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    k_ikemori

    遙か7メインで過去作ポイポーイ。

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    k_ikemori

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    過去作_遙か3/現代ED後景望・ハロウィン

    ##遙か3

    Artifice

     
    「Trick or treat!」

    望美は突然掛けられた言葉に肩を竦め、後ろを振り返ると景時が笑顔で佇んでいた。
    「わ、びっくりした~。そうかー、今日ってハロウィンなんですね」
    「そうそう~。こっちの世界って色々な祭事があって楽しいねっ」
    キラキラと目を輝かせる景時はいつも誰よりも楽しそうに季節ごとのイベントを楽しんでいた。まるで今まで溜め込んでいた“楽しむ”ということを人一倍楽しむかのように。

    「ね、ねっ。早くお菓子くれないと悪戯しちゃうよ~?」
    無邪気に笑うその顔は、夜にしか見せない意地悪な顔をして笑っていて、望美はあわててかばんの中に常備していた飴を景時に渡した。
    「……持ってたんだ…」
    どこか残念そうに景時は掌の上に置かれた飴を見下ろして呟いた。
    「えへへ」
    得意げに笑う望美を恨めしげに眺め景時は渡された飴をやや八つ当たり気味に口へ放り込んだ。
    それは甘く、春の匂いがした。
    「…これって、のど飴?」
    訝しげに景時が問えば望美は目元を綻ばさせた。
    「のど飴、好きなんですよ。特にその梅の味のするものが」
    「へーえ」
    口を動かしながら望美の話に相槌を打つ景時の顔も知らず綻んでいた。
    「で、望美ちゃんは言わないの? Trick or treat!って」
    不意を突かれた望美は目を瞬かせはにかみながら言葉を紡ぐ。
    「え、…あ、じゃあ……Trick or treat!」
    その瞬間、景時は万遍の笑み…とは似ても似つかぬ意地の悪い笑みを浮かべた。
    「あ」
    望美の頬が引き攣る。
    嫌な汗が背中を伝うような、感じがした。
    「まさか、景時さ…」
    望美は恐々と景時の表情を伺いながら問いかける。
    「ん? 大丈夫大丈夫、ちゃんと持ってるよ~」
    その答えを聞いて望美はホッと胸を撫で下ろした。
    景時の性格を把握していればここで気を抜くということなどしてはいけないと分かっていたはずだが望美はそこまで景時の全てを知ってはいなかった。――…景時がそれを全てを見せていないから。

    景時の闇は深い。
    あの戦の溢れた世界で一軍の軍奉行を任され、下手な策士よりも効率のいい策略を立てる程の思慮の深さ。
    笑顔で全てを隠していた人。それすら周りを欺く手段に使って。

     

    望美は景時が何をくれるのかと内心ワクワクしていたが景時が発した言葉に望美は固まった。
    「はい、これだよ~。…俺、これしか持ってなくって」
    そう言って景時は口を開けベッと舌を出したその上には、先程望美があげた飴がそこにあった。
    望美はそれをどう取っていいか計り兼ねそれを凝視していると、固まった望美を尻目に景時は見ているこっちが照れてしまうような笑顔で最後通告を言い渡す。

     

    「ねえ、コレと…悪戯と、どっちがいい?」

     
    望美は、また一つ景時の深層を知った。
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    k_ikemori

    DONE天文台で毎夜星を眺めてる長政さん超エモいなと思って荒ぶったけど自分で書くとそうでもないなと冷静になった…この冬の時期に七緒が出勤して初めに行うことは、分厚い上着を掴み取る事から始まる。
    裏口から入るのでそこからは望遠鏡が置いている部屋と、望遠鏡の前に陣取る人影がきっといるのだろうが、生憎とここからは見えない。
    小部屋にはそれほど大きくはない机と仮眠が出来るようベッドが置いてあり、部屋の隅にミニキッチンが付いている。凍えそうな夜はそこでコーヒーかホットココアを入れて寒空の下、それを飲みながら観測する事が至福のひと時である。
    小部屋に入って、壁に掛けてある上着が自分の物とは別にもう一つ残っていることに気付いて七緒はキュッと柳眉を寄せた。
    「…もう」
    手早く自分の上着を着込み、もう一つの上着を腕に抱くと七緒は小部屋を後にした。
    ある程度厚着をしているだろうが、分厚い防寒着があると無しでは雲泥の差だと七緒は思っている。
    小部屋のドアを閉めるとシンと静まりかえったこの場所によく響く。
    七緒が出勤した際にドアを開け閉めした音に気付かぬ人ではないのだが、放っておくと明るくなるまで望遠鏡の下から動かないような人だということを思い出す。
    ゆっくりと望遠鏡の下まで辿り着き、七緒が傍まで来たのに微動だにしない 3117

    k_ikemori

    MOURNING2015年に書き始めて放置してた景望ログを見つけました。タイトルは「まつり」ってあるのでたぶんこれから一緒にお祭りに行きましょうという話にしたかったハズ…。お祭りすら始まっていなかった…。供養供養。書簡を届けに行く道すがら、景時は馬の背から空を仰ぎ見る。
    澄んだ青空に幾つか雲が浮かび、夏らしい強い日差しが地上を照らし付ける。
    「いい天気だなぁ…」
    そう呟き、景時は暫くぶりにある休みを早々に奪取する為、馬の腹を軽く蹴って駆け出した。

    「朔ー? 朔ぅ?」
    彼女たちに宛がわれている部屋へ赴き、ひょいと覗き込む。
    連日動き回っている神子はいないだろうとあたりを付けてはきたが、妹である朔の姿がそこに無く、景時ははてと首を傾げた。
    「どこ行っちゃったのかなぁ…」
    けれど、館の外には出て行ってないようで先程まで裁縫でもしていたのか、しっかり者の妹にしては珍しく片付けもせずそのまま放置されていた。
    その時パタパタと軽やかな足音と共に咎める声が掛かる。
    「兄上! 女人の部屋を勝手に覗くなど、恥ずかしい事なさらないで下さいまし」
    「ああっ、ごめんごめん。朔いるかなぁって思ったし、戸も開いていたし…」
    妹の厳しい物言いに景時は肩を落とす。
    「もし着替えている途中だったらどうするのです」
    「いや、もう陽も高いしそれもないかなぁ…って」
    「例え話です」
    「ア、…ハイ。すみません」
    朔は大きく溜息を零すと 6990