルフィンド「…懺悔したい事を、ここで話せばいいんですね。」
誰も居ないはずなのに、「そうですよ」という声が、聞こえた気がした。
最初の過ちは、裏路地に行きたいと言い出した事だったと思います。
僕がそう言ったせいで、皆………
2度目の過ちは、早々に切り上げなかったこと。
そのせいで、迷ってしまい…『夜』が来てしまった。
3度目は、友を見殺しにしてしまった事。
掃除屋がひたすらに怖くて、隠れてやり過ごして…外からぐちゃぐちゃと音がしても……
エルフィンド「………っ…、えっと、すみません、今日は」
気分が悪くなって、切り上げようとしたのに、体は動いてくれない。まるでもっとあるだろう?と言っているかのようで。
エルフィンド「………いえ、もう…ちょっと…あります…」
誰も居ないはずなのに、誰かがいる気がして。意味もない報告をしてしまう。
4度目は………外郭に出た事。
そこで…僕は『真理』に気づいてしまった。気付かされた。そこからは、何を見ても冷めた心が表に出てきて…
…5度目の過ちは、全てに嘘を付くようになったこと。家族にも、親しい人にも、他人にも、全てに。
全員にとって、求められる僕を演じだしたのは、そこからでした。嘘を付く度に僕には罪が重なっていく…なのにもう、気づいた頃には戻れなかった。
……僕は、どうすればいいんでしょうかね。
エルフィンド「……ぅ…」
ようやく立ち上がれた体で懺悔室を出る。
目の前がぐるぐるして思わずふらつく。
エルフィンド「すっかり、体が弱くなっちゃったな……あはは…」
今日はこれ以上外には出れないな、ぼんやりとそう思いながら、僕は部屋に戻った。
???「おかげ様でいいネタが聞けましたね。ありがとうございます、エルフィンドさん。…後程、お楽しみに。」
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後日、また懺悔室の近くを通ったら、誰かがすでに入っていたようで、声が微かに聞こえてきた。
???「……しゃけのムニエル…」
エルフィンド「…え?」
鮭のムニエルで何か懺悔したいことでもあったんだろうか…と暫く考え込んだが、その日の夕食に出ていたのできっとただのリクエストだったんだろうと納得した。
……それなら僕だってカレーを頼むのにな。
そう思ったのは内緒の話だ。