チョコに込めた思いは来たる2月14日、つまりはバレンタイン・デー…世界各国の英霊が集まるここカルデアにおいて、日本形式でチョコレートやその他諸々に思いを込めながら贈り物をする日としてお馴染みとなっていた。
「というわけで、今年もやってきましたね!練習も兼ねて、色々作ってみようか!」
「うん、りつかもやる!」
「ついでにおやつタイムかな、ジュースもあるよ!」
「わぁい!おねえちゃん、ありがとう!」
キッチンの一角にてエプロンと三角巾を身につけたわたしは小さなわたし、通称りっちゃんとこれからチョコレートの試作をするのだが…当日みんなに配る用と、いわゆる本命も準備する予定だったりする。
「ふふんっ♪りっちゃんは、カドくんに渡したいってことでいいんだよね?」
「シーッ!ま、まだいっちゃダメ!」
「ごめんごめん…でも、気づかれていないから!」
カドくんこと小さなカドックとは時々ケンカしつつ仲良くやっているので、お友達として“好きな人”という感じか…本当の気持ちはあえて聞かないけれど、これはこれで何とも微笑ましい。
「はじめてだから、うまくできるかな…」
「大丈夫だって!みんながビックリしちゃうもの、わたしと一緒に作ろうよ!」
「やったぁ!りつか、いっぱいがんばるね!」
わたしの本命は当然カドックだ、事前に渡すことを知らせてあるから少しは気楽だけれど…もちろん手は抜かないし、中身で勝負するために画策中だ。
「みてみて、カラフル!こういうの、つくりたい!」
「おっ、素敵じゃん!ここを少しアレンジしたら、もっとオシャレになるかもよ?」
まずはりっちゃんの描いてきてくれた絵を参考に、一つ一つどんな風にしたいか考えて…出来上がったら次の試作となかなか楽しい時間を過ごしている。
同じ頃、作ることにもお喋りにも夢中になっていたわたし達の知らないところで…カドックとカドくんの二人が、たまたま近くを通りかかっていたらしい。
「リツカたちだ…あんなところで、さっきからなにやっているんだろう?」
「あぁ…確かもうすぐ、って言っていたからな…いや、目立ちすぎなんだが!?」
「おとなのぼく?ど、どうしたんだ?」
「…何でもない、急に大きな声を上げて悪かった」
ワイワイガヤガヤとした賑やかしい雰囲気の中で、二人の視線がこちらに向けられていたことにわたしもりっちゃんも気づけていなかったのである。
「あれ?あまいにおいがする…おかし、とか?」
「さ、さぁ?僕は何も…とりあえず今は、おまえも見なかったフリをしておいてくれ」
「なんだよ、へんなこといってさ…」
「ほら、いいから…人を待たせているんだし」
興味がありそうなカドくんを連れて、大体のことを察したカドックがこの場からすぐに離れてくれたので事なきを得た模様…こうして、小さなレディーの甘い秘め事はしっかり守られることになった。
「先に聞いていたけれど、隠す気あるのか…焦ったぞ」
「よっ、気配りの天才!さすがはカドック!」
「茶化すなって…この対価は後で貰うぞ、立香から」
なぜだか話が思わぬ方向へ飛躍していったが、元々会う予定だったので良しとしたい…一方、わたし達の近くでは子供達も可愛い攻防戦を繰り広げている。
「なぁリツカ、おしえてくれないのか?」
「へへっ、ナイショ!カドくん、まっていてね!」
「お、おう?ワケがわからなくなってきた…」
ニコニコ笑顔を見せるりっちゃんにカドくんが振り回されており、それ以上何も言い返せずに押し負けた様子…バレンタイン当日まであと少し、二人に喜んでもらえるようまだまだ頑張らなきゃだ。