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    せり@グノ専

    @selisu_0911

    グノーシア/レム主展開用アカウントです
    ⚠️オリ主・夢

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    せり@グノ専

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    ⚠️オリ主 レム主♀です。

    ノマエン後のグリーゼ前提、付き合ってる時空
    祝ホワイトデー

    ↓こちらはバレンタインデー
    https://poipiku.com/8785235/9892665.html

    ##レム主
    ##グノーシア

    一輪のデルフィニウム「ホワイトデーはどうだった? 二人でホテル最上階の展望ラウンジでご飯? それとも自家用ジェットクルーズ?」
    「…………一応、聞くけど。それってレムナンの話?」

     ――もちろん。当たり前でしょ。リーダーはスズ君のためならなんでもするから。
     彼女達が口々に肯定の意を示す。ため息のひとつもつきたくなる。
     元革命軍の人達から見た私達は……時々、映像作品の主人公達か何かと勘違いされているんじゃないか、そう思うことがある。レムナンは一体この数年のグリーゼ生活でカリスマ性をどれだけ培ったのか、ホワイトデーのお返しにしては過剰なほどの期待されぶりだ。

     バレンタインデーから一ヶ月。
     先月は「食べたら……なくなる、ので……」と渋るレムナンに日持ちしない箱の中身をどうにか消費させるのに忙しかった。いつまでも冷蔵庫に保管しようとするから、日が経つと味が落ちるとか、食べるためにあるんだからとか、何ならこれが最後じゃあるまいしまた作れるからとか、説得するのが大変だった。
     ……それとは別にレムナンに全て回収された、皆への差し入れ予定だったチョコは日持ちするため、未だにレムナン宅の冷蔵庫の中にある。
     
     その日は長らく「渡す日」だった。ささやかな感謝の気持ちを三倍返し。これからもよろしくね、と友達に感謝を贈る日。貰う側になるのなんて、いつぶりだろうか。小さな頃は家族でやり取りがあったかな……くらいのものだ。
     私は皆が想像しているような高級感なんて求めていなかったけど、「十四日は、絶対……予定を空けておいてくださいね」と、早くから念を押されて、レムナンは一体どんなものを選ぶんだろう、と考えていた。

    「じゃあ、何を貰ったの?」
    「……普通にキャンディだけど。皆、いくらなんでもリーダーに期待をかけすぎだよ」

     ――別に、詳細を話してしまったっていいんだけど……。



     市街の広場のベンチに並んで、二人でクレープを齧っている。新しい味が出たとかで話題になっていたから、その日は少し遠出していた。

    「スズさん……あの、これっ……! ホワイトデーのお返し、です」
    「ありがとう……大きい瓶だね」
    「はい! たくさんあって、長く……食べられる、ので……」
     待ち合わせをした時からレムナンが持っていた大きな袋は、まぁそれだけで目立つのなんの。自分の手元に来るのだろうな、という予感はあったけどいざ自分の手に抱えてみるととんでもなく大きい。
     こんなに大きいお返しが来るのなら、外出じゃなくて家で大人しくしていた方がよかっただろうか……ちょっとそう思う。
    「魚の形だ」
    「あの、スズさんの好きなクッキーに……形が似てると、思って……」
     レムナンに渡されたガラス瓶にはカラフルなキャンディが詰まっていた。よく見ると魚の形をしているそれは、グリーゼの店では見かけない品物。どこで見つけたんだろう。

     私が両手で抱えなければならないほど大きな瓶は、あればあるほど良いみたいな基準で選ばれてるみたいだった。
     ……もしかして三倍返しって量のことだと思ってるんだろうか。これじゃあ三倍どころで済む量ではないけど、なんだかレムナンらしいなと思う。
     ……年を経るたび、レムナンは贈り物を探すのが上手くなっていく。何かを伝えたわけでもないのに、どんどん私の欲しいものや好きなものを当てるようになった、気がする。

    「大事に食べるね」
    「はい。……あの、他にもあって、その……」
    「えっまだあるの?」
     このキャンディだけでも食べ切れないほどあるのに。……日持ちのするものだといいけど。
     レムナンはごそごそと紙袋の中を探って、それから。

    「部屋に、飾ってくれると……嬉しい、です」

     視界に広がる水色。ぐい、と目の前に差し出された花を、ぽかんと口を開けたまま見つめている。まさかこんな日に花を贈られるとは、思っていなくて。
     切り花一本。
     水色の花をいくつかつけたそれは、見慣れた花だった。……これ、応接室によく飾ってあるやつ。レムナンが時々気まぐれに買ってきては飾っているらしい花だ。

