たかが色程度と 他星系から取り寄せられた、珍しい水色の花。
そういえば彼女の目もこんな色をしていたっけ、と思い至った。
――でも後先も考えずに購入してしまったのは完全に浮かれていたと思う。
「だからって、こンなところに飾らないでくれる?」
「し、仕方ないじゃ、ないですか……!」
応接室のテーブルに花を飾った。わざわざ花瓶まで買ってきて。
「定期的に来客も、ありますし……応接室に花が、あったって……」
「フン、『客』ねぇ……相変わらず面倒くさいよね、君」
苦しい言い訳だと分かっているけど、どうしようもない。本人に贈るわけにはいかないのだから。
「――あれ? 珍しいね。なんかのお祝い?」
「! スズ、さん……!」
「お疲れ様。どうしたのこの花」
「お疲れ様、です。……その、これは……あの、」
説明できることは何もない。どうすればいいのか。
「レムナンが気まぐれで買ってきたンだ」
「良いんじゃない? 華やかで。ここ、ちょっと殺風景だし」
何事もなく会話が流れて、胸を撫で下ろす。
「あ、やっぱりこの花見たことある。俺の故郷では紫色なんだ。――レムナンの目と同じ色だね」
「……え」
「なに?」
「っ! いえ…………」
なにって。
そんな、僕が散々ごまかした理由を日常会話みたいに。……スズさんに他意はないみたいだ、本当に。
「本当にまどろっこしいよね、君達」
見ているだけで頭痛がするよ、まったく。……ラキオさんがため息をつきながら言ったのを聞きながら考えている。
僕は、花を見て貴女を思い浮かべました、なんて決定的な言葉を吐き出すわけにはいかない。そう思っていたのに。
……でも彼女がこの様子なら手渡せたのだろうか、目の前の花を。
日常会話みたいに。