そのときはどうぞよろしく「いいわよ、追いかけても」
「え、いいの?!」
心底嬉しそうな笑顔に、歌姫も苦笑いだ。自分の膝に頬杖をついて、男の顔を見上げる。
世界に必要な人間だ。おためごかしの、抽象的な話ではなくて、真実この世界に、人々に必要不可欠な人間だ。五条がいなければ倒せない呪霊、見つからない術式、助けられない人、喪われる命がごまんと増えるだろう。
でも、それでも。
歌姫を愛していると言う五条を、歌姫がいなくなったら生きていけないと嘯く五条を、置いていってしまうとき、彼自身が、一緒に行きたい、寂しいのだと頑是なく泣くのなら、その手を引いてあげよう、と思ってしまうのだ。ほかの誰が許さなくても、歌姫だけは、世界より五条を選ぶ。
だからね、硝子。
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