    「花を贈られるとは思ってなかったな」
    「……これは、あのっ! いつか、渡せたら良いなと…………ずっと思ってたんです」
    「そうなの?」
     そんなイメージはなかったけど、時々応接室に花を飾るくらいだから……案外こういうのが好きなのかもしれない。付き合いが長くなっても、知らない事はたくさんある。

    「そ、そそ、そのっ……! これは! ……す、すずなさんの目と、同じ……色でっ……!」 
     ああ、そういえば自分の目も水色だな。目の色に合わせる、とかメイクに合わせる、とかはファッションに興味のある人の専売特許だと思っていたけど。
     別に花の色に大きなこだわりはないつもりなのに。こんな風に手渡されると、応接室に通されるたびに今日のことを思い出してしまいそうだ。……レムナンはいつの間にこういう、技能を身につけてくるんだろう。私が思っているよりも革命軍っていうのは、対人の技能が高まるものだったのだろうか。

     ――元革命軍のリーダー。
     水面下で計画を実行するための計画力・思慮深さがあって、慎重でありながらもチャンスを逃さず大胆に行動できる。そういう印象で考えればホテルの最上階でディナーを計画することも、ジェット機を運転して夜空を翔けるのも自由自在。……きっと実際それもやろうと思えば、できなくはないんだろうなぁ。

     だけど私はそれよりほんの少しだけ、詳しく彼のことを知っている。
     革命軍のリーダーとは全く無関係の個人として。

     レムナンはホテルの最上階より移民区画の店でライス大盛にするのが好きだし、そもそもまともな食べられるものであればあんまり食事にはこだわらない。
     私もレムナンも、かしこまった場で食べるご飯より市街の屋台で何となく注文するホットドックの方が好きだ。
     免許はあるけど自家用ジェット機や宇宙船は持っていない。いつか買うか、作るかしそうだと思うけど。ドライブするより家で朝から晩までゲームしてることが多くて割とインドアだ。
     二人でどこかに出掛けるよりも家にいることが多い。

     花を贈ってくれるのに多分花言葉はてんで分かっていない。
     きっと贈る本数の意味も知らない。
     ……私の家には花瓶がないとか、そんなのもさっぱり考えていないんだろうなぁ。

    「うちに花瓶がない」と私が言うと彼は「それじゃあ今から一緒に作りましょうか」と言い出して目的地が私の家に変わった、三月十四日の出来事。

     皆の想像するリーダーとは違う実際の彼のことを……誰かに話してしまっても良いけれど。



    「え〜つまんない、リムジンのチャーターくらいはやると思ったのに」
    「いやそれよりバラ百八本じゃない?」
    「分かるそれ」
    「それは、なんていうか期待に沿えなくてごめんね。……そんなことより俺は皆のホワイトデーの戦利品の方が余程気になるんだけど――」
     
     ――やっぱりそれはほんのちょっとだけ、自分しか知らないことにしておきたい。
     ぎっしり中身が詰まったガラス瓶の重さも、繊細な花びらにポツンと乗った朝露の跡も。それを渡してきたあのひとの様子も、誰かに気軽に話してしまうには……何だか惜しくて。

     話の流れを挿げ替えながら、家の新しい花瓶に飾った水色の花のことを思い出して、そう考えている。
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    https://poipiku.com/8785235/9892665.html
    一輪のデルフィニウム「ホワイトデーはどうだった? 二人でホテル最上階の展望ラウンジでご飯? それとも自家用ジェットクルーズ?」
    「…………一応、聞くけど。それってレムナンの話?」

     ――もちろん。当たり前でしょ。リーダーはスズ君のためならなんでもするから。
     彼女達が口々に肯定の意を示す。ため息のひとつもつきたくなる。
     元革命軍の人達から見た私達は……時々、映像作品の主人公達か何かと勘違いされているんじゃないか、そう思うことがある。レムナンは一体この数年のグリーゼ生活でカリスマ性をどれだけ培ったのか、ホワイトデーのお返しにしては過剰なほどの期待されぶりだ。

     バレンタインデーから一ヶ月。
     先月は「食べたら……なくなる、ので……」と渋るレムナンに日持ちしない箱の中身をどうにか消費させるのに忙しかった。いつまでも冷蔵庫に保管しようとするから、日が経つと味が落ちるとか、食べるためにあるんだからとか、何ならこれが最後じゃあるまいしまた作れるからとか、説得するのが大変だった。
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