プレフル時空の二人の話　入学早々我らが女王様に散々歯向かってくれた後輩は、納得できないことへの跳ねっ返りがもうすごい。意地っ張りだとか頑固だとかを通り越して、ハリネズミの針のように折れる気がないのだ。むすっと拗ねた表情は普段なら愛すべき一面だと言えるのだが、不満の針先が自分に向いている今、ケイトは奪われたスマホにあちゃーと頬を引き攣らせるしかなかった。
「この写真、なんすか」
と、ベッドの上でエースが唇を尖らせる。
「ただのジャックくんとのツーショじゃん？　エースちゃんたちと別れた後、一緒に隠れキツネ探したんだ」
「ケイト先輩、あのとき一人で隠れキツネ探しに行きましたよね？　なのに何でジャックのやつと行動してるんすか」
「たまたま会っただけだって〜。先輩のオレに気を遣ってくれたの」

ついったまとめ3年生のクラス割りって真逆なタイプを入れときました感あるじゃん…？3Aの狩人と獣、3Eの料理上手と料理下手、そして3Bの陽キャと陰キャ…その中でもデケって一見陽キャと陰キャに見せて実際は正体は見たままだけど本音は一切分からないけ～くんと正体は隠してるけど本音は駄々洩れなデじゃん…？2023.10.2

でもどれだけけ〜くんのこと愛タイプで見返りを求めない人と分かっていても、未練すら残させないようにしてるところは悲しい人だとも思うよ。2023.10.1

け〜くんが恋タイプになれないのは見返りを求めることは相手の好きを認める、見ないふりができなくなるってことだから、言質を取られることと同意になるんだよね。だから実際に恋をしてしまってもその恋を封じて愛に徹しそう。のべらいずでも自分を律することができるって書かれてるしね。2023.10.1

イデアがハリネズミになるイデケイの話　ハ、ハア～～～～！！？
　陰キャにしては腹の底から叫んだつもりであったが、みるみる小さくなる体は、辛うじてピイイと甲高い鳴き声を上げられただけであった。すぐに視界は白衣に埋もれ、身長180センチ超だった高さから丸い体がぼてっと落ちる。
　脱げたよれよれの下着から這い出た頃には、実験室はまるでという比喩でも何でもなく、ただの動物園になっていた。ビークワイエット、とこめかみに青筋を立てたクルーウェルの鞭が響く。
「誰だ、三年にもなって変身薬をこぼしたのは！あれほど気をつけろと言っただろう！」
　普段なら恐怖政治よろしくすぐに背筋を伸ばす生徒たちも、今は背筋があるかどうかも怪しい。天井を突き破っているキリンなど、身動きすら取れず恨めしくこちらを見下ろしている。

裁イデア×役ケイトの話「オルト、いける？」
　部外者を巻き込まないよう結界の張られた疑似空間の中で、イデアは空中から南西の方向を注視する弟に声をかけた。
「二キロ先、キャスターとそのマスターを補足。拡張戦闘モードを起動します」
「……クラスはこちらが有利だ。早めに始末をしておこう」
「マスターより宝具使用の許可。魔力を充填します。……いつでも行けるよ、兄さん」
　オルトはイデアをマスターと呼んだが、厳密にはイデアも今回の聖杯戦争に呼ばれたサーヴァントの一騎だ。サーヴァントがサーヴァントを召喚してはならないというルールはないため、同じシュラウド家の血が流れる自分自身を媒体に、弟の魂を召喚したのだ。体に使ったのは、魔術回路が組み込まれた人型の機械。

イデケイのこと話してるヴィル様とれおぱいの話　生成色の薄い紙が、ぱらりと乾いた音を立てる。町一番の捻くれ者が起こす稚拙な恋の物語は、次に出演する舞台の原作にあたる小説だ。メインストリートから離れたこの場所は日中でも人通りが少なく、葉の透けるような欅の木漏れ日が心地良い。そのため、ヴィルはここのベンチを気に入っていた。
　しかしまだ半分も読み終わらないうちに、背後の茂みががさりと揺れる。主人公が周囲の嘲笑に耐えながら、それでも愛を語る大事な場面だというのに、丸みを帯びた耳の影でその先が読めなくなる。
「——あのカイワレ大根は、ケイトの奴が好きなのか？」
「……あら、ようやく気付いたの？」
　人の読書の邪魔をしておいて開口一番にそれ？　と嫌味を言うには、レオナの随分と疲れた顔が気になった。ヴィルは断りもなくどかりと隣に座るレオナに本を閉じると、珍しいわね、と素直に言った。